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18/21

【18:謀略と書いてチェックと読む】

食事を堪能したジョーたち3人は、裏宿から出て貴族街近くの境界線まで様子を見に来ていた。

すっかり毒の抜けたギルが言っていたからだ。


「……間違いない。相手の名前はルギルブルク家当主、スカール・ルギルブルクだろう。貴族の中でもかなりデカい家でな。この街の食料関係の交易を一手に握ってる。」


どうやら、何に使うでもなく情報をひそかに集めていたらしい。

曰く、自分を破滅させた相手のことは警戒するだろ、と笑っていた。



ムーンが背伸びしながら遠目で見る。

黄金色の看板、立派な構え……嫌でも目を引く宿屋だ。


「あの宿に箔付けしてるのがルギルブルク家ってわけか」


「ギルさんから聞いた八百長の使用人の人相、私にも覚えがあります。どうやら間違いなさそうですね」


「……衛兵がたくさんいますね。あんまり傷つけたくはないなぁ」


当然のように突破できる前提で話すジョー。

冗談に聞こえないし、おそらく冗談ではない。


「さて……どうやってルギルブルク家に近づくか……」


「「「うーん……」」」


しばらく考え込む3人なのだった。




一方。

3人の視線の先――

まさにその宿の最上階で、優雅にグラスを傾ける若い男がいた。

顔の造形そのものは整っているが、すっと細く伸びた目じりと、ゆがんだ口角は意地の悪さを隠せていない。


従者なのだろう、別の男が恭しくかしずいている。


「スカール様。例の料理人を見つけました」


「ふうん」


スカールと呼ばれた男は注がれたワインから視線を動かさない。

いかにも興味なさげに返事をしているが、グラスを握るその指はわずかに白んでいる。

「それでさあ、見つけたってだけじゃないんでしょ?まさかその程度で終わる話をもってきたりしないだろ?」


「は……申し訳ございません」


「はあ?別に謝ってほしいわけじゃないんだよね。先に行動してくれないとさあ。いちいちそんな些事で僕を煩わせないでほしいわけ。」


「申し訳ございませんでした。当初の予定通り捕縛と公開処刑まで行います。ですが……同伴者についてはいかがいたしましょうか」


スカールは震える手でグラスを置くと、流した銀髪をイライラと手でかきあげる。


「なんでイチイチ聞くの?どんだけ無能なんだよ。そりゃあ僕ほど優れた人間は何人もいないとしてさ、だからといってこの程度の人材しか周りにいないと思うと僕がかわいそうで泣けてくるよねホント。察しろよ。断言させるなよ。指示を待たず自分の思考で僕の意向を理解して僕を煩わせずに意識させずに粛々と物事を進めろよ。いいか、これだけ言っておくぞ」


「――僕が興味あるのはあの料理人の女だけだ」


「承知いたしました。」


よほど言われ慣れているのだろう。

従者の男は眉一つ動かさない。

一礼して部屋を出ていこうとする従者に、スカールが今思い出したように声をかける。


「まずは孤立させろ。会ったばかりの人間が3人もいるのに、崩壊していないのは目的が一致してるからだ。まず目的をなくせ。次の目的を与えろ。それぞれの価値観が反目するような目的をな」


「……お気を回していただきありがとうございます。では、そのように……」


深々とお辞儀をして部屋を出る従者。

残されたスカールは、もともと歪んでいる口角をさらに愉快そうに歪ませて笑った。


「……所詮、この世界は僕のおもちゃ箱だ」



……その日のうちに、パイジィの指名手配は解除された。

街中にパイジィのコンテスト優勝のお祝いがあふれ――


――ジョー、ムーンは、誘拐未遂犯として追われることになった。


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