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44/50

38:オールたちに加勢、そんで助けたコボルトに感謝されるオッサン

「らあああああああああ!」


僕は大声を上げた。


ゴブリンどもが僕に気づく。ヨダレを垂らして、駆け向かわんとする。


「カッター!」


手加減なしの全力全開だ。

薄い空気の刃がゴブリンどもを上下に裂いて吹き抜ける。


素晴らしい切れ味だ。

実際。あるゴブリンは10メートル以上も走ってから、ズルリと腰から下が滑って、それから上半身が地面に落ちるような始末だった。


これだけでゴブリンは約半分になった。


当のゴブリンどもは顔を見合わせてから。我先に死体に食らいついている。


僕はジャンプした。


「結界」


で死に体のマズーリを囲う。


それからオール達に目を向けた。



--------------------


オール 【職業:戦士長】

種族:コボルト

性別:♂

年齢:29


レベル:      30

HP : 220/310

MP :      60


こうげき:75

ぼうぎょ:35


ちから  :  90/110

すばやさ : 320/380

きようさ : 130/150

かしこさ : 180/220

せいしん : 270/300

こううん : 180/180

かっこよさ: 300/470


スキル:剣技 lv6

   :盾 lv3

   :小隊指揮 lv4


BAD:疲労(ステータスの値を減少

   :空腹(ステータスの値を減少


--------------------



--------------------


マール 【職業:百人隊戦士】

種族:ホブ・ゴブリン

性別:♀

年齢:56


レベル:       8

HP : 500/540

MP :  25/ 25


こうげき:250

ぼうぎょ:120


ちから  : 150

すばやさ : 100

きようさ :  50

かしこさ : 150

せいしん : 200

こううん : 160

かっこよさ: 500


スキル:棒術 lv3

   :百人指揮 lv1


--------------------


ホブ・ゴブリン!

上位種か!


オールたちは、まだ僕に気づいてない。

四方八方からホブ・ゴブリンを攻め立てているけれど、どうにも攻撃が通ってないようだ。逆にホブ・ゴブリンの攻撃もすばやさに勝るコボルトに当たってはいない。当たっていたら、無事ではすんでないだろう。


ここからホブ・ゴブリンを僕が殺してしまうのは容易たやすい。


でも。僕は香の言葉を思い出していた。『復讐って大切ですよ。ムシャクシャして、モヤモヤして。それを晴らすのは大切ですよ。あたしは女だから。子供だから、それをコウヘイさんに任せちゃったけど、ユーリィは男だもん。自分でやらないと』


ここまで来たんだ。


僕は物質生成で『剣』を造りだした。2回目だ。オオカミの時よりもこなれたのか、なかなかに斬れ味よさそうな剣ができる。


「オール!」


僕は生成した剣をオールに向かって投げた。


オールが僕を見上げ、ザクリ、と剣が彼の前に刺さる。


たせ!」


オールは頷いた。剣を抜いて、ホブ・ゴブリンへと疾走する。


ホブ・ゴブリンはほとんど無防備だ。今までコボルトからの攻撃が通らなかったことの油断。加えて、僕というちん入者を見上げてしまっている。


僕は大空を滑空する。

滑空しながら、オールを見る。


オールは……ホブ・ゴブリンの喉へと剣を突き刺した。


ホブ・ゴブリンの僕を見ていた目が見開かれる。


そのままオールは剣を振って、ホブ・ゴブリンの首を落とした。


オールが満面の笑顔で僕を見上げる。


「お見事!」


僕は親指を立てて応えつつ、平原へと降り立った。


そんな僕の前に、巨躯のゴブリンが立つ。


ホブ・ゴブリン。


まだいたのか。


「貴様! 何者だ!」


「ゲスに答える名なんぞ」


僕は名も知らぬホブ・ゴブリンの割れた腹筋に拳を叩きつけた。


「ない!」


ボン! とホブ・ゴブリンの腹が爆ぜて、中身が向こう側へとばらまかれる。


そのバラまかれた内臓へとゴブリンどもが殺到する。


「見ていられないな」


僕はオール達のところまで引き返した。


歴然たるちからの差を見たからなのか、それとも食事がたんまりとあるからなのか、ゴブリンが僕たちを襲おうという気配はなくなっていた。


「御使い様」


オールを始めとした20匹のコボルトが膝をつく。


「言いたいことはある」


僕の責めるような口調に、オール達が緊張する。


「けど」


と僕は続けて、再び物質生成で剣を19本つくった。


「ここまで来た、その想いを存分に晴らしたらいい」


「よろしいのですか?」


「よろしいも何も、その為に来たんだろ? なら、剣をふるえ。憎いかたきの血を浴びてこい」


「はっ!」


コボルト達が勇んで剣を掴み走って行く。


そんな様子を、残された44匹のコボルトが所在なげに見送る。そして近づく僕に気づくと、ある者は毛を逆立てて警戒して、ある者はブルブルと震えて怯えだした。


「怖がる必要はないよ。僕は、女神からコボルトを助けるためにと寄越された御使いだから」


一定の距離を置いて話しかける。


それにしても酷い有様だった。みんながみんな何処かしらを失っているのだ。

分かっている。

食われたのだろう。


僕はなかでも一番衰弱している、片腕のないオーストラリアン・シェパードに歩み寄った。


可哀想なぐらい震えてしまっている。

恐くない、と口で言っても信じてはくれないだろう。


僕はそっとオーストラリアン・シェパードの頭に手を乗せた。


「ヒール」


オーストラリアン・シェパードが回復する。失っていた腕も、耳も、治っていく。


「わ、わたし…」


可愛らしい声だった。女の子らしい。

Aシェパードちゃんは、失ったはずの腕をさすって確かめている。


と、えぐえぐ泣き出してしまった。


「ありがとう…ございます、ありがとうございます」


「もう大丈夫だから」


Aシェパードちゃんに笑いかけると、抱き着かれてしまった。


全力ヒールだったからか、毛並みもフサフサになっている。

う~ん、役得だ。けど、臭いはある。


僕は改めてコボルト達に目を向けた。


「もう1度言うよ。僕は女神さまから、君たちコボルトを救うように言われて来た御使いだ」


「御使い様…」


腰が抜けたように、コボルト達がヘナヘナと崩折れる。


「おいで」


僕はそのうちの1匹を手招いて、Aシェパードちゃんにしたのと同じように「ヒール」と唱えた。


「腕が! 尻尾も戻ったぞ!」


喜んでいるコボルトに、他のコボルトに肩を貸して僕のそばまで連れてくるように指示する。


そしてヒールを繰り返すこと42回。僕はすべてのコボルトを治療した。

そのあいだに1匹のゴブリンらしき光点が逃げて行ったけど、見逃した。追いかけるような余裕がなかったのだ。逃げるくらいだから、あれはホブ・ゴブリンだろう。


マップで確認する限り、ほとんどのゴブリンはオールたちに片付けられている。

僕が半分にまで減らしていたし、ゴブリンは仲間の死体を貪ることに夢中だったから、それこそ草を刈るようにオール達はバッサバッサとゴブリンの首を刈れたことだろう。


僕はマズーリの許へと歩いた。


ぞろぞろと怪我を治したコボルト達がついてくる。ちなみにAシェパードちゃんは僕と手をつないでいる。


「御使い様!」


歩くうちにも、オール達が合流する。


みんな晴れ晴れした顔をしているけど、集落に帰ったら大変だぞ。ここでは言わないけど。


マズーリを囲っていた結界を解く。


「う」


とコボルト達が目を逸らす。それほどまでにマズーリは食い荒らされていた。


でもまだ…生きている。

目、が僕を見たのが分かった。


「ほんとうに死なないんだな」


僕はマズーリにヒールをかけた。


五体が復活する様子に、コボルト達が感嘆の声をもらす。

腕や尻尾の復活を目撃したコボルトでさえも、だ。

それほどまでに、マズーリの損傷はひどかったし、それが見る間に治るのは奇跡だったのだろう。


五体満足になったマズーリは僕の前でかしこまった。


「マズーリ、あんまり無茶はしてくれるなよ」


「おそれながら、それは聞けませぬ」


「まぁ、そう言うと思ってたよ」


無茶をして100年近くを生きてきたコボルトだ。僕が何を言おうと無駄だろう。


「マズーリ、ここ等でみんながゆっくりできる場所はないかな?」


「なれば、こちらに」


僕等はマズーリにいざなわれて、ゴブリンの血で汚れた場所をはなれた。


その際に「ワーム」で死体を地面に埋めておくのを忘れない。

それをたまたま見てしまったAシェパードちゃんが悲鳴をあげて、助け出したコボルトが魔物がでたと騒いだけれど……ワームの魔法ってつくづく嫌われるなぁ。

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