ごじゅいち
主人公不在。
3/7加筆訂正。
「あ、兄上?」
王太子の宮のバルコニーに降り立った人物の気配に剣に手を添えたルーファスが窓を開けて飛び出し発した言葉。
「やぁ、ルーファス。久しぶりだね。」
忘れもしない最後に見た姿より幾分大人になった顔で微笑んでいる彼に言葉を失くす。
「どうした、ルーファ…ス………、ジオン兄!えっ、でも予想より若い気が……。」
戸惑いは伝染したようだった。別れた時、ジオンは10歳。あれから、10年以上経っている。
「もう一度、生きなおした?からな。肉体的には、ライモンよりもちょい下かな。」
信じられないと額を押さえるライモン。
「何があったのか、全て話そう。」
その夜、ライモンは、エマージェン王妃、アルビナ妃に連絡をとった。
「陛下に連絡はしないのか?」
ライモンはニッコリ笑う。
「相変わらず、拗れて……なんか、強くなってる印象気がするが……。」
そんな風に話をしていると勢いよく扉が開いて麗しの王妃2人が走り込んできた。
気配を感じていたが侍女も先触れもなく来た王妃に皆が呆然とした。
最初に登場したのはアルビナ妃。そろそろ寝ようと思っていたのだろう。寝着にガウンを羽織った姿だった。
キョトンとした面々の中に懐かしの顔を見つける。
すると同じような姿のエマージェン王妃が駆け込んできた。その後を息を切らしたアルビナ妃の侍女ラデュレ、そのラデュレを支えるようにエマージェン王妃の侍女エンリが入ってきた。
「ルナマリアお姉様。」
呟かれた名前は、ジオンがその顔立ちを色濃く受け継いだ存在。
ジオンの母の名前だ。
誰もが貴族令嬢として手本にし、結婚の際には多くの殿方の涙を流させたファフナー国一の美姫と呼び声が高かったレディ。それがジオンの母である。幼い頃のアルビナはルナマリアが初恋だった。彼女ほど賢く、美しい人は見たことがなかったのだ。
年の離れた姉のように慕っていた者は数知れず、アルビナは、ライオネスに嫁ぐ時に彼女に相談したほどだった。リウキを生んで暫くした時にお祝いとして貰った花飾りは今もアルビナ妃の部屋に飾られている。
「ソレイユの珠?あれはガボット国で開発された魔術でしょ?我が国では燃料の1つとして利用される以外は禁止されているはずよ?」
ジオンは頭を振る。
「ソレイユの珠は、我がアルドノア家が厳しく管理していた魔術です。我ら吸血鬼族にとって最も効果のある魔術ですからね、ガボットからの流出も本来ならあり得ないことですが、叔母上の執念が実を結んだってところです。ソレイユを燃料として改変させた叔父上も先程城内で目覚めたばかり、犯人ではありません。」
ジオンの叔母は公爵家の変わり者で冒険者だった。依頼で侵入したガボット国で人族の叔父と出会い恋に落ち、ファフナーに駆け落ちしてきた。
叔父はガボット国で末端の魔術師でそれなりの実力があったが選民思想のガボット国上層部に嫌気がさし叔母に随行。叔母の熱烈アピールに絆され、今となっては血婚の儀式と呼ばれる吸血鬼族の術により人であることを捨て吸血鬼となった。元人であり、ガボット国出身と言うことで当初はかなりの監視下に置かれていたが、元々の性格か軟禁状態にも苦情を言わず、ソレイユの改変研究に尽力。眠りにつくまでは、叔母とレスナイト城の研究に勤しんでいた。
「ソレイユの珠数個が使われている気配がすると聞いたのは先程です。叔父上は、叔母上の背中に傷を残したソレイユの珠を憎んでいる人ですから。父母がソレイユの珠で殺されたと知り、ソレイユの珠の行方を追ってくれているんです。」
ニッコリと笑う顔はどこか憂いていた。




