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6-1



 同日、夜――李絳たちは離れの一室で話し込んでいた。


「そろそろ帰ってくるかな」


 蘇芳が顔を上げたところで、見計らったようにそれまで席を外していた晶が姿を見せた。


「おかえり。どうだった」

「うん。特に何も」


 部屋に入って腰を下ろした晶に全員の視線が向くが、返ってきた言葉に脱力した。


「やっぱり、全然使えなさそうなヤツらみたい。それなりには相手してくれるかもだけど、がっかりだよ」


 欠伸をしながら呆れるでもなく腹を立てるでもなく、本当にどうでもよさそうに晶は言った。これには全員が溜息をつかざるを得ない。

 完全に日が沈んで暗くなった後、晶は賊の偵察に行っていた。五人の中では一番身軽な晶が適任なのだ。

 果たして、敵情視察は残念――好感触に終わった。

 自分たちの力を過信しているわけではないが、彼らの実力はそれほど脅威ではないらしい。しかし、そういう連中に限って調子に乗ると面倒なことになる。今回の件は早々に解決するのが一番だろう。


「久々に手応え有りそうなもんに会えると思ったのに。まぁ、五人だけで向こうを出た時点で怪しいとは思ったけどなー」

「それによく考えれば奴らが追手とやりあった報告もなかったしね。ことごとく逃げられてるから実力者揃いだと勘違いしたわけだ」


 肩を落とした歴に蘇芳が笑う。  一方、落胆する彼らとは逆に、晶は目を輝かせていた。


「もう藍様に期待するしかないよね? あー早く会いたいなぁ」

「……藍様? 晶はそればっかりだね。ていうか一体何の期待?」

「まぁ、確かに謎だからな。晶は分かりきったことよりそっちの方がいいんだろ」


 蘇芳が溜息をつき、秀が苦笑した。晶が大きく頷く。


「名乗りでないだけで本当にこの里にいるんだよね? 里の人たち全員観察してみたけど、それらしき人がいないんだよねぇ。うーん、あ、実は女の人だったりして!」


 最後の言葉に反応したのは李絳である。

 それを見た歴が面白そうに晶の言葉を反芻した。


「女、ねぇ……。まぁ、可能性としてはなくもないかもな。あ、もしかしたら俺らと同じくらいの奴かもだな」

「藍家の真実とやらを知ってるなら男の可能性の方が高いんじゃないか?」


 秀がそう言うと晶が頬を膨らませた。


「えー、それじゃ面白くないでしょー」

「確かにここで男が出てきても展開的に面白くないわな」


 くっ、と喉の奥で笑うと歴は李絳を見た。


「なー李絳。何か助言とか貰ってないのかよ? まさか本当に何も聞かされてないのか?」

「蘇芳は師匠に何も言われてないのか?」


 歴と秀が揃って言うと、李絳と蘇芳は顔を見合わせた。そして、先に李絳が嫌そうに口を開いた。


「……あの父上が俺を助けるような情報、よこすと思うのか」

「ああ、そうな。相変わらずいいように遊ばれてんな。――蘇芳は?」


 笑いながら言った歴は李絳に睨まれて矛先を変える。

 晶がその横で笑いたくて仕方がないというように、口元を歪めている。

 それを見た李絳は舌打ちして、先に彼らから顔を逸らした。


「僕だって言ったでしょ。それについて父さんに訊くことなんてできるわけないって」


 蘇芳は溜息をついた。


「まぁ、それももっと調べる必要があるね。賊にしても藍家の生き残りにしても、もう二、三日は様子見ってことで。里の人たちも結構好意的みたいだし、だいたいの人たちとは接触できてるよね」

「ある程度相手を絞れるだろうな」


 秀の言葉に蘇芳が頷く。同じようにそれぞれが同意の意を示し、明日以降に備えて休むことになった。


「最低でも七日以内には終わらせたいね。――あ、李絳はもう一つの方も頑張って」

「……他人事かよ」

「当たり前じゃん」


 顔をしかめた李絳だが、蘇芳のどうでもよさそうな返答に溜息をついたのだった。




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