よんじゅよん
「ドルベック侯爵家の嫡男は、騎士の才能に恵まれなかったようで。」
ライオネスの側近であり騎士でもあるテセウスが告げる。
「で、急にアルドノア公爵家の後継として社交界デビューをさせたいと。」
「ドルベック侯爵家の後継ではダメなのだな。」
「何か一つでも才があれば。そして、何か一つでも平均点をとれるような特技があれば良かったのですが、生憎彼の学園での成績は下から数えた方が早いようで。」
ライオネスのもう一人の側近ライラ・オーガスが言う。
「先代…陛下は、アルドノア公爵家の後継について、何と言ってたか?」
ラーゼフォン公爵が宰相の地位についたことに苦情を言ってきたドルベック侯爵に先代国王は、『政治の要職は血縁によってなされるものではなく、適材適所、能力に合った者を選んでいる。各家が次代を守ってきたのは、そうなるよう教育を受け、精進してきたからだ。ドルベック侯爵は、学園でも政経科に進まず騎士科に進み、騎士としては教育を受けているが、宰相府勤務としては、いささか問題がある。今から学園に申し込み、学ぶため通い、宰相府に下っ端として就職し直すならそのうち宰相の地位も見えてくるだろうが、どうする?』と言葉をかけて退けたと言う話は有名だ。
誇りだけは何かと高い吸血鬼族であるドルベック侯爵のこと。ライオネスもフィンネルも再びため息を吐くのだった。
「相変わらず、子息の行方は分からぬのか?」
「殿下なら何か御存知でしょうが、」
「あれが素直に教えると思うか?」
ライオネスと王太子ライモンの溝はデイビス王子への対応で益々広がっていた。
「コミュニケーションをとってこられなかった陛下の自業自得ですね。」
スフィア妃の術にどっぷり嵌まっていた頃のライオネスは、ライモンにそれはもう冷たく接し、ライモンに度重なる刺客が送り込まれる度に第一容疑者になるほどだった。スフィア妃からの術の効果が薄れて来ると自分の悪行に対しライモンには土下座をしたくなるほどだが、拗れ果てた親子関係の修復は不可能の域に来ているとライオネスは思っていた。
フィンネルのアッサリとした返答に周囲は苦笑した。
「気は進まないが、一度会っておくとするか。」
執務室へ入ってきたのは、細身の吸血鬼族からは一線を画す筋骨粒々の壮年男子。赤い瞳は吸血鬼族特有と言われている。
彼は似つかわしくない挨拶を述べた後、
「陛下。いつになったら、我が息子にアルドノア公爵家を譲って頂けるので?」
とドストレートに聞いてきた。
「いくら甥の魔力反応があったとしても既に行方不明となって十数年。今更出てきた所で甥の教育とて間に合いますまい。軍部を纏める家としてアルドノア公爵家は我が国にとって必要不可欠、親父殿とて兄上が、あんなことにならなければ引退していた身。なにとぞ、ファフナー王国のことをお考えになるなら、息子にアルドノア公爵の名を与え下さい。アルドノア公爵城をいい加減稼働させねば軍の士気にも関わりますゆえ。」
言いたいことだけ言ってドルベック侯爵は部屋を出ていった。
「会議の後でライモンを呼べ。」
国王の命に室内にいた者は皆頭を下げた。




