さんじゅうなな
血が一杯出てるシーンがあります。苦手な方は注意です。
一番近くにいた男の腕がぶっ飛んだ。
吹き出す血に唖然となる賊は一同。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げたのは夫人。
「あ、目を閉じといて下さい。」
「遅いわよっ!」
護衛が夫人に刃を向ける賊を蹴り飛ばし背に庇う。
「ジーク殿!ボスらしき男は殺さないで下さい!」
「組合の規則にやむ終えない場合以外の殺人は許されてませんから、お気遣いなく。戦闘不能にするたけです。」
ジークと呼ばれた青年が右手を払うと左から襲おうとしていた男の右足が取れた。
「えっ?」
何が起こったのか分からないまま大地に倒れる。
痛みなど感じなかったのに大腿部から先がない。流れる血液は緑色。
「亜人の方でしたか、擬人化がお上手ですね、自己再生もお得意でしょう。だったら落としたアレは消しましょう。」
青年が指を馴らすやと落とされた右足と先程大地に転がった腕が灰のように崩れていった。
欠損した部分の再生を行おうとした男は断面に浮かぶ魔法陣に気付いた。
「それは、再生防止の魔法陣です。俺が作ったんですよ!うまく発動してよかったです。」
キラリと青年の瞳が赤く光った。
賊の首領は、ハッとなった。
「その目は、お前、バンパイアか!」
魔力を発動する時と血を啜る時に赤く光ると言われる吸血鬼族の瞳。
「いやいや、ボス!こんな真っ昼間から、奴等が動けるわけ、うわっ!」
また一人、賊の足が消えた。
「その魔法陣、再生予防と出血促進魔法が練り込められてるんです。でも、安心してください。失血死なんてことにならないギリギリで止まりますから。動けなくなるたけで殺しません。にしても、どんな悪党でも血の匂いは普通ですね。飲みたいとは思いませんが。」
マスク越してはあるが楽しんでいるのが分かった。
「お、お前、本当にバンパイアなのか?」
正体不明の怪物を見るような目を向ける賊の首領。
「えぇ。はずかしながら、お日様に愛されちゃってる吸血鬼です。さぁ、鬼ごっこをしましょう、次の村に着くまでに逃げ切れたら、お一人だけ逃がして差し上げます。」
「ば、馬鹿にしてんのか?」
青年は天に座す太陽を指差す。
「太陽が出てる時の俺は残虐性が増すんだよ、諦めて俺のオモチャになってくれや。」
口調がガラリと変わった。
発せられる魔力のオーラに震えたのは、賊だけじゃない。
「ジーク、殺気を押さえて頂戴。寒いわ。」
夫人が言う。
「失礼。」
少し殺気が収まった。
夫人と会話をしている間に賊の首領と数人が方々に散った。
「ありゃ逃げちゃった。」
「ジーク(怒)?」
「依頼人の期待には沿う男ですよ、俺は。じゃ、夫人は通常行程を進んでいて下さい。」
ジークと呼ばれた青年は溶けるように姿を消した。
残された護衛は夫人を支え起こす。
「あれが、Sランク冒険者ってヤツですか。」
遠くから馬の蹄の音がする。倒れた賊の搬送までジークは手配していたらしい。
「不夜城のジーク、存在は眉唾物でしたが……。」
「その通り名ジーク嫌ってるから、目の前では言わない方がよくてよ。」




