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我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第八章 帰還
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よんじゅうなな

「あの日、父、母、そして、姉を殺したのは、ソレイユの珠と言う魔術だ。聞いたことはあるだろう?」

青年を中心に車座となった者達からざわめきが起きた。

ソレイユの珠ーー

対吸血鬼による人族の最終兵器と言われている魔術。吸血鬼の弱点である太陽の光を集めた魔法陣を閉じ込めた水晶玉。

「若様、ソレイユの珠は、吸血鬼を傷付けることはできますが、殺すことは出来ませんが…。」

レスナイト城の私設軍の一人が手を上げて発言する。

「その通り。ソレイユの珠たけでは、我々吸血鬼族の血が濃い者を殺せない。最悪皮2枚溶かす程度かな。1/3程度の血の濃さのもので重症ってところだ。」

吸血鬼族の弱点ではあるが、皮膚を太陽光から隠してしまえば焼けることもない。

透ける素材には遮断魔法をかけて身に付ける必要がある。ただ魔力の消費もあるので活動時間の大体が夕方~明け方となる。

宰相であった青年の父は一度城に上がると滅多に帰ってこず、帰ってくる時は大体蝙蝠に姿を変えて黄昏時に帰ってくる。

城の中は昼間などは日の光で満ち溢れるが害のない特殊な光に城が変化させていた。また、万が一を考えてレスナイト城で働く使用人も吸血鬼の血の濃さによって日の光への耐性のある混血者が昼間を担当していたりする。城の中でも日の光は彼らを疲弊させるからだ。

「父上達を襲ったのは、ソレイユの珠に何重もの光魔法を重ねがけしたものだった。」

家族が襲われたあの日、ジオンは体調を壊し寝込んでいた。魔力コントロールが上手くいかず、部屋で休んでいた。一般的な魔力コントロールの鍛練では一向に上手くいかず、吸血鬼族が体を休める昼日中に休もうとすると普段よりも魔力の暴走が激しくなるため、ジオンは体を休めることが出来なかった。

本当なら家族と共に祖父母の屋敷で行われる夜会に出て暫くの休暇をとる予定だった。祖父母だけでなく、叔父家族とも顔を合わせるはずだった。1人城に残り、体調が戻れば、駆け付ける予定にしていたジオンはいつもとは違う体調に戸惑っていた。

心配する家令達にジオンは嫌な予感がすると言った。

彼は自分の分身体でもある蝙蝠を王太子ライモンの元に送った。彼はまだ5歳と幼いが普通の大人とは違う思慮深さを持ち、それを偽っている風に感じた。万が一の時に自分の生死を知らせるなら彼しかいない。直感だった。

祖父母でも叔父夫妻でもない、王の子に託した。

それから、ジオンは父親達の後を追うと告げた。

告げられた家令や侍女長は、彼の体調を考え引き留めたが、彼の決意を尊重した。

「あの時、ジオン様が出て行くと同時に城が棘に包まれ始めたので皆は何か大変なことが起きる可能性を感じました。」

セイランの言葉。彼は当時20歳。ジオンより5歳ほど年長だった。

「ジオン様が出られて直ぐに城が変化し始めましたので規約に則り、我々も眠りにつくことになったのです。目の前でジオン様のお姿が消えたのは、転移魔法でしたから、我々は更に嫌な予感に苛まれました。」

家令の言葉。転移魔法は、魔力の消費が高い。当時は転移の魔法陣も試作段階だった。

家令の言葉に皆が頷く。

「城外で馬の世話をしていた私も気付けば馬と共に城のエントランスにいて、知らぬ間に寝てしまいました。」

レスナイト城の馬舎番が苦笑した。

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