ごじゅよん
ステラに魅了されたデイビスは、学園に入るとブランジェのことを遠ざけていた。
其なりに優秀な成績ではあったが、同い年のライモンには敵わず、また彼曰く、いつもボーッとしているブランジェが何気に学年首位なのも気に入らないとのことだった。
子供の時に会わされてから、ブランジェが自分に興味の欠片も持っていないことは分かっていた。母を代表とした周りの者達からチヤホヤされていたデイビスはブランジェの髪を引っ張ったり、突き飛ばしたりして自分に興味を持つように仕向けたが逆効果だったのは間違いなくブランジェは益々デイビスをいないものとした。
流石に髪をバッサリ切られた時は泣いたが、デイビスもライオネス陛下に叱られ、ブランジェに構うとロクなことにならないと考えるようになった。そんな拗らせ王子は、自分の欲しい言葉をくれるステラにどっぷり嵌まっていった。親切な令嬢がブランジェの耳にも情報を入れてくれたがブランジェにはどうでもいいことだった。
むしろ婚約者と言う立場がステラに代わればいいのにとすら思っていた。
当時、周りにいた男達は、ステラのあざとさを可愛さととり、彼女の言葉を真実とする傾向が強かった。ステラを庇えば庇うほど学園に通う令嬢達から白い目で見られている事実に気付いている者は少なかった。
ブランジェは、物静かな令嬢だった。
常に『眠い』としか考えていなかったのだが、上手く誤魔化し、深窓の令嬢ポジを獲得していた。週の半分以上を王妃教育として拘束されていたため友人と呼べる令嬢も僅かだった。貴重な睡眠時間をよく知りもしないデイビスのために使うことは嫌だったがアルビナ妃やエマ妃との時間は楽しいものだった。
「そういえば、スフィア妃様に会ったことはなかったな。」
自分の息子の婚約者にブランジェを当てた張本人である王妃不在のまま行われた王妃教育。結局スフィア妃が亡くなるまでブランジェは風の噂でしかスフィア妃の状況を知ることは叶わなかった。
スフィア妃以外の皆が口を閉ざし、デイビス殿下だけが母親のことをブランジェとの引き合いに出していた。
「俺の母上ほど慈悲深く、美しく、可憐な女性はいない!第一母上だけが父上の愛情を得ていたのだ!に比べてお前はなんて可愛げがないんだ!母上のように態度で俺に示せ!」
分からない戯れ言だとブランジェは幼い頃からデイビスの考えには同調出来なかった。
無理矢理スフィア妃に会わせようと引き擦られるように離宮に連れていかれそうになった時は本当にイヤで王城内で魔法を行使しそうなほど何かイヤだった。
あの時は離宮警護の騎士に止められてホッとした。
母上の望みだと喚くデイビスに駆け付けた国王が何か言っていた。興味がなかったので気にしなかった。
せめて髪の色をピンクブロンドに変えろと染料をかけられた時はマジで死ねとか思ったのは内緒だ。陛下が謝ってくれたけど、デイビス殿下から行いに対しての謝罪はなかった。悪いとも思っていない奴に謝られても無意味だ。それほどにブランジェはデイビスのことなどなんとも思っていなかった。
まだ、婚約破棄される前のある日のこと。
「すまないな、ありがとう。」
珍しく学園に来ていたブランジェは、デイビスの取り巻きへの言葉に目を見開いた。
“感謝”と“謝罪”の言葉をデイビスは知らないのだと思っていたからだ。
ブランジェの数少ない親友と言っていい公爵家令嬢であるカリンチュア・オーガスが、“デイビスバカ王子は、ブランジェが関わらなければ王族として其なりに誇りを持ち、優秀な兄殿下の足元にも及ばないが其なりに慕われているみたいよ。“と言った。”まぁ、拗らせている典型ね“と。
これまた、意味が分からなかった。
ブランジェを目の前にすると睨み付け、罵詈雑言。取り巻き達にいたってはブランジェを嘲笑の眼差しでみていたと彼女は理解していたのだが。
王城で会うライモン殿下やリウキ殿下と少なからず交流しているブランジェは、正直品格の差を感じとり大きなため息を吐くのであった。




