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我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第八章 帰還
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よんじゅろく

従者の名前を入力し忘れてました。セイランです。

「まだ、目覚めるな……そう静かに。」

青年は城の裏手に立っていた。

蕀に守られた城壁は戻ってきた主のために道を開けたが、通ることが出来るのは彼だけで蕀は直ぐに閉じていく。

使用人が使うであろう小さなドアが静かに開く。

足を踏み入れた彼を出迎えたのは白い口髭が似合うロマンスグレーの紳士。

彼は帰還した若い主に頭を下げて出迎えていた。

「お待ち申し上げておりました。」

「皆は?」

「悟られぬよう、静かに城内を整えております。」

「ご苦労、」

青年は足を進める。

エントランスには使用人達が並び頭を下げていた。

「お帰りなさいませ、ジオンジーク様!」

涙を浮かべている者もいた。

「あぁ、皆には、済まないことをした。」

頭を振る面々。

「皆には、父上と母上…そして姉上の最期を伝えようと思う。」

彼の言葉に固く目を一度閉じた青年が目を開けた。

「……セイラン、」

「…お帰りなさいませ、我が君。して、場所は何処で?」

青年はぐるりと皆の顔を見渡す。

「地下の大広間で。30分後に集まってくれ。俺は、父上の執務室へ向かう。ついてこい。」

歩き出す青年の後ろをセイランが従い歩く。


永い眠りについていた執務室に足を踏み入れた2人。

青年は見渡し、机の上にある石板を起動させる。

石板には、懐かしい家族の姿が写し出されている。

「……姉上。」

笑顔の女性の姿。

何処か寂しげな印象だが、その笑顔が満面であることは親しい者なら分かる。

青年は1つのファイルを開く。写し出されたパスワード入力の扉。彼は躊躇なく文字を打ち込み、開いた。

「最期の父上の言葉が、これだったんだ。」

ぽそりと呟く。

写し出された文章を箱に保存し、石板から外す。

ぎゅっと握りしめた箱。

2人の青年は次の部屋へ。

開くと懐かしい匂いがした。

「時は、匂いも閉じ込めるんだな。」

「…そのようです。」

それは、青年の部屋。

飾り気のない部屋の壁に飾られているのはシンプルな刀と、少し意匠の施された剣。

刀は、師匠であった人が彼にと残してくれたもの。剣は、この道に進まなかった父から譲り受けたものだ。

『君は、私と違って剣の才能に恵まれた。武のアルドノア家に相応しい剣は君に。』

笑顔の父親の心境を青年はよくよく理解していた。

父が武ではなく、文を選んだこと。祖父が父の武の才能を認め、この剣を与えた。しかし、父は敷かれたレールには見向きもせず宰相府に就職。落ち込んだ祖父の愚痴を何度か聞いた覚えがある。

しかし、メキメキと宰相府で実力を示した父は見事宰相となり、祖父も父を自慢に思っていた。

「じいじは、城に入れなくてショックを受けただろうな。」

前当主であった祖父は、家督を父に譲った後、祖母と共に隠居と称し、もう少し気候の良い場所へと移り暮らしていた。

生きている城と言われるレスナイト城。

自ら選んだ主にしか門扉を開けない城。

主が存在を消した時、自ら選んだ主が現れるまで機能を停止させる不思議な城。

「ジオンジーク様、皆、集まり待っております。」

じいやでもある家令の言葉に青年は部屋を後にした。

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