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「全然、動きがないねぇ」
ふと呟かれた言葉に李絳は蘇芳を見る。晶や秀も蘇芳に視線を向けている。
「さすがに、僕らが来てることに気付いてると思うんだけど。――まぬけなのかな?」
独り言のように呟いた後、李絳たちに向かって首を傾げて見せる。
蘇芳の適当な言葉に李絳が顔をひきつらせる。それに溜息をつき、蘇芳に答えたのは秀だった。
「何か考えあってのことかもしれないぞ」
「そうかな? 夜襲とか、僕らを誘い込むとか何かしらすると思ったのに、そんな素振りすら見せないんだよ? それどころか毎晩酒盛りって、どんだけ使えないの」
蘇芳の中では既に賊への脅威が薄れているらしい。それは秀たちにも言えることだが、一応あらゆる想定を立てていた。
しかし、この里に来て五日、何の進展も見せずに穏やかな時間が続いていた。
「それなりに動けるのは何人かいるみたいだけど、頭がつかえなきゃ意味ないでしょ。だいたい――」
「お! お前やっぱ筋がいい、な!」
イラつきつつも笑顔で文句を連ねている蘇芳の言葉を遮ったのは歴である。
歴は先日と同じように子供たちの相手をしている。
今相手をしているのは総悟である。今回は一人で歴に向き合っている。
総悟は褒められてはいるがひっくり返っている。しかし、すぐに身体を起こしては再び歴に飛び込んでいく。先程からその繰り返しだ。
「……元気だねぇ」
蘇芳の呟きは半ば冷めているようにも聞こえる。その様子に隣で秀が溜息をついているが、蘇芳は目を細めて歴たちを見た後李絳たちに笑顔で振り返った。
「やっぱり、面倒なことになる前にこっちから仕掛けようか」
やはり、蘇芳の基準は面倒か、否かなのだった――。




