じゅうなな の ご
次に侍女長が前に出て頭を下げた。
「続けてよろしいでしょうか。」
ライオネスは、思考から戻り、うんざりした顔を見せながら発言を促した。
「アルビナ妃様がスフィア妃様に付けた侍女達は、スフィア妃様の被害妄想に付き合ってられないと毎日くじ引きで係を決めているようで、スフィア妃様のお心に沿うほどに長続きいたしません。スフィア妃様は少々、我慢が足りぬお方のようでございます。自分は王妃なのだとことある毎に申されまして、先日は、仕方なくスフィア妃様に付くことになった私めに生意気だ、クビにすると申されました。また、後宮の責任者であるアルビナ妃様を諸悪の根源だと罵られておりました。王家の侍女になりたい者は多く、今のところスフィア妃様への憧憬の念にかられ、庶民の中からスフィア妃様付きを希望する者は絶えませんが、侍女と言う仕事にも修練が必要にごさいます。もう二度と来るな、クビだと言われた貴族位の侍女が後を立たず、クビを言い渡された侍女の中には、それこそ有り難いと思う者もいる始末。いずれは限界がくると思われます。スフィア妃様の侍女を全て庶民出身者で固める訳にはまいりません。如何いたしますか?」
ライオネスは頭を抱えた。
散々な言われようだった。しかし、この時点ではまだスフィア妃に対する愛情が確かにあったため、教育的な問題はともかく、侍女については、今一度、待って欲しい、スフィアへは、我儘を言わないことを自分がちゃんと指導するので今まで通りの体制を続けて欲しいと頼んだ。
「………御意。実際のところ、スフィア妃様におかれましては、ご自分がクビにした侍女の顔や名前は覚えていないようでしたので、誤魔化しながら仕えさせて頂きます。」
苦々しいと顔に出ているのも珍しいことだった。
その夜、ライオネスはスフィアに対して、教育が進んでいないことについて尋ねた。
「そんな、私は頑張っていますわ、けれど皆が意地悪をしてわざと難しい問題を出してくるのです!それに一般教養なら、学園で習ったことで十分でしょ?それ以上の知識なんて女には必要ない、可愛いお嫁さんになることが一番の幸せだって思うもの。」
王妃と言う存在はただの貴族令嬢とは違い、あらゆる知識に精通しておかなければならない、得手不得手もあるだろうが、貴族令嬢とは違う合格ラインがあり、そのラインを越えるか、せめて線上でなければ王妃として侮られるものだとライオネスは丁寧に説明した。
「スフィアは、いずれ孤児院や病院に慰問に行きたいと言っていた、その時にだって王妃としての教養が必要だ。」
ライオネスの説明にスフィアは、首を傾げた。
「あら、大丈夫よ、ライオネス。孤児院や病院にいるのって庶民でしょ?頭が悪い連中だもの。学園を卒業した私の知識だけで十分対処できるわよ。」
ケラケラと笑う。
ライオネスは、スフィアの言葉に胸が痛んだ。
ライオネスは、王位についてから綱紀粛正と一般庶民への教育を二大柱に掲げ、宰相を始めとした臣下達と懸命に取り組んできた。アルビナ妃やエマージェン妃を妃に迎えると彼女らに教育方面の政策立案は任せた。地方ではまだまだたが、王都での識字率は格段に上昇したといってよく、奨学金を利用して大学まで行く庶民も増えてきたのだが、スフィアは理解していなかった。




