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我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第三章 婚約騒動とお花畑
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じゅうろく

アルビナ妃は道すがら考える。

『婚姻届も号外も陛下の御印が必要なはずだ。』

と。

「偽の御印でも使われたか?とりあえず、説明を。」

妃の問いに近衛は答える。彼は近衛とは言ってもアルビナの手足となって動く暗部でもあり、素早い情報収集に定評のある“木菟”との異名を持つ男だ。

「はい。立て籠っている男、以下ミハエルとします。は、許可書を持って号外塔に来たそうです。許可書を確認した見張りの一人と共に塔へ入りましたが、中の職員は許可書に違和感を感じたようで、問い詰めましたが、ミハエルとではなく、見張りと揉み合いになり、2人は塔の下へ転がり落ち、打ち所の悪かった見張りが死亡。号外塔の職員は命に別状はありません。男が内鍵をかけ、立て籠り、号外を打ち上げたようです。倒れていた職員の手に握られていた書類から御印は本物だったようです。しかし、御印には陛下の魔力が流れていなかったようです。本来なら提出された時点で発覚したでしょうが、公爵閣下の事件をいち早く知った町出身者が役所に殺到し、城部門の官吏も駆り出されていたようです。留守を預かっていた役所官吏は、町の出身者ではなかったのですが、事件に気をとられ、また、身分を嵩に急かすミハエルに慌て、書類の処理に必要なマニュアルを省略してしまい、露見しなかったようです。」

「教会もか?」

「…はい、役所内にある教会支部もテロの起きた町へ義援金を希望する民で混雑し、確認を怠ってしまったと。下級貴族同士の婚約だと説明したミハエルの言い分を鵜呑みにし、書類の様式も名前もろくに確認せず、神の名の許諾の印をされたとのことです。」

アルビナ妃は余りに杜撰な管理に眉間を押さえた。

多くの人民に被害の出た今回の事件。いち早く情報が寄せられるのは城だ。城から下ろされた情報は直ぐ様、直轄の役所に送られる。

事件の報が届いたのは事件が起こった2時間後、その僅か数分前に町出身の貴族令嬢が職場の上司に支えられるように城の広報部に駆け込んできた。

何でも宰相閣下の視察の案内人を任されていた町の領主である父が、いずれ爵位を継ぐ娘の勉強になるだろうと高い金を出して、遠見鏡と呼ばれる魔道具を用意してくれたのだと言う。城の役人として働きに出たばかりの娘は、遠見鏡を使って視察の様子を父のペンダントの宝石を通じて見ていた。

そして、事件が起こった。

娘は最初何が起こったのか分からなかった。何かの物語を見ているように感じたのだ。

火の手の上がる町。逃げ惑う人々、遠見鏡の映像が揺れるのは父が逃げているからだと他人事のように感じていたが、見えていた映像が暗転し娘は『うそっ!』と言う言葉と共に立ち上がった。

尋常ではない部下の様子に上司が彼女と遠見鏡を持って訪れた数分後に襲撃事件の報が城へと届けられた。

事件を生中継で見ていた令嬢の混乱を鎮めるることに時間がかかり、報告が遅れたと上司は告げた。

娘は何が起こったのか最初分からなかった。また、就業中に隠れて見ていたことも重なり叱責が怖く報告が遅れた。

政府が事件を把握し軍を向かわせたのが約一時間後、異例の早さだった。軍の派遣と共にテロを警戒して王都は封鎖された。その封鎖で多くの民は事件を知ることになったのだが、町出身の民にとっては、役所が一番早く情報を知る場所となるため役所は大混乱となったのである。



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