じゅうなな の よん
「もう一つ、よろしいでしょうか。」
女官長が一歩前に出て頭を下げる。
彼女は、アルビナ妃が尊敬する学園の大々先輩だった才女だ。元は宰相府所属の官吏だった。彼女が就職した頃の城は後宮内での女の醜い争いが吹き荒れていた時代で、後宮の管理・運営を任されていた官吏は正妃とは違う派閥の出であり、色々あった。そのせいで、後宮内での最高権力者であるはずの正妃が軽視されてしまい、余計拗れてしまっていた。宰相に就任したばかりのラーゼフォン公爵は、これ以上の揉め事、出費は許されないと先代国王を説得し、後宮の人事を掌握。数える程度しかいない女性官吏から彼女を選び、後宮の改革を行った。彼女の活躍は女性の地位向上に大いに貢献した。
「女の敵は女ですが、女の真の味方もまた女でございます。」
彼女の言葉は、異国から嫁ぎ正妃であるにも関わらず、自国の上位貴族出身の王妃達からのネチネチ攻撃に負けそうになっていたライオネスの母の信頼を得る一歩となった。後に官吏だけでなく、侍女の地位向上にも一役かった人物である。
「侍従長が申しておりますように、教師不足となっておりますので、せめて高い学力を有する女官吏に時間を割いて歴史学や政治・経済について教鞭をとってもらうことにしたのですが、スフィア妃様は、学門を修めた者を軽視する所があり、中には、婚姻を結ばず、国のために働く者に『人として欠陥があるから愛してくれる者がいない、可哀想な女』等と言い、反論した女官吏に生意気だ、私は王妃だとモノを投げつけ怪我を負わせました。以後、教鞭をとることに皆が辞退しております。後は後宮ではなく、主の宮か、城内の一室をお借りして、男性教師に頼むしかございません。主よ、如何いたしましょう。」
女官長の声も視線も鋭い。
後宮は女の城。
「学園を隠居した教師にも頼んでよいと言ったが?」
ライオネスの言葉に女官長が眉間にシワを寄せ言った。
「5人目と申しましたが、それはあくまでも王妃教育に関する教師の人数でございます。貴族として、また一般教養についての教師に付きましては二桁に乗っております。先程、主が申されました教師陣にも依頼いたしましたが、無理でごさいました。」
男性はライオネスか彼の許しがある一部の近衛騎士、親族、商人しか入れない決まりになっている。
孫もいるような年齢の教師ならスフィアは可愛い孫娘に見え、優しく接してくれるだろうと思っていたが、あらぬ容疑を掛けられたと女官長に訴え去っていった。
「既婚者でもかなりの精神力が必要となるでしょう。」
ライオネスは、スフィア妃の学生時代を調べた資料を思い出す。
各学年に彼女を庇護する者が存在したとあった。
その者達は、上位貴族や豪商の息子で固めれており、何かと話題を振り撒いていたが誰とも付き合うことなく、ライオネスと出会い結ばれた。
学生時代のことを尋ねると
「皆さん、とても親切で、お勉強や学園での心得を教えて下さったのです。色々誤解もされましたけど、ライオネスに出会うために与えられた苦難だったのかなって思うの。」
と言った。
あの時のスフィアの言葉にライオネスはスフィアこそ求めていた女性だと思えたのだ。




