表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第三章 婚約騒動とお花畑
34/91

じゅうろく の に

宰相府は、ラーゼフォン公爵襲撃事件の対応に追われ、機能していないと言ってよかった。

次期宰相候補で息子のフィンネルは、その頃、一時的だが屋敷に戻っていた。しかし、母の第六感と寝ていたブランジェが急に泣き出したことに安堵と胸騒ぎを覚え、家族の説得もあり、滞在時間30分ほどで邸宅から城に戻った。その道中で襲撃を受けたと言う。城からブランジェの婚約について知らせる馬車が来たのはフィンネルが出た後で、まさに寝耳に水の状態だった。

「デイビス王子とブランジェ嬢の婚姻を告げる役人に問い詰めていた所に公爵閣下の事件を知らせる隼が到着し、その数分後にフィンネル殿の襲撃の報も知らされ、公爵家は混乱の中にあるようです。」

そりゃそうだとアルビナ妃は嘆息する。

ある程度の距離なら念話と呼ばれる魔法で情報のやり取りは出来るが、科学の発達していないこの世界では一番早く知らせを届けるのは、鳥であり、隼や鷹などの猛禽類であった。

「フィンネルの被害状況。」

「フィンネル様付きの従者が重症、かの方も傷を負われたようですが、回復魔法にて皆様、命には別状なしとのことです。フィンネル様は、折り返してきた隼から情報を得て、事件の起こった町へ事態の収集と閣下の容態確認に向かわれたとのこと。身内に起こった惨事だからと政務を滞らせることはないでしょうが、暫くは混乱するでしょう、何せ残っているのがあの伯爵だったのですから、しかし、号外のことを聞き付けた陛下が御自ら宰相府に向かわれ、直々に拘束。婚約の件がアルビナ様に上がって来なかったのは、ドラグナーの件が佳境だと言うことで、余計な情報を入れるなと陛下が。しかし、陛下も婚約の公布には、公爵の許可を得た後に時を選べと宰相府には言っていたようです……。」

エマ妃はとラデュレを見る。

「エマ様は、隣国へ外交中です。」

分かっていたはずなのについつい友の顔を思い浮かべてしまい苦笑した。

「号外のことは知らなかったとはいえ、デイビスとブランジェの婚約を勝手に決めようとするなんて………アホかっ!このままだと国が割れるぞ………。エマを呼び戻せ、馬鹿げた命令を通した馬鹿を全て連れてこい!貴族院の幹部と緊急会議だ!陛下には私が言う!」


宰相府にいると言う国王を訪ね城内を進むアルビナ妃の迫力に人々は道を譲る。

扉を開けたアルビナ妃を見たライオネスは、彼女から放たれる怒気に顔をひきつらせた。宰相室には拘束されたダグラム伯爵とライオネス、そして彼の側近2人がいた。

ある程度の我儘なら許せたが、さすがに混乱の中にあるラーゼフォン公爵家のことを思いやれぬ今回のことをアルビナ妃は呆れと強い遺憾の意をもって国王に苦言を呈した。

ライオネスとて寝耳に水だった。

スフィア妃を落ち着かせるために用意させた婚約許可書に御印は押したが魔力までは込めず、提出はしていなかった。後日、アルビナ妃やエマ妃の意見を聞いて、結果的に同意を得られなければ婚姻を白紙にするつもりでいた。白紙になった時にはライオネス自身がスフィア妃に説明する予定だったとそう告げた。

誰かが許可書を持ち出し、それがミハエル・ダグラムの手に渡った。彼がどういう理由でこのような事をしでかしたのか調べるには父親の存在は欠かせない。

事件の概要と婚約に纏わる騒動を知ったエマージェン妃はアルビナ妃からの命もあり、急遽帰国を決定。手にした遠見水晶鏡から国王にアルビナ妃と同様の苦言を呈した。

「「妃の我儘すら、制御出来ないなんて、情けない(ぞ(でしてよ!)!」」

アルビナ妃とエマ妃が同時に発した言葉は、ライオネスの心を抉った。

「空気の読めない貴族の一部がスフィア妃様宛に婚約のお祝いと称した貢ぎ物を届けております。今更、取り消すのは外聞が悪いかと。ま、号外を上げた時点で手遅れでしょうけど。」

木菟がそっと告げる。

彼は昔からライオネスに対して容赦なかった。


その後、スフィア妃の我儘を通したことと、襲撃事件と時期がかぶり負い目となったライオネスは、第三王妃の我儘に対して苦言を呈されると双方の心を損なわない譲歩案を王妃達に示すようになった。

スフィア妃のことになると途端にヘタレになり下がるライオネスに、どうしたものかと妃2人はため息を吐くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ