よんじゅご
「ライモン様、陛下が会議終了後に執務室にくるようにとのことです。」
ラインハルトの言葉に頭を上げる。
「そうか。分かった。…で、ルーファスは何処に行ったんだ?近衛の隊所に行くと行っていただろ?」
噂のルーファスが帰ってきた。
執務室に入ってきた彼は、戸惑いの表情だ。
「どうした、ルーファス?」
「今朝、俺の宿舎に手紙が届いたんだ。……彼から。」
その一言でライモンが立ち上がる。
「確かな証拠を持って漸く帰ることが出来たから、帰ってきたと。」
「で、ジオン兄さんは!」
「城には来ていない。取り敢えず、アルドノアの居城に向かうと。」
「会ってないのか?」
項垂れるライモン。
彼にとってジオンジーク・アルドノアはルーファスやラインハルトよりも年上の後数年もすれば社交界にデビューし、人々の目を集めることになるだろう存在だった。ラーゼフォン公爵にその有望さに将来の宰相候補だろうと言われていた少年。姿を消す前に自分に魔力玉を渡してきた彼のことを忘れた日はない。
『何故か、とてつもなく嫌な予感がするんだ。俺は、姿を消すか、死ぬかもしれない。だから、ライモン、君にこれを預けておく。親父達に何が起こったか調べてくる……。もし、生きて帰って来れたら、必ず知らせるから。』
彼は、ライモンだけでなくルーファスやラインハルトにとっても兄のような存在だった。そんな彼から不穏なことを告げられ渡されたモノをライモンは肌身離さず持っている。母親やアルビナ妃から珠の意味を聞いた時、既に彼は、姿を消した後で主の去った居城は時間を止め、城の中で働く者も全て飲み込み、門扉を閉ざしてしまった。
彼の魔力が尽きぬ限りライモン達は彼の帰還を待っていた。
ライモンが7歳を過ぎもうすぐ8歳と言う頃、ライモンの側近であるルーファスの兄弟子として彼を紹介された。ルーファスよりも5歳年上で幼心にも、こんなカッコいい少年がいるか?と思ったほどだった。名門アルドノア公爵家の嫡男で武に秀でた家柄でありながら宰相の才も受け継いだ逸材。そんな評価を得ていた彼の人生が狂ったのは、それから直ぐだった。宰相として活躍していた彼の父が体調が思わしくないと王弟で臣下に降りたラーゼフォン公爵に次代の宰相を譲ったのが切欠か。突然の辞職は王位を継いで間もないライオネス陛下には驚きの事実だった。最強を誇る吸血鬼一族の長が病に倒れるなどあり得ないことだ。そして、成人していない後継への心的ストレスは計り知れない。
しかし、公爵夫妻はある日突然姿を消した。
優秀な魔女があらゆる方法で探っても彼らの命は潰えていると述べた。
後継の子息も人知れずライモンの元に訪れた後に姿を消した。警備の厳しい王太子宮に忍び込んだことにも驚いたが、告げられた言葉にも目を剥いた。
彼は去り、主を失くしたアルドノア公爵城は眠りについた。
あれから、時を経てライモンも成人となった。
ライモンにとって兄とも呼べる存在、彼がついに帰ってきたのだった。




