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33/50

30:鑑定さん頼りにしてます!そんで魔石をコロコロするオッサン

ん? んん~?


僕は眉を寄せた。


融合失敗?

魔力欠乏?


なんだこれ?


融合失敗の項目に注目する。


鑑定さん鑑定さん、詳しく頼みます。


《人造の魔石と人体との融合が失敗してます》


人造の魔石ってなんだ? と注目したけど、これ以上詳しく教えてくれなかった。


それなら、魔力欠乏は?


《肉体に必要とされる魔力マナが甚だしく不足してます》


はぁ? 魔力マナが足りてない?

でもユーリィは一般人だぞ? 魔術師でもないのに魔力マナが必要なのか?


う~ん…。人造の魔石とやらが関係してそうだけど。


ミカは分かるかい?


と訊いてみれば


「そのままじゃん、人の手で魔石をつくろうとしたんでしょ?」


とのこと。


その魔石とかが分からないんだけど…。これ以上は教えてくれそうにない。


こういうとき、僕はシンプルに考えるようにしている。


要するに、だ。魔力が欠乏してるんだから、魔力マナを注げばいいわけだ。


これじゃあ、お医者様が原因を特定できなかったのも道理だ。

なんせ、地球世界には魔力マナなんて概念がないんだから。


「どうですか? 何かわかりました?」


僕が黙っているのが不安だったんだろう、瑞樹さんが訊いてくる。


「どうやら魔力マナが不足しているみたいです」


魔力マナ、ですか?」


「ええ、それをユーリィ君に注ぎ込めば容態も回復すると思うんですが。問題は、どうやって魔力マナを注ぐかということでして」


ラズゥを倒した時みたいに、体内にある魔力マナを活性化させるか? でも、いきなり大量の魔力が体内で暴れたら、衰弱した体がもたない気がする。


穴掘りのグラボ〇ズでだいぶん魔力マナの扱いにはこなれてきたけど、それでもこんなに弱った子供に対して活性化を施せるほどじゃない。


なら、気功みたいに体に触れて、ユーリィ君に魔力マナを注ぐか?


無理…だな。やったことがないし、やれたとしても加減が分からない。いっきに大量の魔力マナを注いで、体をパンクさせ兼ねない。


だったら…どうする?


血を…舐めさせる?


でもなぁ…。僕の血に1滴でもどれくらいのMPが含まれているのか分からないし。むしろ劇薬になるんじゃなかろうか?


つらつら考えていると、瑞樹さんが手を打ち合わせた。


「料理! コウヘイさんの手作りした料理には魔力マナが込められているってミカ様が言ってましたよね」


「それはそうですが…」


僕はユーリィを見た。


「物を食べることができますか?」


咀嚼そしゃくできる状態じゃない。下手したら、喉に詰まって死んでしまうだろう。


「何とかなりませんか」


稲塚が祈るように僕を見る。


助けてあげたいとは思う。

もうちょっと早く、ユーリィが物を食べられるぐらい元気な時に僕を呼んでくれていたら…。


僕は頭に拳骨をトストスと当てて、考えて、部屋の中を見るともなしに見て…。


「これは…いけるか?」


と点滴パックに目を留めた。


薬剤に魔力マナを込められないだろうか? 料理に込められるんだ、薬剤にだって…。


僕は点滴パックに触れた。


料理だと『美味しくなれ』と気持ちを込めた。なら『元気になれ』とでも願をこめるか。


『魔力譲渡レベル1のスキルを獲得しました』


ミカの音声ガイダンスである。


ほんと、この体はやれば何でもできるな…。

我がことながら呆れてしまう。


瑞樹さんも稲塚も黙って僕のしていることを見守っている。


効果は劇的だった。

5分も経たないうちにユーリィの顔色がよくなってきたのだ。


瑞樹さんが直ぐさま、ユーリィの様子を診る。


「熱も下がってますし、脈も呼吸も安定してます」


聞いた稲塚が腰が抜けたみたいに、ストンと腰を落とす。


僕は点滴から手を離した。

これ以上、薬剤の魔力マナは濃くするのはかえって負担になるかも知れないと思ったからだ。


僕は改めてユーリィを鑑定した。



--------------------


イネヅカ ユーリィ 【職業:ガクセイ】

種族:人間

性別:♂

年齢:14


状態:融合失敗

  :衰弱(重度)

   

--------------------



昏睡と魔力欠乏が消えている。

でも融合失敗は残ったままだ。


とりあえず、峠は越えたんだろう。たぶん。


息を吐いていると


「ありがとうございます!」


と稲塚に手を両手でしっかり握られた。


「あなたに…コウヘイさんに助けられたのはこれで2度目。なんとお礼を言ってよいものか」


「稲塚さんにはミカが世話になってますし、僕も小遣いをもらいましたから」


「そんな。ミカ様にはゲーム機をプレゼントしただけですし、コウヘイさんにも10万を渡しただけじゃありませんか」


「ん~、じゃあ貸しということで」


正直、メンド臭いし。


「わかりました。極道者の仁義にかけて、この借りは忘れません」


稲塚が真っ直ぐに僕を見る。


重い…けど、孫を助けたんだから、そうも思うか。


「つきましては、コウヘイさん。孫の容態が安定するまで付いていたくださいませんか?」


稲塚が正座をして頭を下げる。


すると、カラリと障子戸が開いて


「俺等からもお願いします!」


と、組員どもがズラリと廊下に正座をして頭を下げてきた。


疑問形だけど、それって強制ですよね?


「あ~分かりました」


これ以外に返事のしようがないし…。


ミカには報告しとかないとなぁ。






『うん、いいよ。ワタシ、ゲームしてッから』


これがミカの返事だった。


軽い、軽すぎる。まるっきり思春期の子供が口うるさい両親の旅行を喜ぶみたいな反応だ……あながち間違ってないのか?


もっとさ、こう…駄々をこねてくれると思ったんだけど。

そうしたらさ、ミカにかこつけて帰れたのに…。


なんてことを、ライオン・ハートの効果が切れた僕は考えるのです。


僕は稲塚の家にいた。


もう3日になる。


「おはようございます!」


台所に立っている僕に、顔見知りになった若いのが挨拶してくる。


「ッざす」


ごにょごにょと僕は返事をする。


体育会系の彼等からしたら、もっとハッキリ喋れと言いたくもなるだろう。

けど、僕が対人恐怖症だと知っている彼等は挨拶だけをして笑顔で通り過ぎてくれる。


今朝の献立こんだては、雑穀米に豆腐と油揚げの味噌汁。それにカワハギのお刺身だ。


ちなみにカワハギは僕がさばいた。前に組員のひとりに魚のさばき方を教わったら、たいがいの魚をさばけるようになってしまったのだ。


料理スキルさまさまである。


「コウヘイさんの料理、最高ッス!」

「いくらでも食えるもんよ」

「そこらの料理人よりもよっぽどだぜ」


評判は上々だ。


けど、それって全力の料理じゃないんだよね。

まぁ、3割ぐらいか?

全力を込めると、それこそ魔力マナが食材に染みて、カロリーがなくなるらしいし。


しかし、何度も言うけど評判はすこぶる良い。


で、僕はそんな組員からの賛辞を耳にしながら、ユーリィのご飯をつくるのだ。


彼はまだ病人だ。


食事は健康な人と同じというわけにはいかない。


だから、基本はおじやだ。それにリンゴなんかを磨り潰したものを添える。

これには全力で魔力マナを込める。おいしくな~れ、を全力全開だ。


出来上がった料理は、瑞樹さんへ。


ん? 僕がユーリィに食べさせるはずないじゃないか。

そういうのは看護士さんの役目だ。


だから瑞樹さんも僕と同じく家に帰ることなく稲塚の家に泊まり込んでいる。


香には悪いけど、帰ったら豪勢な料理をつくることで手を打ってある。

というか、なんで僕が手を打たせられたんだろう?


「ユーリィ君、ずいぶんと元気になりましたよ? コウヘイさんに会いたがってましたけど」


「そぉいうの…いいです」


感謝とか要らないし。それなら、お願いだから僕に構わないで欲しい。


稲塚はニコニコだ。


ユーリィが目に見えて元気になるのが嬉しいのもあるだろうけど、瑞樹さんと一緒に居られるのも嬉しいのだろう。


まぁ、ちょーと歳の差はあるけどお似合いじゃないか?

56歳と40ん~歳だし。

組員たちも同じようなこと言ってたぞ。


ミカには悪いけど、ハーレム計画は早くも破綻しそうだ。


さて、朝をつくって僕はお役御免である。


何度も言うけど、僕の全力おいしくな~れを込めた料理はカロリーが低くなってしまう。

ガリガリのユーリィにはしっかりと栄養カロリーをとってもらわないといけないのだ。

ということで、僕は朝しか作らない。


暇である。やることがないのだ。

なのに怒られるどころか、感謝されてしまう。

超絶ホワイトな職場だ。


これが普通の人なら、喜び勇んで街にでも繰り出すんだろう。


けど、僕は対人恐怖症。街なんて、言ってみれば地獄だ。

与えられた8畳の部屋で、ジッとしている。


こんなんだったら蛯名家に帰してくれたらいいのに、ユーリィの容態が心配だから1週間だけでも居て欲しいと稲塚に懇願されてしまった。


あと4日……考えるだに気が重くなる。


こうして部屋に籠もっていると、瑞樹さんや稲塚や組員が心配して何かと部屋を訪ねてきたけど、そういう人間だと理解してくれたのか、今日は構ってくるようなことがなかった。


ああ…人気のない牧場が懐かしい。


膝を抱えて1人。


とはいえ何も無為に過ごしてるわけじゃない。


僕は手の平にある魔石をコロコロと転がした。


そう、魔石である。


これについては偶然に知れた。


ミカはゲームに夢中なのか話しかけても応えてくれないしで、仕方なしにアイテムボックスの整理をして暇をつぶしていた時だった。


ラズゥの死骸しがいフォルダを何気なく見ていると《魔石が残ってます》と鑑定さんが注意をしてくれたのだ。


《取り出しますか? YES/NO》


と出たので、YESに注目すると。


コロン、と足もとに石…というよりも宝石が転がっていた。


それは野球ボールぐらいの大きさの、炎を閉じ込めたみたいに真っ赤に輝く石だった。

ルビーじゃない。遥かに魅力的に、文字通り内側から輝いているのだ。


《魔石(大):Aランク:MP10000》と鑑定さんが表示されている。


こうして僕は思わず魔石を手に入れて、しかもコノ魔石を詳しく鑑定することで、魔石について知ることができた。


魔力マナを封じた石。魔物の体内にある命のみなもと


らしい。

なんかゲームみたいな。


「けど、そうなるとどうなんだ?」


ユーリィの体内には人造の魔石とやらがあるはず。

なら、何で魔力が不足してるんだ? 魔石は魔力マナかたまりなんだぞ?


今晩にでも、ユーリィに会ってもう1度鑑定する必要があるかもな。


うん。今じゃない。今はまだ…僕の心の準備が整ってないから駄目だ!


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