ごじゅろく
礼拝堂での一件からデイビス殿下もステラも取り巻き令息達も学園には姿はなく、珍しく仏頂面のブランジェだけが登校していた。
数日後、王城より、デイビス殿下の提示されたブランジェの罪は全て冤罪であることが学園に知らされた。
当時、礼拝堂にいた者から広がった騒動の一部始終は、面白おかしく王都中に広がったが、当事者であるブランジェもラーゼフォン公爵家も何も言わないため憶測ばかりが飛び交っていた。そこに来ての発表である。
発表内容は、デイビス殿下以下、彼に従った取り巻き令息、そしてステラ・ダンバイン男爵令嬢の自宅での謹慎と言うものだった。学生に知らされたのはここまでだが、国民へは、問題を起こした令息、令嬢家庭からラーゼフォン公爵家への謝罪の声明文発表と賠償金支払いが成されたことが王城内の掲示板に小さく貼り出された。
デイビス殿下はともかく公爵家筆頭のラーゼフォン公爵令嬢への冤罪をブランジェが礼拝堂から去った後も声高らかに言っていた令息達。あの後、ステラと彼らは入ってきた国王の近衛に連行され、呆然と彼らを見ていた家族は後を追うことも出来ず着席を促され、デイビス殿下は、国王に睨まれて硬直。何事もなかったように王族の席に座らされた。そして、礼拝が終わると王族の馬車にて帰っていったのである。
礼拝堂に残された人々の戸惑いはかなりのものだったが、いつか発表される騒動のあらましと結末を待つことにしたのだが、実際は騒動の原因ではなく騒動の結果を小さく発表しただけだったため、肩透かしを食らった人々は興味を削がれていった。発表がなされた時期も、騒動から2週間以上後で、一部の貴族や一般階級の関心が薄れた頃だった。
ステラは知らぬ間に学園から消えていた。彼女に御執心だった男達の悲喜交々は女生徒達を呆れさせたが、冷静になるにつれ、結局デイビス殿下は何がしたかったのか、ステラ男爵令嬢とは何者だったのかが議論されるようになった。デイビスは、王族から外された訳ではないから、もし彼が学園に戻ってきたらどう接すればよいのかと言う議題も上がっているようだった。
しかし、被害者であるブランジェは、周囲に何を尋ねられても何も言わないので真相を知る者はいなかった。と言うか、ブランジェはデイビスとのことなどどうでもよかったので真相など必要なかったのだ。
一方、政府は、ライオネス王の代になって2例目の愛と美の女神堕ち者の対応に頭を悩ませていた。神の加護を持つ者達を『女神堕ち』と呼ぶのもそもそも、かの女神の加護持ち達が色んな国でやらかした結果であることはシグルズの研究で明らかになっており、膨大な魔力の制御に苦労し、時に暴走する者達への蔑称とされていることも“どうか”との「それ、今じゃなくていいんじゃない?問題」まで議題に上がっていた。つまり、親子2代に渡ってやらかした国王と王子に本人を含めた政府のお偉方が混乱しているのだ。女神の加護のあったスフィア妃を殺してしまった侍女の処罰や神が彼女に与える天罰の正体が分からぬため『愛と美の女神の加護持ち』への対処方法も悩み処だった。




