じゅうさん の に
内政が安定し始めた頃から2人の妃はスフィアの存在を知っていたが余りにも爵位が低い貴族の令嬢であることから何れは愛妾として迎えるつもりなのだろうと思っていた。
ところが国王の望みはスフィアに第三王妃としての地位を与えると言うもの。国王の望みに周囲は異を唱えた。
やっと安定してきた内政、次は世継ぎについて考えなくてはならない時期だと誰もが口にした。
魔力の強い正妃と第二王妃、子供は出来にくい。子沢山の家系と言われているエマ妃にすら懐妊の兆しはない。そんな中迎える魔力の低い、懐妊しやすいと言われている令嬢。万が一スフィアが先に子を産もうものなら、エマ妃の実家はともかく、ボトムス公爵家は黙ってはいないだろう。また、国が荒れる、バランスが乱れると臣下達は考え、妃ではなく愛妾ではダメなのかと問うた。その問いに国王は、スフィアは愛しく、自分にとって癒しの存在であり、先の2人は国を守り育てる為の戦友である。スフィアの地位を安定させたい。と答えた。
今まで女のことで我を通すことがなかった国王の決意は固く認めるしかなかった。スフィアの父親は娘が王妃となると同時に伯爵位を賜り、政府の要職に格上げとなった人物ではあるが、出世欲は皆無で、スフィアも第三王妃と言う地位にはいるが父親同様無欲な王妃だと周囲は認識していた。
スフィア王妃の評価が想像とかなり違うと冷静に判断したのは、アルビナ王妃である。学生時代のスフィア妃を知っていたエマ妃から情報は得ていたが、後宮に入る時に広報からもたらさせた彼女の発言は、民を引いては国王のことを支えるに相応しいものだっため、エマ妃からの情報を鵜呑みにはすまいと考えた。
ボトムス公爵家出身の正妃アルビナは父兄とは違い、公明正大かつ、基本おおらかな性格である。
その王妃が、宮でスフィアと会って、2、3会話しただけで彼女の本性に気付いてしまっていた。
争い事を嫌い、国のためになるならば父兄(現ボトムス公爵)の言うことなど右から左。敵対関係にある派閥令嬢ともコンタクトをとり、まだ正式な相手のいなかったエマージェンを第二王妃にスカウトした。2歳年下のエマとは学園で知り合い家庭の事情を知りつつも2人は絆を作っていった。嫁ぐことが決まった時、国王のことは好きでも嫌いでもなかったが、一般的に知られているドロドロした後宮のイメージを払拭したいと思っていた。先代国王陛下の後宮では女達の争いがあり、危うく国庫が枯渇しかねない状況を作り上げた。先代国王は愚王ではなかったが、王妃達のことには無関心過ぎた。その無関心さが民を苦しめた。幸いしたのは、次期国王として才覚も年齢も適していたのが現国王ただ一人だったことだ。クーデターとまではいかないが、この時ばかりは、現政権の幹部貴族が一丸となり、先代国王と王妃達を隠居させることに成功した。ファフナー王国の暗黒時代が終焉したのだ。
「この度、第三王妃の地位を賜りました、スフィアです。国王陛下の癒しとなれるよう努めますので、よろしくお願いします。」
小鹿のように震えながら言うスフィアに何故か挨拶に付いてきた国王が寄り添い2人の世界を作り上げていた。
アルビナ妃が何か言う度にびくつき、国王にすがる。
終いには「もういいだろう。」と国王自らがスフィアの腰を抱き寄せながらアルビナ妃の宮から出ていく。
残された面々は青筋を立てる者、呆気にとられる者、嗤う者と様々な表情を見せていたがアルビナ妃は努めて冷静に命じた。
「この後、エマ妃の宮に行くと聞いた。どんな具合だったか、聞いてきてくれ。エマは、学生時代の彼女を知っているからね。」
「直ちに!」
最後まで言い終わらない間に一人の侍女が出ていった。
結果、エマ妃のところでも国王とスフィア妃は同様の態度だった。抱き寄せられながら宮を出ていくスフィアの勝ち誇った顔。目敏い侍女達が気付かぬはずはなかった。たちまちライオネスの寵愛は後宮を駆け巡る。スフィア妃が次期国王を生むのも間近だと。
しかし、2人の王妃は動じない。
2人とも国王の愛が欲しい訳ではなかったからだ。そして、国がうまく行くなら文句はなかった。




