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我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第八章 帰還
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よんじゅはち

「俺は、父上と母上、姉上のいる場所を強く願ったんだ。物凄い頭痛がして倒れそうだったけど踏ん張って耐えた。たどり着いた場所は街道沿いから外れた森の中で、皆は半透明の箱の中に閉じ込められていた。」

転移してきたジオンに最初に気付いたのは、姉のネフェルティア。公爵も夫人も彼に気付き箱の中から、箱の外の彼を庇うように立ち、姉は、弟に逃げるように叫んだ。

叫ぶと同時に箱の真ん中に浮かんでいた黒い玉が強い光を発した。

「父上の、母上の声と姉上の早く逃げろと言う声、絶対にお前を守ると言った顔が忘れられない。」

使用人達からすすり泣きの声が聞こえた。

「父上は、母上と姉上を、母上は姉上が光で焼かれないようしてたけど、父上は念話でパスワードと後を頼むを告げた直後に消えた。…は、母上は、姉上と俺の名を叫びながら……。強い光は結界を壊す程の強さで、俺は、姉上に抱き締められていた。けど、姉上の美しい髪も背中も溶けて失くなって、再生魔法なんかじゃ追い付けなくて……そのうち、俺を抱いていたはずの腕が落ちて…、灰のように消えた。」

ジオンの耳には、姉の最期の言葉が届いた。

「愛しているわ、彼にも伝えてね、幸せになって。」

セイランの嗚咽が漏れた。

彼と姉は、こちらが見ていて恥ずかしい程愛し合っていた。

「精神的に限界だったんだと思う。皆に言葉を伝えることなく俺は死ぬんだと思った。」




目が覚めるとジオンは光の中にいた。

家族を焼いた光のように強烈な光。

瞼を閉じていても感じる光。

庇ってくれた姉を越え、ジオンの身も焼くような光。

けれどジオンは、1つも痛くなかった。

うっすらと開いた瞳を光が焼くことはなく、光が彼の体を癒していた。

「……な、に?」

ジオンの頭に声が響いた。

『愛し子よ、今は眠りなさい、我が加護の名の元に、吾子が願いを叶えし力を授けよう……。』

ジオンの瞼は再び閉じられた。


「目覚めると森の中だった。膨大な魔力を体の中に感じたがじっとしているしかなかった。けれど俺は、光の中にいるときにコントロール方法を知ることができた。」

彼の苦労を間近で見てきた者は驚いた。

「光の中で俺は、もう一度最初から生をやり直していた。目覚めた時に肉体は10歳ほどに若返っていたが、魔力の幅はあの時と同じだった。この世界に帰ってきて、時が止まっていることを知った。どうなっているのか分からなくて混乱した俺は、とにかく人に会うのが怖くて。国から逃亡した。」

家令が手を上げる。

ジオンは促す。

「先程からのお話の中でジオン様が屋敷から姿を消すのと同時に我々は耐え難い眠りに誘われました。私目は、ジオン様が何処に行ってしまわれたのか、もしや儚くなられたのかと、ノエル様の所へ転移されたのですね?」

「そうだ。」

転移魔法は、当時開発されておらず、膨大な魔力を要し、時の神の加護持ちでもなければ無理だろうとされていた。

「神の加護を持つ者は、転移魔法が出来る。俺は、光の、日の神の加護を有している。」

皆がキョトンである。

「ここを去る前、俺の中には2柱の加護が存在していたらしい。その神は日の神と闇の神だ。1人の体の中に2柱の加護が存在することはあり得ないんだが、何故か加護渋滞が起きていて、俺は魔力コントロールが恐ろしく下手だった。いつか暴走して死ぬのではないかと皆も危惧したいただろ?」

皆の顔には戸惑いしかないようだった。


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