にじゅうろく
「おはよう、ブランジェ。」
あ、その笑顔はダメなやつ。お母様の後ろには苦笑しているヒー兄様と心配そうなラドくん。
ヒー兄さまの魅惑のハンモックから体を起こし立ち上がる。
お母様に仕込まれたカーテシーを披露する。
「おはようございます、お母様。お帰りなさいませ。」
頭を下げていると大きなため息が聞こえた。
「頭を上げなさい。居間に行きましょう。ヒース、貴方もいらっしゃい。」
ふと目をやったヒー兄様のお洋服が変更されてる。
お母様が見たら、雷が落ちること必須の服から着替えてる。
ずるい。
ヒー兄様と目があった。ウィンクは、ずるいと思うの。
「で、何があったんです?ジェジェが母上に了承なく戻ってくるなんてあり得ないでしょう?」
ヒー兄様の言葉。
「デイビス王子が、礼拝堂でブランジェに婚約破棄をしたのよ。」
お母様が肘をついた手で額を押さえている。
ヒー兄様は絶句している。
「………マジですか?」
「えぇ、場所が場所だけに騒然よ?遅れてきた陛下や王妃様達にも声を張り上げて宣言するし。」
「あいつは、バカです。」
ラドくんがプリプリしてる可愛い。手招きすると寄ってきてくれたので遠慮なく膝だっこしようとしたら、拒否られた。解せぬ。
「あのバカは、ブランジェに婚約破棄だけじゃなく、国外追放まで命じたのよ?信じられる?」
「国外追放?これまた、何の権限もないのに?で?」
「陛下の絶対零度な態度にさすがに思うことがあったんでしょうね、まずは祈りが優先ってなってね、決められた席に着くことになったんだけど、バカ王子が連れてきた娘の席がないって騒ぎだしてねぇ………。」
「ジェジェ姉様の空いた席を詰めて座らせろって言ってきたんだ。並びで言えば、」
頭に礼拝堂の4人掛の椅子を思い浮かべた。
向かって右の中央側から、陛下、王太子、第二王子、第三王子、左中央側から第一王妃、第二王妃、空席となって、陛下の後ろにテセウス伯父様、お父様、バーシアス伯父様、魔法省長官様が並んで、左のアルビナ妃様の後ろには、ボトムズ公爵様に他の幹部貴族の方々。
私達家族は右側の3列目に王太子側近のルーファス兄様の席を開けて待っていた。私が居なくなったら、あの時点で2人分席が空いたはずだった。この国は貴族社会で身分に階級がある。礼拝堂にだって座る場所というものが決まっていたはずだ。
「ブランジェの代わりに婚約するのだから、その席はステラのだと言うのよ。余りの言い分に陛下が切れてね、バカ王子とアホ娘とその他一同は、追い出され、何とか礼拝が始められたの。」
「で、ジェジェの婚約は?潰れたのでしょうね。」
ヒー兄様の声にハッとなる。やだ、寝てたわ。怒られちゃう!お母様が別のことに気を取られてるから見逃されたみたい。
「もちろん。礼拝が終わった後でフィンネルがドヤ顔で陛下に耳打ちしていたから、婚約は破棄ではなく、白紙に戻されたわ。婚約破棄歴のある令嬢なんて傷をあの人がブランジェに残すわけないじゃない!」
高笑いするお母様、怖い。
「国外追放は?」
「許すはずないでしょ、新たな婚約者を探す手間はあるけれど、貴方の評判、とっても良いのよ、お母様、頑張るわ!」
機嫌なおった?




