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我慢の女神は惰眠を貪りたい。  作者: 櫻塚森
第三章 婚約騒動とお花畑
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じゅうなな

スフィア王妃にとって、後数ヶ月早くデイビスが生まれていれば、王太子となっていたと言う事実は実に悔しいことだった。また、第二王子と言う地位にあるデイビスの下にはボトムス公爵家の後見を得ている王子がいる。この事実は息子の地位が公爵家の圧力で繰り下げられてしまう可能性を秘めていた。


「何故なのかしら、」

スフィア妃は可愛いはずのデイビスにも不満があった。顔立ちは母親であるスフィア妃に似て愛らしいが、王太子ライモンのような金髪碧眼ではなかったからだ。

「王子様と言えば、金髪碧眼でしょう、なんで?」

ライオネスは、金髪碧眼である。晴れ渡るような青空のような青、スフィア妃曰く、これぞ王子様!な容姿をしている。スフィア妃は、ピンクブロンドに緑と金色を混ぜたような瞳の色だった。

デイビスが生まれた時、ライオネスはスフィア妃にそっくりな色合いの王子を見て喜んでいたが、スフィア妃は内心がっかりした。

エマージェン妃の生んだ第一王子ライモンは、色合いも顔立ちもライオネスによく似ていると侍女が言っていたのだ。

(て、ことは金髪碧眼!?ずるいわ、)

悔しくてデイビスの髪の毛だけでも染めようかと思ったほどだった。


デイビス王子が生まれてからと言うものスフィア妃には日替りで侍女が付いていた。

懐妊が分かる前に起こした事件が原因で希望する者が皆無だったからだ。

自分からライモン王子のことを聞いたくせにライオネスには侍女達がデイビスとライモンを比べてくると言ってみたり、デイビス王子が少し体調を崩すとエマージェン妃の刺客が毒を盛ったのではないかと言ってみたりしてライオネスを多いに失望させていた。

生まれた王子の育児についてもエマージェン妃が乳母に任せきりにするのではなく、公務の間に時間を割いて自らも積極的に関わっていることを知ると自分もすると言い出し、結局は泣き出したデイビスに我慢が出来ず、

「子守りなど貴婦人がするものではないわ!」

と癇癪を起こした。


スフィア妃の癇癪は日を追う事に酷くなり、その都度呼び出されるライオネスは、執務にも影響が出始めたことを宰相に指摘され、ため息を吐いた。

呆れたアルビナ妃、エマージェン妃からは、スフィア妃を一時的にでも城から離し、療養させる必要があるのではないかとの提案が出された。


ライオネスからの提案に泣きわめいたスフィア妃だが、行き先が、上流貴族の保養地として有名な別荘地帯と知った途端に泣き止んだ。

『環境と子育てによるストレスのため王家所有の離宮で静養が必要。』との名目でスフィア妃は旅立った。

離宮までの護衛にライオネスの近衛副長であるテセウス・グランソード卿を氏名してきた時には呆れ返った一同だったが嫌だと言ったテセウスの意見は、スフィア妃をさっさと城から追い出したいラーゼフォン公爵の微笑み1つで消されることになった。

離宮でも色々あったスフィア妃だが、ある程度以上の我儘を満たされたことで2ヶ月ほど経って城へと戻ってきた。


時は流れてもスフィア妃は周囲の期待を裏切らなかった。

「デイビスは、やっとお勉強を始めまられましたのよ。教師の先生方の評判も上々ですの、王太子の勉強よりも1ヶ月遅れましたけど、すぐに追い付き、追い越しますわ。」

あの婚約騒動以後、ライオネスはスフィア妃のこの手の話題には真摯に耳を傾けないことにしていた。

愛情が冷めた訳ではないが彼女の言うことを信じると後でとてつもなく疲れるのだとようやく自覚したのだった。 



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