にじゅうご
そうそう、あのふわピンク。去年、1つ上の学年に編入してきたんだよね。
ダンバイン男爵がずっと探し求めていた恋人の子供だったって、一時社交界を賑わせてた。貴族の常識とかまるで分からないからってことで学園に来たってアカツキに教えてもらった。
何か、1学年下の私によく絡んでくるから正直顔を覚えてしまった。
魔力は弱いけど珍しい光属性の魔力持ちらしく、比護対象だ何とかデイビス王子が喚いていたな。余りに絡んでくるから、ここ最近、王妃様の所に避難している。
だって、おいでって言ってくれるし。エマ妃様の所にいるホワイトタイガーのムスターファは、モフモフで良い枕なの。一寝入りしたところで青筋立てたお母様に回収されて家に帰る生活は、ちょっと充実してたんだ。でも、デイビス王子と婚約破棄したらお城に行く理由が減っちゃうなぁ。デイビス王子のお母様である第三王妃スフィア様は、病気療養中で離宮で静養中なんだって。で、アルビナ妃様やエマ妃様がお母様代わりなんだけど、中々言うことを聞いてくれないって困ってた。
自身のお母様がご病気なんて、デイビス王子がひねくれるのも仕方ない気はするけど、正直私のことは、捨て置いて欲しかった。
だから、今日の婚約破棄が冗談ではないことを切に願うの。
あのふわピンクとデイビス王子のことは、直ぐに噂になったけど、私にはどうでもよかったし、お父様やお兄様達も悪い顔して“気にすることはない。”って言っていた。
だから、礼拝堂で声を掛けられた時も私に言っているのではないと思っていた。
でも、お母様のオーラとラドくんの声に起こされて本当に目を開けた時、久しぶりに会ったデイビス王子の顔は思い出せず、誰こいつ?状態だったし、王子の後ろに隠れているふわピンクの顔はそれこそ誰?だった。珍しいふわピンクの髪の毛だけは何となく記憶があったけど、それだけで……。婚約破棄と言われて嬉しくて、思わず転移しちゃった。
因みに転移は、王太子殿下が発明した術式魔法陣じゃないと簡単には出来ないことになっている。膨大な魔力と緻密なコントロールがなければ魔法陣なしでは無理な魔法らしい。
その魔法陣なしで王太子は転移出来るらしいけど。魔法陣や詠唱ってのは魔力の温存には欠かせないモノになっている。珍しい魔法を家族以外の前で使ってしまったこともお母様にバレてるだろうことは覚悟しておくようにって、マリアの目が語っていた。
「うっー。面倒くさい。……寝ながら対策考える。」
温かい紅茶を飲んで気をよくした私はまたヒー兄様の楽園ハンモックで寝ることにした。
「お嬢様、お嬢様?そろそろ起きて下さい。」
遠くでマリアの声がする。
んー、もうちょっと……。
「ブランジェ……。」
マリアとは違う少し低い声。
一発で覚める威力のある声だった。
「は、はいっ!」
目を覚ますと仁王立ちするお母様がいた。




