【2:鎧と書いてキンニクと読む】
音もなく、ジョーが地面に降り立つ。
あの高さから着地したにもかかわらず、音一つしない。
ヒビすら入っていない。
マントがふわりと馴染むさまは、いっそ優雅ですらあった。
彼の筋肉が作用と反作用をすべて取り込み、エネルギーとして消費してしまったのだ。
「な、なんだてめえ!!!!」
動揺が広がる山賊たち。
それはそうだろう。
先ほどまで確かに手元でつかんでいた少女が消え、目の前に降り立つただならぬ青年。
先ほど起きた、いや、今起きていることは、明らかに異常である。
「静まりやがれ!!」
山賊頭なのだろう、リーダーらしき男が、明らかに動揺する団員を叱咤する。
ずいっと前に出て、ジョーをにらむ。
「てめえ、何もんだ……?」
「俺の名前はジョー。通りすがりのトレーニーだ」
「トレ……?わけのわかんねえこといいやがって……命が惜しかったら、その女をこっちによこしな。今なら命だけは助けてやる」
男は、静かに山賊頭を見つめる。
「……君こそ、こんなことはやめて、真っ当に生きるんだ。見れば、仲間たちを曲がりなりにもまとめるカリスマを持っている。」
その言葉に、山賊頭は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑い始めた。
それを見て、手下たちも半笑いになる。
「ギャッハハハハハ!!!お前、いきなり何言ってんだ?」
「今更俺たちクソがこの世界でまともに生きられるわけねえだろうが」
「……馬鹿にするのもいい加減にしろよ。死ね」
突然ドスの効いた声になる山賊頭。
あまりにも慣れた動きで、懐から短剣を取り出し
身をかがめて一気に距離を詰める。
戦技・縮地と、暗殺術の合わせ技である。
それはその辺の山賊が持っているはずのない、高等技術であった。
会話をしていたのも、間合いを図っていたのだ。
「危ない、ジョーさん!!」
「じゃあな間抜け」
パイジィが叫ぶのも間に合わない。
出された短剣は、マントの向こうにある無防備な腹部にめがけて繰り出され――
ギャイィィィン
――金属音ではじかれた。
「「は?」」
パイジィと山賊頭が間抜けにハモる。
山賊頭が思わず相手を見上げると、
ジョーは申し訳なさそうな顔で見下ろしていた。
とっさに後退り、にらみつける。
「てめえ……そのマントの下、鎧でも仕込んでやがんのか」
「ああ。筋肉という名の鎧を、な」
情報をつかませる気はないらしい。
舌打ちし、やや動揺しつつも、武器を構えなおす。
しかし……短剣はあらぬ方向に曲がっていた。
まるで、オリハルコンに思いきりたたきつけられたように。
「は……!?て、てめえ、いったい」
「鍛え上げた筋肉は」
ジョーが静かに口を開く。
「鉄をも弾く」
マントを開いたその下には――
「「え、山脈?」」
――本日二度目。
パイジィと山賊頭は間抜けにハモったのだった。




