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我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第七章 ある冒険者の帰郷
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よんじゅいち

「で、どうなったんだ?その王子様は。」

礼拝堂に行かなかったのだろう尋ねた男にゲンさんは話を続ける。

「大旦那様の言うことには、第二王子は、婚約者である公爵令嬢に婚約破棄と国外追放を申し渡したんだと。」

「はぁ?真実の愛っつーてもよ、原因は男の浮気だろ?国外追放は、厳しくないか?」

「それに、第二王子に公爵令嬢を国外追放にする権利なんてあるのかい?」

疑問に対して声を上げる者がいた。食堂の娘、リティだ。

「真実の愛の前では、全て許されるのよ!」

声高に叫び、おかみさんのゲンコツが飛ぶ。

「でもよぉ、リティちゃん。婚約者の令嬢が本当に王子様のことが好きだったらどうなんだい?リティちゃんなら、その相手の女を許せるかい?」

ゲンさんの隣にいたおっさんの言葉に娘は黙った。

「……それもそうね、私だったら、女も男も許せないわ。はぁ、世の中、物語ほど上手くは行かないものね。」

ブツブツ言いながら娘は仕事に戻っていく。

「で、国外追放を言われた御令嬢はどうなったんだ?」

ゲンさんは少し考えながら言った。

「大旦那様が言うにはよ、婚約破棄と国外追放をその御令嬢は受け入れたって言うんだよ、」

「えっ!豪胆な……。」

「よほど、第二王子がイヤだったんだなぁ。」

「いや、なんか淡々としてたらしいぜ。」

おかみさんが、酒の入ったジョッキをゲンさんの前に置く。

「浮気男なんて、こっちから願い下げ~!って思ったんだよ、第二王子って言えば、国王陛下のご寵愛を一身に受けている第三王妃様のお子だろ、王妃様は御病気で離宮で静養中だと聞いたからねぇ、ちょーっとばかり、我儘に育っちまったんだよ。」

うんうんと頷くおかみさん。

俺は立ち上がった。

「おかみさん、おあいそお願いします。」

「はいよ!おやっ、いい食べっぷりだね、その細身の体の何処に入ってるんだか。」

おかみさんの言葉に笑う。

おかみさんは、俺に旅人かと尋ねてきた。

「いや、こっちが故郷なんだ。久しぶりに帰ってきたんだ。」

会話をしながら、ゲンさんからラーゼフォン公爵の名前が出たのを耳にした。公爵は、たしか国の宰相だったはず。

「じゃあ、婚約破棄されたのは、宰相さんの娘さんか。」

「ま、俺たちにゃ関係ないか。」

「そうだな、戦争始めるとか増税とかしなけりゃ、それでいいわ。」

「そういや聞いたか?」

話題が変わったらしい。

「ん?」

「……公爵家の、」

「あー、とうとう……らしいぜ。」

店を出ながら、ほんの小さい頃、あいつらが口にしていた名前を思い出す。

(たしか、ブランジェ……。)

俺は、その名前の主に会いたくなった。

ん?なんでだ?


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