じゅうなな の なな
スフィアの侍女批判は終わらない。
「特に、生意気な侍女がいたのよ!年増の目茶苦茶目付きの悪いオバサン、さっさと辞めさせないとアルビナ様だって恥をかくと思ったから、即刻クビにしたの、褒めて?」
ライオネスは、少しスフィアへ恐怖を覚えたが、自分の中で打ち消した。
自分が出会い惹かれたスフィアは、こんなことを口にする娘ではなかったはずだと呪文のように言い聞かせていた。
デビュタントで古いドレスを来て会場の隅で目をキラキラしているのは後に第三王妃となる少女スフィア。
エスコートしているのは父と同じく官吏として実直な性格として有名な兄だ。
「スフィア、大人しくしておけ、約束だろ!」
彼は本来なら上位貴族令嬢しか出ることの出来ない王城でのデビュタントに、はしゃぐ妹を嗜めていた。
ファフナー国のデビュタントには二種類ある。
一つは、上位貴族の子息令嬢と長年城に勤め、国に尽くしてくれている官吏の令嬢や学園での上位成績者が参加できるもので、もう一つは下位貴族や社交界に出入りする階級外の家庭の子息令嬢が参加するものだ。
前者は王城で、後者は毎年上位貴族が持ち回りで開催する。スフィアの実父であるザンボット子爵は長年官吏の職を得ていて、5年前に兄も試験に受かり、財務部の官吏として働いている。その関係でザンボット子爵家には二種類の招待状が届いていた。
2つの招待状。スフィアの兄姉は自身のデビュタントの時は王城からの招待を辞退している。2人とも上位貴族に混ざって王城のデビュタントに出るなどとんでもないと考えていたし、着ていくドレスがないからだ、もちろん新たに仕立てる金もなかった。
しかし、スフィアは招待状が届くや否や両親に王城でのデビュタントに出たいと言った。仰天する家族は、色々な理由を付けて違う方のデビュタントに出るようにと言ったが意見を変えようとはしなかった。
「エスコートは、どうすんだ!俺は嫌だぞ!」
「兄さんじゃなくてもエスコートしてくれる人なんていっぱいいるもん!」
スフィアはそう言って上位貴族令息の名前を上げていく。
その名だたる令息の名前に家族は震え上がる。
「な、何考えてんのよ、あんた!その方々には婚約者がいるはずよ!」
来年、兄の同僚と結婚することが決まっている姉は貴族名鑑の再編に携わる仕事をしている。官吏とまではいかないが事務員と言うところか。
「政略だから、愛情は無いっていっていたわ。ドレスだって用意してくれるって言ってたもの!」
「「ば、ばかもの!!」」
家族一同は叫んだ。
「あ、あんたが、婚約者のいる上位貴族の令息や商人の息子にちょっかいを出してるの分かってんのよ!」
「ちょっかいって、何よ!愛のない結婚に悩んでるようだから相談に乗ってるだけよ!ただの友達に勘繰るのはやめてよ!」
「本気で言ってるのか!」
「私は、愛のある結婚をするの!その相手を見つけるために、このデビュタントははずせないのよ!」
家族は、他家からの申し出を断るなら王家のデビュタントに出てもよいと条件を出した。スフィアは喜んだがドレスは母のお下がりとなった。ドレスがなければ諦めると思ったのだが、そうはならなかった。
父は仕事を理由にエスコートを拒したため、スフィアのパートナーは兄となった。
姉はスフィアが笑みを浮かべていることに目を細めた。
「あんたなら、そのドレスに文句の一つも言うと思ったけど?」
「いいの、これで。大切なお母様のドレスだもの。」
何故かゾッとする姉だった。




