さんじゅうはち
現在、ガボット国以外にある冒険者ギルドに登録しているSランク冒険者は20人程度と言われている。占術や失せ物探しなど特殊な仕事を請け負うSランク冒険者はその内5人。その中には“失せ物探し”の達人と言われているファフナー王国の名門グランハイム侯爵家に連なるシグルズ・レイズナー伯爵も含まれている。と言っても自分の興味と依頼内容が合わなければ依頼を受けることのない変人とも言われており、Sランクともあれば、その行為も許されていた。
特殊冒険者とは別に存在する者達が行う仕事は、ダンジョン攻略、魔物討伐、要人警護など多岐に渡る。ランク上げには各地のギルド長の承認が必要であるが、Sランクともなると10人以上となる。
Aランクまでは、チームにランクが与えられるがSランクは個人につけられる称号である。
では、今、賊を追い詰めている青年は本当にSランク冒険者なのか。
人族以外の冒険者は見た目で実力を図ることは出来ないが、魔力の多さを見れば自ずと実力は図れるものだった。
逃げている賊の一人は青年の魔力はさほど多くないと見ていた。しかし、圧倒的な力は仲間を次々と戦闘不能にしたことから計り知れない。
魔力を測定する能力は優秀だと言われてきた。そのお陰で、首領に見出だされたはずだった。自分が読み違えるなんて!
「お前は何者だ!」
足を切られ動けない男は青年に目を向けた。
「只の冒険者だよ。レザリオン侯爵夫人の警護に雇われた。」
「誇り高い空軍を預かるレザリオンが冒険者などに警護を頼む訳がないっ!」
「Sランクになら、誇りも何もないのでは?」
あっさりと言ってのけた青年に男は瞬きで返事をする。
「Sランク?」
「それほど大事なモノを運ぶんでしょ、さて、君達のボスを捕まえてきまーす。」
青年は消えた。
残された男は流れ出る血液と共に血の気が引いていく音を聞く。この音は実際に血が失われているから聞こえるのではない。
「Sランクの吸血鬼……冒険者?……不夜城のジーク……。あ、あんな化け物が絡んでるなんて、聞いてない!首領……、」
男は大地に倒れた。
「御苦労様、ジーク。」
走る馬車の屋根に気配がした。夫人は速度を緩めるよう命じてジークを中に入れる。
「賊の首領は?」
「レザリオン私設軍に引き渡してきました。取り調べは彼らに任せたので戻ってきたんです。」
「そう、感謝するわジーク。これを奪われる訳にはいかなかったの。」
ビロードの上品な布を貼った小さな箱。勿論魔法で封印はされているが、中にある魔石を奪われる訳にはいかない。
外を眺めるジーク。ハッキリとした表情は伺い知れないが夫人は声をかけた。
「ジークは、もしかして、この国出身なのかしら?」
その声に青年は振り向いた。
「さぁ、どうでしょう。」
いつもの飄々とした感じに夫人は笑う。
「仕方ない人ね、あら?」
何故か外、それも上空が騒がしい。
「何かあったの?」
「ワイバーンの群れです!閣下の飛竜隊の姿も見えます!」
こんな所で暴れてるの?とレイラ夫人は思った。
隣に座るジークが馬車の扉を開ける。
「ど、どうしたの?」




