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6-6





 ち、と彩霞は内心で舌を打った。

 ――見られたか。

 彩霞は驚いた様子でこちらを見つめている彼らと目が合うよりも早く、視線を逸らした。わずかに熱を持ち始めた右手を自然な動きで引っ込める。


「おねぇちゃん?」


 彩霞は逸らした先で、膝の上に座る少女と目が合った。その不思議そうな瞳に微笑む。


「うん?」


 優しく声をかけてやれば子供たちは何もなかったように話し始める。


「あのね、あの人すごくつよいね!」

「そうごにーちゃんたち、いっぱいまけてた!」

「きょうもたくさんまけたー!」


 きゃはは、と楽しそうな笑顔とともに笑い声が上がる。

 彩霞の周りにいるのは、総悟たちよりも幼い子たちである。

 彩霞は、子供たちの話を聞きながら周囲を警戒する。


 ――やってくれる。


 湧き上がる怒りを押し込めて、少女を見る。今はこちらに背を向けていた。楽しそうに笑っている姿に、ほっと息をついた。


 つい先程、この場に不穏な気配とともに殺気が流れてきた。そしてそれと同時に、少女に向かって飛来してくるものがあった。

 彩霞が寸前で受け止めたため少女には何の変化も訪れなかったが、それは確かに少女の命を奪うことを目的としたものだった。

 思わず思い切り掴んでしまったそれ――小刀は彩霞の右手に熱と痛みをもたらし、血を流させている。


 ――挑発、もしくは確認、か……?


 紅家に対する、もしくは彩霞自身の――。


「……まぁいい」


 小さく呟いて、彩霞は溜息をついた。

 そして、子供たちを帰すために立ち上がるのだった。





「前言撤回、かな?」

「……かな、じゃないだろ」

「うわ、ボク冴えてる!」

「…………」


 何事もなかったかのように子供たちの相手をしている件の少女を見て蘇芳が呟くと、秀がぽつりと返した。

 半ば呆然とした彼らの横で、晶が瞳を輝かせる。さらにその隣では、李絳が無言で少女を見据えている。

 つい先程、彼女が驚きもせず冷静に木々の間から飛来した小刀を受け止めた瞬間を目の当たりにした彼らは、数拍の間言葉を失ったのだった。


「うーん、やっぱり彼女で間違いないよねぇ」

「悟られないようにしてたみたいだけどな。どうする、このまま動くか?」

「ねーねー、あの子に話しかけてきてもいいー?」

「李絳に聞いてよ。なんだか拗れそうな予感」

「ねー李絳、試しに話しかけてみてよー」

「…………」


 蘇芳の答えに溜息をついて、秀は晶につつかれている李絳に視線を移した。


「ねーねー、李絳ー」


 先程は少女の方を睨むように見つめていた李絳だが、今は何故か頭を抱えている。その上、李絳たちの会話や晶の問いかけにも反応しない。


「ぷぷ、悩んでる悩んでる」


 楽しそうにそう言ったのは蘇芳である。秀は呆れたように蘇芳を見て、李絳に視線を戻した。


「よっぽど、避けたかったのか」

「女の子、だからねぇ」

「……前から聞きたかったんだけど、それ本当なのか?」

「女嫌いってこと? んー、李絳の場合嫌いっていうより、苦手になるのかな。元凶は李絳の姉上たちなんだけどね」

「……ああ、なるほどな」


 にっこり笑って揚々と告げられた言葉に李絳が反応したのを見て、さらには、李絳とその姉たちの関係性を思い出して、秀は溜息をついた。蘇芳は相変わらず楽しそうである。


「いやー、あれはもう弟ってより、下僕――」

「――おい! それ関係ねぇだろっ!」


 やはりこの話だけは聞こえていたらしい。李絳はすかさず、蘇芳の話を遮ってきた。


「えー、せっかくまだ話してない李絳の勇姿を教えてあげようと思ったのにぃ」


 からかいを十分に含んだ声音で蘇芳が言えば、李絳も負けじと食いつこうとする。しかし、それは晶によって遮られるのだった。


「ちょっとー、ボクの話も聞いてよー。――あ、ほらほら李絳!」

「あ? なんだよ?」


 晶が示した先に視線を移せば、例の少女が立ち上がったところだった。



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