よんじゅ
ほぼ会話回。
夫人を無事送り届けた俺は久しぶりのファフナー王国の城下を散策することにした。
次代を担う王太子殿下はかなりのやり手で、人族の技術を遺憾なく利用し民が暮らしやすい国造りに余念がないらしい。
国王陛下は、国を安定させた功労者だが、王太子殿下の世は面白そうだ。
だから帰ってきた。
兄的な立場で幼い頃に交流のあった彼は実に愉快な思考をしていた。そんな彼も、一年後には隣国の姫との婚姻を上げるらしい。
と言っても国王ほまだまだ健在だ。自由な内に色々やりたいのだろうと思った。
しかし、そろそろ本気を出さなければならない。俺を待っている可哀想な俺を迎えに。
今こそ父母の名誉と俺の地位を取り戻さなければ。
賑わう城下町。
きっぷのいいおかみさんのいる食堂に入るとカウンターに座った。
「いらっしゃい!おや、お兄さん、いい男だねぇ!!」
「ありがと、」
「何にするかい?今日は、ググルの煮込みがお勧めだよ!」
「じゃあ、それとエタールを発泡割で。」
「あいよ!」
おかみの粋のいい声。
うまい飯とうまい酒。
こういうのが幸せって言うだろうな。
客達の話に耳を傾ける。
「いやぁ~驚いたよな!」
「お貴族様ってのは、もっと道理のある方々だと思ったがな!」
頭の毛量が少々乏しい親父の言葉に皆が大きく頷く。
「なんでまた、神様の前であんなことしちまったのかねぇ。」
「んだ!」
神様の前っていうと礼拝堂か何かか?
「男の方は、ここだけの話、第二王子らしいぜ!」
ただの貴族かと思ったらまさかの王族。食堂にどよめきが走る。
「俺の勤め先の旦那様はさ、ほらソコソコ稼いでらっしゃって、お貴族様との繋がりも強いってんで、礼拝堂の中間よりちょい後ろに座ってたもんで、よく見えてなかったんだがな、声だけは耳に届いたらしいのよ!」
「流石、王都一の服問屋!」
「聞こえてきた名前は、第二王子の名前と、このところ羽振りの良くなったって噂の商会の出資をしてる男爵家の御令嬢の名前だ!」
漫談のような調子で喋る男は、グラスに入っていた酒を煽る。
「何々?令嬢のこと?」
話に入ってきたのは年若い食堂の娘。
「リティちゃん、知ってるのかい?」
「もちろんよ!巷で流行ってるのよ、身分違いの恋に燃える2人と悪役令嬢!」
「なんだい?そりゃ……。」
「政略結婚を結ぶはずだった若き王子が庶民に近い身分の娘と出会って真実の愛を知るの。苦悩する2人の前に立ちはだかるのが王子の婚約者である公爵令嬢で、ありとあらゆる手を出して2人の邪魔をするの!それがねぇ~とんでもなくヤな女でさぁ!」
娘の話は尽きないがおかみさんの雷が落ちた。
「リティ!いい加減にしなっ!お父ちゃんの作った料理がさめちまうよ!」
「え~!これからがクライマックスなのにぃ!」
「ゲンさん、話の腰をおっちまってすまんな、」
厨房からの声に“ゲンさん”が笑い、回りも笑った。




