ごじゅご
デイビス殿下は、ステラ・ダンバイン男爵令嬢が現れてから、彼女に夢中になり、ブランジェが思っていた通りのバカになっていった。
そして、また彼女は気付く。何故か王妃教育で不在のブランジェの悪い噂が学園内で広まっていることを。真相を若い男性教師に尋ねられたこともあったが、ステラ・ダンバインが被害にあった日は王城にいたと女教師達が加勢してくれた。めんどくさいことだとブランジェはまた学園に行きたくなくなった。なので、学園に行く時間を王城図書室でうたた寝をして、安穏とした日を過ごした。時折、訪れるライモン殿下や兄のルーファスやラインハルトに可愛がられながら、“何故、私はデイビス殿下の婚約者なのだろう、マチルダ嬢の方がよっぽどアレに御執心だったのに”と考えていた。
マチルダ嬢とは、ファフナー国の侯爵の令嬢でデイビスより1歳年下でブランジェやカリンとは一学年違う先輩で魔力は程ほどに多い種族の長の娘だ。何故か入学した時からデイビスに好意を寄せており婚約者のブランジェを妬ましく思っているようだった。
ステラの登場でマチルダのイライラの矛先は何故か婚約者の立場にあるブランジェに向けられていたのだが、ブランジェ自体が学園にあまり来ないので彼女はストレスフル状態だった。
「何故、あの男爵令嬢に何も言わないのだ!」と喚いていたとカリンから聞いたのもあり、ブランジェの足は益々学園から遠ざかって行った。
学園は男女比が6:4と男が多い現実があり、ブランジェ本人の預かり知らぬところで彼女の評価は高位貴族や裕福な男子生徒の中で下がっていった。
少数派の女生徒達はステラがあることないこと言っているのを分かっていたが、ブランジェと親しいカリンチュア公爵令嬢が領地に一時的に不在であったことから表だって誰も庇えず、噂を否定してみせても一部の高位貴族令嬢(マチルダ嬢一派)から嫌われていたこともあり噂は否定されなかった。
ステラの言葉に学園に通う男達の殆ど、若い教師達の一部が惑わされ、女子対男子の対立にも深まっていた。
そんな中で行われたデイビスの断罪劇に女子の多くはそれ見たことかと思い、男子の多くが嘘だろと頭を抱えた。
国外追放と言われたブランジェ。まぁ、あのデイビス殿下の宣言が通ると思っていた者はいない。いないが、渦中の人が学園に現れるとは思っていなかった。
“デイビス殿下の婚約者じゃなくなったから、お城にも行きにくい。学園の図書室は騒がしい。家は、父様と兄様以外の家族(使用人含む)がうるさい。私は何処で眠ったらいいの?”
真剣に悩むブランジェの心の中を理解しているものは、学園にはいなかった。
“カリンはいつ却ってくるんだっけ?”
頼りになる親友は遠く離れた領地にいた。




