第4話 予告の時
第4話 予告の時
計画は。
二つに分かれた。
一つは。
予定外に生まれた目撃者を探し出すこと。
もう一つは。
五年前から決められていた計画を。
何一つ変えることなく。
実行すること。
◇
シロアリたちは。
散った。
一体。
また一体。
それぞれが別の方向へ向かい。
目撃者の捜索を開始する。
与えられた情報は。
あまりにも少ない。
長い髪。
赤いスカート。
それだけ。
顔は分からない。
名前も分からない。
年齢も。
住所も。
何も分からない。
それでも。
探す。
条件に当てはまる人間を見つけては。
確認する。
違えば。
次。
また違えば。
次。
◇
「…………」
男は。
次々と送られてくる情報を確認していた。
一人。
違う。
次。
これも違う。
また一人。
違う。
当然だった。
長い髪の人間など。
いくらでもいる。
赤いスカートを履いた人間も。
決して珍しくはない。
まして。
その二つの特徴を持つ人間が見つかったとしても。
昨日。
幼虫体を目撃した人物と同一人物である保証など。
どこにもない。
「……使えない情報だな」
思わず。
言葉が漏れた。
だが。
幼虫体を責めるつもりはなかった。
あれは。
まだ幼虫だった。
目は完全ではない。
顔を正確に捉えられなかったのは。
当然のことだ。
そもそも。
幼虫の状態で。
人間と遭遇すること自体が。
予定にはなかった。
問題があるとすれば。
そこだ。
◇
男は。
目撃者の記録から視線を外した。
今さら。
起きてしまったことを考えても仕方がない。
目撃者は。
シロアリたちに探させる。
捜索は。
続ければいい。
それより。
今。
確認しなければならないものがある。
◇
セミ怪人。
◇
幼虫体は。
すでに。
次の段階へ進んでいた。
五年間。
地中で過ごした。
時を待ち。
地上へ出た。
そこで。
予定外の人間と遭遇した。
だが。
その出来事によって。
本来の過程そのものが。
止まったわけではない。
幼虫としての時間を終え。
今。
次の姿へ。
移ろうとしている。
◇
男は。
その経過を見ていた。
身体が。
変わっていく。
時間をかけて。
ゆっくりと。
だが。
確実に。
五年前。
最初から想定していた姿へ。
「…………」
急かす必要はない。
ここまで。
五年待った。
あと少し。
待てばいい。
◇
やがて。
変化が終わった。
◇
成虫。
◇
男は。
しばらく。
何も言わなかった。
五年前。
まだ幼虫体だったものを。
自ら地中へ送り出した。
あの日。
頭の中にあった姿。
五年という時間の先に置いた姿。
それが。
今。
現実のものとして。
そこにある。
「……完成したか」
声は。
静かだった。
喜びも。
興奮も。
表には出ない。
ただ。
その目だけが。
完成したセミ怪人を。
じっと見ていた。
◇
五年前から。
この日のために。
準備してきた。
だが。
成虫になったからといって。
好きな場所へ行かせるわけではない。
好きな時間に。
好きなように動かすわけでもない。
場所は。
決まっている。
時間も。
決まっている。
すべて。
五年前から。
◇
男は。
一枚の紙を取り出した。
五年前。
自分自身の手で。
書いたもの。
日付。
時刻。
場所。
「…………」
一つずつ。
確認する。
変わっていない。
当然だ。
変えていないのだから。
◇
五年前。
この予告を書いたとき。
男は。
分かっていた。
何も知らせないほうが。
計画は成功しやすい。
日付を伏せる。
時刻を伏せる。
場所を伏せる。
そして。
突然。
始める。
そのほうが。
止められる可能性は。
はるかに低くなる。
それでも。
男は。
知らせた。
日付を。
時刻を。
場所を。
そして。
五年という時間を。
◇
止められる可能性を。
自分から。
残した。
最後の良心。
五年前。
そう考えた。
そんなもので。
これから行うことが許されるわけではない。
それも。
分かっていた。
それでも。
残した。
◇
そして。
今。
紙に書いたその時が。
本当に。
来ようとしている。
「…………」
五年前には。
遥か先だった。
未来だった。
紙の上にしか存在しなかった。
その日時が。
今。
現実に。
追いつこうとしている。
◇
男は。
時計を確認した。
まだ。
少し時間がある。
そのとき。
別の情報が入った。
シロアリたちからだ。
「…………」
目撃者。
未発見。
男は。
わずかに眉を動かした。
やはり。
見つからない。
長い髪。
赤いスカート。
それだけでは。
一人の人間を探し出すには。
情報が少なすぎる。
だが。
捜索をやめる理由にはならない。
「続けろ」
短く。
指示を出した。
◇
目撃者は。
探す。
だが。
そのために。
計画を待たせることはしない。
この二つは。
別だ。
目撃者が見つからないから。
セミ怪人の出現を延期する。
そんな選択肢は。
最初から。
存在しない。
◇
時刻が。
近づいていく。
一分。
また。
一分。
時計の針が。
五年前。
自分自身が紙に記した数字へ。
少しずつ。
近づいていく。
男は。
時計を見る。
紙を見る。
そして。
セミ怪人を見る。
「…………」
五年前。
この瞬間を。
想像した。
そのときは。
まだ。
すべて。
頭の中にしかなかった。
だが。
今。
セミ怪人は。
そこにいる。
五年間。
地中で時を過ごし。
地上へ出て。
羽化し。
成虫となった。
あとは。
行くだけだ。
◇
時刻。
男は。
セミ怪人へ。
指示を出した。
「行け」
それだけだった。
◇
セミ怪人が。
動き出す。
成虫となった身体で。
予定された場所へ。
向かう。
五年前から。
決められていた場所。
五年前から。
予告されていた場所。
◇
男は。
その動きを追った。
何をさせるのか。
何のために。
そこへ向かわせるのか。
すべて。
自分で決めた。
結果も。
想定している。
だが。
一つだけ。
自分では。
決めていないものがある。
◇
誰かが。
止めに来るかどうか。
◇
五年前。
わざわざ。
日付を知らせた。
時刻を知らせた。
場所を知らせた。
五年という。
途方もない時間まで与えた。
なら。
来るのか。
誰かが。
本当に。
この計画を。
止めるために。
「…………」
男は。
画面を見つめた。
◇
セミ怪人が。
予定された場所へ。
到着した。
時間も。
間違っていない。
五年前。
紙に書いた。
そのとおり。
◇
ここまで。
来た。
◇
地中で。
五年。
地上へ出た。
予定外の目撃者と遭遇した。
一人を始末した。
一人を逃した。
シロアリたちは。
今も。
その目撃者を探している。
予定にはなかったことが。
すでに。
いくつも起きている。
それでも。
本来の計画だけは。
まだ。
予定どおり。
進んでいる。
◇
男は。
時計を見た。
秒針が。
最後の距離を。
進んでいく。
一秒。
二秒。
三秒。
そして。
五年前。
自分が決めた。
その時刻になった。
「時間だ」
◇
セミ怪人が。
動き始めた。
◇
その瞬間。
五年前に書かれた予告は。
予告ではなくなった。
◇
現実になった。
◇
男は。
黙って。
その様子を見ていた。
来るのか。
来ないのか。
五年前。
自分自身が残した。
止められる可能性。
最後の良心。
その答えが。
もうすぐ。
出る。
◇
そのときだった。
「…………?」
画面の一部に。
新たな反応が現れた。
男の目が。
細くなる。
予定にはない。
セミ怪人でもない。
シロアリでもない。
何かが。
来た。
◇
男は。
画面から。
目を離さなかった。
五年前。
自分自身が。
わざわざ残した。
止めるための可能性。
その答えが。
今。
セミ怪人の前に。
姿を現そうとしている。
◇
「……来たか」
静かな声だった。
だが。
その一言だけは。
五年前。
幼虫体を地中へ送り出したときとは。
わずかに。
響きが違っていた。
◇
計画は。
最後の局面へ入った。
五年前に残した予告が。
本当に。
誰かへ届いていたのか。
そして。
自分が作ったセミ怪人が。
これから。
どうなるのか。
男は。
ただ。
画面を見つめていた。
◇
後書き
黒幕側から描く物語、第4話をお読みいただきありがとうございます。
五年前に地中へ送り込まれた幼虫体は、ついに羽化し、セミ怪人の成虫となりました。
一方、予定外に逃してしまった目撃者については、シロアリの雑兵たちが捜索を続けています。
「長い髪」と「赤いスカート」。
わずかな手掛かりしかないまま、目撃者の捜索は続く。
しかし黒幕は、そのために本来の計画を変更することはありません。
五年前に決めた日。
決めた時刻。
決めた場所。
セミ怪人は、予定どおりそこへ向かいます。
そしてついに、五年前に書き記した「予告」が現実となる瞬間が訪れました。
黒幕自身が残した、止められる可能性。
その答えとなる何者かが、セミ怪人の前へ現れようとしています。
次回、第5話でこの最初の計画の結末までを描き、第一章を一区切りとする予定です。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、基本設定および各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




