↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒幕の物語  作者: 時根脱才 
セミスピーカー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/11

第3話 予定外

第3話 予定外


 五年。


 待った。


 五年間。


 誰にも知られず。


 誰にも見つからず。


 ただ、その日が来るのを待った。


 そして。


 地上へ出てから。


 計画が狂うまでにかかった時間は。


 あまりにも短かった。


     ◇


「二人……」


 男は、幼虫体から送られてくる情報を確認していた。


 人間が二人。


 間違いない。


 こちらを待ち構えていたわけではない。


 計画を知っていたわけでもない。


 おそらく。


 ただの偶然。


 たまたま。


 幼虫体が地上へ出た場所に。


 二人の人間が居合わせた。


「…………」


 それだけなら。


 まだ。


 取り返しはつく。


     ◇


 問題は。


 どこまで見られたか。


 幼虫体が土の中から這い出すところを見たのか。


 それとも。


 地上へ出た後に気づいたのか。


 どれほど近くにいた。


 どれほど長く見ていた。


 何を見た。


 何を覚えた。


 分からない。


 こちらから得られる情報も。


 十分ではなかった。


 幼虫体の目は。


 まだ。


 成虫のそれではない。


 輪郭。


 色。


 動き。


 見えてはいる。


 だが。


 正確ではない。


 世界のすべてが。


 水の中から覗いているかのように。


 曖昧に滲んでいる。


「……見られた以上は」


 男が呟く。


 その先を。


 口にはしなかった。


     ◇


 五年前。


 自分は予告を残した。


 日付。


 時刻。


 場所。


 これから起こすことを。


 完全な不意打ちにはしない。


 止められる可能性を残す。


 それが。


 自分に残った最後の良心なのだと。


 そう考えた。


 だが。


 これは違う。


 今日。


 ここで。


 幼虫体の存在を知られることは。


 自分が与えた猶予ではない。


 計画にもない。


 予定にもない。


 ただの事故だ。


     ◇


 幼虫体の視界の中で。


 二つの影が動いた。


 一つ。


 もう一つ。


 幼虫体が反応する。


「…………」


 男は。


 黙って状況を見ていた。


 そして。


 一つの反応が。


 消えた。


     ◇


「…………」


 確認する。


 一人。


 動かない。


 反応もない。


 始末した。


 男は。


 そう判断した。


 予定外の事態ではあった。


 だが。


 これで。


 目撃者は――。


「……待て」


     ◇


 まだ。


 一人いる。


     ◇


 動いている。


 遠ざかっている。


 幼虫体の視界から。


 逃げようとしている。


「逃げたか」


 男の声に。


 初めて。


 明確な苛立ちが混じった。


     ◇


 一人は始末した。


 少なくとも。


 そう判断できる。


 だが。


 もう一人。


 残った。


 目撃者。


 幼虫体を見た人間。


 まだ。


 生きている。


     ◇


 男は。


 幼虫体から送られてくる情報を拾った。


 相手を追わせる。


 その考えが。


 一瞬。


 頭をよぎる。


 だが。


 すぐに捨てた。


「……いや」


 違う。


 幼虫体には。


 やるべきことがある。


     ◇


 地上へ出る。


 羽化する。


 成虫になる。


 そして。


 予定された日。


 予定された時刻。


 予定された場所へ向かう。


 それが。


 この個体に与えた役割だ。


 目撃者一人のために。


 五年前から組み上げた計画を。


 ここで変えるわけにはいかない。


     ◇


「お前は予定どおり進め」


 男は。


 静かに告げた。


 目撃者は。


 別に探せばいい。


 そのための手段なら。


 ある。


     ◇


 まずは。


 情報が必要だった。


 誰だ。


 どんな顔をしている。


 何歳だ。


 何を着ている。


 どこへ逃げた。


 拾えるものを。


 できる限り拾わせる。


 だが。


 幼虫体の視覚は。


 まだ完成していない。


 ぼやけた輪郭。


 動く影。


 その程度しか。


 認識できない。


「もっと何かないのか……」


 男は。


 映像を確認する。


 一つ。


 特徴らしいものがあった。


 上から下へ。


 長く流れる形。


「髪……か?」


 長い髪。


 だが。


 それだけでは。


 到底。


 人間一人を特定できない。


 さらに。


 視界の中に。


 一つの色が残っている。


 赤。


「赤……」


 位置を確認する。


 下半身。


 衣服。


「スカートか」


 赤いスカート。


     ◇


 それだけだった。


     ◇


「顔は」


 情報がない。


「顔を確認できないか」


 無理だった。


 視覚そのものが。


 まだ。


 そこまで完成していない。


「…………」


 男は。


 小さく息を吐いた。


 分かっていたことだ。


 幼虫体なのだ。


 これは。


 欠陥ではない。


 そういう段階にある。


 羽化し。


 成虫となれば。


 完成する。


 だからこそ。


 地上へ出た直後。


 まだ幼虫であるうちに。


 人間に発見されることなど。


 想定していなかった。


     ◇


 名前。


 分からない。


 顔。


 分からない。


 年齢。


 分からない。


 分かっているのは。


 長い髪。


 赤いスカート。


 そして。


 幼虫体を目撃した。


 それだけ。


     ◇


「…………」


 男は。


 五年前に作った計画を思い返した。


 日付。


 時刻。


 場所。


 そこまで。


 自分から知らせた。


 止められるものなら。


 止めればいい。


 そう思った。


 だが。


 それは。


 予定された日に対して与えた猶予だ。


 この目撃者は。


 違う。


 予定より早く。


 知ってしまった。


 こちらが意図しない形で。


     ◇


 放置はできない。


 だが。


 セミ怪人を使うわけにもいかない。


 この個体には。


 本来の役割を。


 予定どおり。


 果たさせる。


 なら。


 捜索は。


 別のものにやらせればいい。


     ◇


 男は。


 別の指示を出した。


 動き始めたのは。


 セミ怪人ではない。


 シロアリ。


 それを模した。


 小型の雑兵たち。


 一体ではない。


 複数。


 目立たず。


 散らばり。


 探す。


     ◇


 与えられる情報は。


 あまりにも少ない。


 長い髪。


 赤いスカート。


 顔は不明。


 名前も不明。


 年齢も不明。


 住所も不明。


「…………」


 男自身。


 分かっていた。


 馬鹿げている。


 そんな特徴に当てはまる人間が。


 何人いると思っている。


 まして。


 赤いスカートなど。


 明日も同じものを着ている保証すらない。


 だが。


 何もしないよりは。


 いい。


「探せ」


 男は命じた。


「長い髪」


 そして。


「赤いスカート」


 それだけ。


「該当する人間を探し出せ」


     ◇


 シロアリたちが。


 動き始める。


 散っていく。


 一人の目撃者を探すために。


     ◇


 一方。


 セミ怪人の幼虫体には。


 別の時間が流れていた。


 追わせない。


 探させない。


 この個体には。


 予定された役割がある。


 羽化。


 まず。


 それを終えなければならない。


 成虫になる。


 そして。


 五年前に定めた。


 その場所へ。


 その時間に。


 現れる。


     ◇


 計画は。


 狂った。


 だが。


 壊れてはいない。


 男は。


 そう判断した。


 目撃者が一人。


 残った。


 なら。


 それは別に処理する。


 セミ怪人は。


 予定どおり進める。


 二つを。


 分ければいい。


     ◇


 男は。


 最後にもう一度。


 幼虫体が残した記録を確認した。


 ぼやけた世界。


 二つの人影。


 一つは。


 もう動かない。


 そして。


 もう一つ。


 遠ざかっていく影。


 長い髪。


 赤いスカート。


 それ以上。


 何度確認しても。


 情報は増えなかった。


     ◇


 男は。


 記録を閉じた。


「探せ」


 名前はない。


 顔もない。


 手掛かりは。


 たった二つ。


 長い髪。


 赤いスカート。


「見つけ出せ」


     ◇


 五年間。


 一度も狂わなかった計画。


 その計画に。


 初めて。


 予定表には存在しない。


 もう一つの命令が加わった。


 セミ怪人は。


 予定どおり。


 羽化へ。


 シロアリたちは。


 予定外の目撃者を。


 捜索する。


     ◇


 男は。


 まだ。


 その人物の名前を知らない。


 顔も知らない。


 どこに住んでいるのかも。


 何者なのかも。


 知らない。


 知っているのは。


 長い髪。


 赤いスカート。


 ただ。


 それだけ。


 そして。


 その人物が。


 アズマという名であることも。


 この時点では。


 まだ。


 知らなかった。


     ◇


後書き


黒幕側から描く物語、第3話をお読みいただきありがとうございます。


五年間、予定どおりに進んでいた計画。


しかし地上へ出た幼虫体は、予定外の二人に発見されてしまいました。


一人は始末したと判断。


しかし、もう一人の目撃者を逃してしまいます。


残された手掛かりは、「長い髪」と「赤いスカート」だけ。


しかし、セミ怪人には本来の役割があります。


羽化し、成虫となり、あらかじめ定められた計画を実行すること。


そのため、目撃者の捜索には別の存在――シロアリの雑兵たちが動き始めます。


予定どおり進むセミ怪人。


予定外の目撃者を探すシロアリたち。


ここから二つの動きが、同時に進み始めます。


次回もお楽しみください。


【人間×生成AIによる合作作品】


企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才


文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)


本作品の世界観、キャラクター、基本設定および各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。


本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。