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夕食後はエミリとアルバムを引き出してクラスメイトの顔と名前のチェックを行った。
明日は登校日なのだ。長期旅行など行ってる人が多いから半分くらいしかこないらしいけど、交友があった子達の情報は、入手しておかねばなるまい。
私がアルバムを見ながらうなっていると、エミリがルー様と小さいもふもふがついた猫じゃらしで遊んでいた。
なにそれ?いつのまにそんなもの買ったのよ! 後で貸してください!
エミリがルー様の攻撃をかわしながら、私に話かけてきた。
「お嬢様が階段から落ちて意識不明になった時、担任の先生が見舞いに来て下さったのです。とても心配なさっておいででした。意識が戻られたときもショックで記憶の混乱があることも報告しております。なので、そんなにお悩みにならずとも大丈夫だと思いますよ。」
「え?そうなの?」
「ええ、只...」
「?只?」
エミリが言いにくそうに、
「後日テストをなさるとか...。それによっては、補習か留年もあるかもと...。」
もごもご話した。
なんですと?テスト??留年?や、やばいじゃん!!それで、黒沢先生なのか。
「お嬢様は、なんというか、その、もともとあまり勉強がお得意ではありませんでしたので、これ以上は学校の威信に関わるとか仰ってて...。」
「...。」
私は頭を抱えた。
何も知らないときだったら、激怒してたとこだけど、以前の莉奈ちゃんの成績を知ってしまったからには、何とも言えない...。
グラビア好きの家庭教師、できない子に逆行させてみるのは悪くなかった。只、授業中のスマホにいいね!連打はいただけない!
私ならその時のだらしなく垂れ下がった顔を写メり、『私んちのセクハラ教師』ってタイトルいれて拡散希望でバズッターにバズらせワクテカしてしまったにちがいない!
...あれ?社会的に詰んでる?おかしいわね?
...ストレス回避の方向性をあやまるとこだった!いかん!いかん!
「黒沢先生は愛華様とまだロスにいらっしゃるのよね?」
「そう、聞き及んでおります。」
「しかたない。腹をくくろう...。」
遠いところへ逃げたがる気持ちをおさえ、宿題に目をむけた。
次の日
「おはようございます!莉奈様!」
学校の入り口で車から降りてすぐに、黒髪ツインテの美少女に声を掛けられた。
「おはようございます!乃梨子さま。」
そう、彼女は芦田乃梨子様、安寿グループの傘下企業のお嬢様で莉奈ちゃんのご友人である。
まったく、この世界の遺伝子配列は異常だな。
「由紀様は南イタリアですって、青の洞窟とか行かれるのかしら?いいですわね!」
乃梨子様が並んで歩きだした。
「そうですわね!夏場の方が観光できる確率が高いですものね!羨ましいですわ!」
「莉奈様少し雰囲気変わられました?いつもより、お優しいです!」
「そ、そうかしら?」
目が泳ぐ。
「そういえば、お怪我は大丈夫ですの?後でしか知り得なくて...。」
「怪我はタンコブだけなのですけど、頭を打ったショックで記憶が混乱していることもあるのです。不備があったら、お許しくださいね。」
乃梨子様は口をあんぐりあけた。
「ええ?それは大変ですわ!大丈夫です!!莉奈様には恩義がございます!フォローはお任せ下さい!」
「恩義?」
私は目をパチクリさせた。
「ええ。あれですよ。山田太郎!! 私、幼時期、小児喘息で走る事禁じられていたせいで、いまだに足が遅いんです。それを「芦田乃梨子じゃなく『足がノロ子』じゃん!ノーロ子!ノーロ子!」などと、虐めてきてたのです。
そいつを莉奈様は完膚なきまでに叩きのめして下さったじゃないですか!二度と顔を見ずに済むかと思うと本当に感謝ですわ!」
...あ奴、他でも色々やらかしていたのか...。
私は頭をおさえた。
「それは、ひどいわね!」
「だから、莉奈様は私の恩人です!」
「大した事ではありませんわ!乃梨子様はお友達ですもの!」
「莉奈様...。友達だなんて...。感動です!」
乃梨子様がうるうるしだして、私は慌てた。
「なにを、今更ですわ!」
「今度、また、アレが必要になられる場合は、遠慮なくお申し付けください。」
「?アレとは?」
「アレですわ。山田太郎の時もお使いになられた、ア・レ!『わ』から始まり七文字の『う』で終わるものですわ!」
『わ』から始まる...。も、もしや...。
「効果抜群でしたわね。安倍晴明の子孫がお作りになられたものだそうですの。少しお高いだけありましたわ!」
君か...。アレの入手経路は...!いやあれは、安倍晴明より怖い『もの』が成敗したからであって、オカルト的な要素は含まれていないはずなのだけども...。まあ、いいか...。喜んでるし。乃梨子様の目がちと怖いけど。
「それと、耳より情報がございましてよ!『わしづかみ藁人形』なるものが新商品で出たらしく、ハート型に編み込んだ藁の中に藁人形が取り付けてあって、人形の首に好きな方の髪の毛を巻くだけでその方のハートをわしづかみできるという優れものですの!莉奈様もご一緒にご購入されません?」
乃梨子様は喜々と身振り手振りで説明した。
「...ちなみに、お値段はいかほど?」
「定価五万円のところ、キャンペーン中につき、三万円になってますの!お得ですわ!」
...乃梨子様。それ、ダメな奴だと思うの。藁なんて田舎に行けば、タダ同然で手に入るのにその値段は可笑しいと思うの。
「乃梨子さま。それはおよしになった方がいいと思いますわ..。乃梨子様ならそんなことなさらなくとも、恋の成就など簡単ですわ!そんなにお可愛いのですもの!」
「いやだ!莉奈様ったらお上手ですわ!!」
バシバシ叩かれ腕が痛かった。




