39:オールたち分からんちんと相談、そんでマズーリに言いたかったことを言われてしまうオッサン
投稿作品には、日にどれぐらい読まれているのか分かる『アクセス解析』という機能があります。
それによると、この作品はだいたいですが1日に25人ぐらいの方が読んでくれているみたいです。
そんな25人のみなさんに。
ありがとうございます!
マズーリに案内された場所は沼地だった。
これは……隠れるにはいいけれど、体が冷えてしまう。春とはいえ、まだまだ夜は冷える。それに怪我を治したものの、助けだしたコボルト達は体力がない。病気になったら、ヒールでは治せないのだ。加えて、オール達も疲労しているようだったし。
そう思った僕は、もう開き直ることにした。
アイテムボックスからドドンとユニット・ハウスを取り出した。
「おお!」
と驚いているみんなの前に、ドッサリの食べ物もだしてあげる。
「わあ!」
歓声があがる。
それから薪を取り出して、盛大に火を焚いた。
みんなが食事をしている間に、軽く沼地の周りを歩いてマップを拓いておく。これでゴブリンが攻めてきても直ぐに探知が可能だ。
「さて、これからどうする?」
僕はオール達とマズーリに訊いた。
助け出したコボルト達はお腹がいっぱいになるとあっけなくユニット・ハウスで眠ってしまった。因みにオーストラリア・シェパードちゃんは僕の胡坐をかいた足を枕にして眠っている。時折、ウゥンとうなされているので、その度にポンポンと背中を軽く叩いて安心させるようにしている。
オール達は答えない。
だから、というわけでもないだろうけど、マズーリが口を開いた。
「ワシは、あの連中を森まで護衛します。せっかく助け出せた同胞を捨ておくわけにはいきませんから」
とまで言って、マズーリは不安そうに僕に訊いてきた。
「集落はあの人数を受け入れてくれるでしょうか?」
「それなら大丈夫だよ。食料の心配も住む場所もたんとあるから」
畑はそれこそ無限に収穫できる。あと2、3000人増えても何とかなると思う。もっとも、そんなに増えると住む場所が問題になるけれど。
「ただ」と僕は付け加えた。
「ちょっとばかり赤ン坊の泣き声がうるさいけどね」
「赤ン坊!? 産まれたのですか?」
くわ! とマズーリが目と牙を剥く。
ちょっと怖いぞ。もしかしないでも喜びの表情なのか?
「ああ、元気なのが35匹もいるよ」
「おお、そうですかそうですか!」
好々(こうこう)爺の顔でマズーリがうんうんと頷く。
と。頷いていたマズーリがオール達を向いて「はて?」と小首を傾げた。
「赤ん坊が産まれたんじゃよな? なのに、何でオスのお主等が……」
とまで独り言ちて
「まさか、お主等! 赤ん坊とメスを置いてきたというのか!」
マズーリが鼻にしわを寄せて唸る。
その大声にAシェパードちゃんが「ううん」と不機嫌な声をもらした。
「マズーリ、落ち着いて」
不承不承、マズーリが口をつぐむ。けど、鼻にしわは寄ったままだ。
「マズーリの考えた通りだよ。そこに揃った馬鹿ちんどもはメスと赤ン坊を置いて、平原に来たんだ」
僕の言葉に、オール達が畏まって小さくなる。
「で、僕はそんな馬鹿ちんどもを連れ戻しにきたってわけだ」
「わ、我々は同胞を救いたいのです!」
思い切った様子でオールが発言する。
ううん、とAシェパードちゃんが唸って、それでオールも声を落とした。
「決意して、平原に来たんです」
うんうん、と顔見知りのオスが頷く。
「なら、もう救ったじゃないか。森に帰ってもいいだろ?」
「しかし、まだ救わねばならない同胞は沢山いるのです」
僕はポリポリとこめかみを指先でかいた。
「じゃあ、君たちは平原の全てのコボルトを助けるまで帰らない、と?」
「そのつもりです」
「ふーん。だったら、この子はどうするんだい」
僕は眠っているAシェパードちゃんを目で示した。
「ゴブリンから助け出して、はい、それで終わり。それでいいのかい?」
「それは御使い様にお頼みして」
僕は溜め息をつきたいのを我慢して言った。
「言われるまでもなく、そのつもりだよ。けど、僕はこの子たちを連れて帰る以降は手伝わないよ。次にまたコボルトを助け出せたとして、それで助けたコボルトをどうするんだい?」
うう、とオールが呻く。
「ハッキリ言うけどね、君たちは平原になんて来るべきじゃなかった。君たちが本当に守らないといけないのはメスと赤ン坊だろう? 彼女たちは森の集落で餓えていたんだよ?」
こうまで言っても、まだオール達は煮え切らない。
遂にはマズーリがブチぎれた。
ボカリ! とオールの顔面を殴りつけたのだ。それから1匹1匹を殴って回る。
マズーリは泣いていた。
涙をポロポロこぼしながら言った。
「無くしてから気付いても遅いんじゃぞ」
それが決定打だった。
オール達は帰ることに同意した。
でも、ま。
このまま帰してはくれないみたいだけど。
マップにとんでもない数の光点が現れたのだ。それこそマップの一部を埋め尽くすほどに。明滅しているからには敵だ。逃げたホブ・ゴブリンが呼び寄せたゴブリンだろう。
火を盛大に灯しているし、食料もある。明かりと匂いで、場所が割れたに違いない。
「みんな。正直に言って、まだ不完全燃焼だろ?」
僕の言葉に、何を言っているのかとオール達やマズーリが疑問の表情を浮かべる。
「ゴブリンが攻めてきた」
みんなが緊張する。
「思う存分、恨みを晴らしてきな」
僕は戦死たちの1人1人に結界をはった。
「これは…?」
「結界だよ。これでゴブリン程度の攻撃は受け付けないはずだ。殺到されても、結界が展開して数におされて潰されるようなこともない」
オール達が表情を輝かせる。
それから僕は
「これを」
と物質生成で剣をつくってマズーリに手渡した。
「ありがたいのですが、ワシは老いてしまって剣をまともに振れんのです」
「なら」
と僕はマズーリにMP割り振りによる身体能力向上を施した。
全ての値が全盛期に戻るように。
もっとも、これは永続じゃない。僕から譲渡したMPによる強化だから、時間と共に身体能力は落ちていく。時間制限つきの強化だ。
「体が!」
マズーリが手の平をグッパしたり、太ももを上げたりして、確認している。
「御使い様!」
「1時間…といっても分からないか。攻め寄せているゴブリンを飽きるほど倒す時間ぐらいはもつはずだ」
ブン! と剣をマズーリは振るう。
さすがはスキル:剣技がレベル12。ただ振っただけでもオール達とは違う。
「これなら…思う存分に…!」
僕は、みんなを順繰りに見た。
血気盛んな顔が見返してくる。マズーリでさえも。
「行け!」
命じると、僕が指さした方向にコボルトの戦士たちは駆けて行った。
40分ほどで、マップの明滅する光点は全滅した。
もちろん、コボルトに犠牲者は出なかった。




