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29/50

26:異世界にいられる残り時間は10時間。そんで自重をとっぱらったオッサン

もう書き溜めがないので、とにかく勢いで書いてます。

なので見直しはしてません。

誤字とか、文章としておかしい部分はあると思いますが、許してください。

老コボルトのマズーリ。

彼からもたらされた、ゴブリンに食料にされているという同族。


その事実が重しとなって、コボルトから笑顔が消えた。


「御使い様…」


チッチが許しを求めるみたいに僕を見る。


いいや、チッチだけじゃない。オールも、チャウチャウ姐さんのフジも、シベリアンハスキーのラウンド君も、みんなが僕を見ている。


マズーリを許さず集落から追い出したことを僕に責められると思ってるのか?

マズーリを追って僕が出て行ってしまうと思っているのか?

自分たちだけ安穏と暮らしていることに罪悪感を感じているのか?


どれも、正解だろう。


だから、許しを請うみたいに僕を見ているんだ。


でも、そんな顔しないでも大丈夫だから。

僕は君たちを見捨てたりしないし、罪悪感を感じる必要なんてないんだ。


「みんな、まずは家をつくろう!」


僕は声を励まして言った。


「家ですか?」


「そう、家だよ。テントじゃなくて、しっかりとした建物だ。赤ン坊を産むにしたって、薄いテントじゃ安心できないだろうし、子育てだってそうだろ?」


「確かに御使い様の言う通りですね」


オールが率先して僕の意見に同調してくれる。


ありがたい。オールは他人の機微きびを読み取って、汲み取ってくれるんだよね。


リーダー格のオールがうなずけば、他のみんなも頷いてくれる。


というわけで、僕等は家を建てることにしたのだ。


んだけど…。


『あっあ~、テステス。聴こえてますか、コウヘイ』


いったい何処でこういう茶番をおぼえてくるんだろう?


聴こえてるよ、ミカ。


『ンもう! ノリが悪いなぁ。ソコはさ、聴こえてません、とか返さないと』


今から乗ったほうがいいかな?


『イまさら! っーことで、連絡DEATH。そっちの時間で10時間後にコッチに戻ってきてね』


早くないか? 猶予ゆうよはまだあったはずだろ?


『早くゲーム終わっちゃいそうなんだもーン。それとも何? ワタシよりも毛むくじゃらのが大切だっていうの?』


ピリピリとした殺気が世界を越えて伝わってくる。


これはまずい…。


いやいや、ミカのが大切だよ。


『ほんとぉ?』


ホント、ホント。10時間後か、ミカに会えるのが楽しみだなぁ。


『でッしょ~♪』


一瞬、チョロイなんてことを思ってしまった。


『なら早く死んでもいいのヨ?』


い、いや、楽しみはとっておいたほうが、喜びもおおきくなるから。


『うんうん、その気持ちわかるわかる。RPGでラスボス倒すときもそうだよね? ってことで、ハイ!』


ハイ! とミカが口にしたと同時に、視界の隅に砂時計が出現した。


『その砂が無くなったら、ちょうど10時間だから。遅れたら、許さないゾ♪』


プッツリとミカとの連絡が途絶える。


…どう許さない積もりなんだろう? 考えるだけで怖い。


「御使い様?」


僕がいきなり棒立ちになったから、戸惑っているんだろう。

姐さんのフジが訊いてくる。


「あ~、今、ちょっと女神様から連絡があってね。あと10時間…ん~と、今日で言えば、お天道様がのぼってから今ぐらいになるまでの時間が経ったら、帰らないといけなくなったんだ」


「それでは、家はおあずけですね」


「いやいや、それだけあれば充分さ」


僕は笑った。






僕はコボルトのみんな、総勢52匹を引き連れて、あの丘のふもとまで来た。


「ここに、新しい家を建てようと思う」


みんなが今暮らしている場所は平原に近い。万が一でもゴブリンに見つからないとも限らない。加えて、僕はどうやら丘のてっぺんに生えている木の根元で生まれ変わって来るみたいだった。だから、新しい集落の場所はココにしたんだけど。


僕の宣言に、コボルトの表情はいまいちだ。


「失礼ですが、御使い様。この辺りには、前に倒したラズゥのツガイが縄張りにしている危険が」


あ、そういうことね。


「その危険はもうないよ」


僕の言葉に、コボルト達が顔を見合わせる。


「あ、そこちょっと退いて」


と場所を空けさせてから、僕はアイテムボックスに仕舞っておいたアレを取り出した。


ズズン! と豪快な音を響かせてラズゥ(42)の死骸しがいが現れる。


コボルト達は声もない。


「このあいだ、倒しちゃいました」


かるーく、なるたけ何でもないような口調で言った。


でも、意味はなかった。


「「 御使い様! 」」


「なんて無茶をなさるんですか!」

御身おんみに何かあったらどうするのです!」

「これだから! これだから御使い様はお1人にしておけないのです!」


幼いコボルトを除く50匹に囲まれて、めっためたに怒られてしまった。


みんなして牙をむき出して鼻にしわを寄せて、カンカンに怒っている様子は、ハッキリ言ってラズゥよりも迫力があった。


「ご、ごめん」


僕は平身低頭だ。


「もう2度とおひとりにはさせられませんからね!」


とチャウチャウ姐さんのフジに言われてしまった。


これは承諾せざるを得ない。だって、拒否したら「ガウガウ」てお説教をされるし…。


「まったく、御使い様ったら!」


チッチさんは、まだお冠だ。


僕はそそくさとラズゥの死骸を回収した。


「え、えーみなさん。ちょーと離れててください。木をってしまうんで」


チッチの怒れる視線から逃げるように仕事に精をだすことにする。


「カッター」


唱えて、真空の刃でいっきに10数本の木を伐採ばっさいする。


「おお!」


コボルト達が感嘆の声をあげる。


元は高枝切りバサミの代用だった魔法とは思えないほどの能力だ。


次いで「ワーム」で切り株を地面から押し上げて引っこ抜く。


「わぁああ!」


パチパチと2匹の幼い兄妹が拍手してくれる。


僕はニコニコと兄妹に手を振り返しながら言った。


「じゃあ、みんなで木と切り株をひとつ所に集めようか」


「御使い様、これを建築資材にするのですか?」


木を運びながらオールが訊いてくる。


ここの木はあまり大きくない。人の手が入ってないから木と木のあいだが密で、日差しも入り難いからだろう。コボルトでも3人もいれば1本の木を余裕ではこべる。


「いいや、これは斧で割ってまきにでもしたらいいよ」


僕も身体能力向上を使って伐採した木を運びながら答える。


それからカッター・ワームの魔法を繰り返すこと5回ほどで充分な広さをこしらえることができた。


でも地面はデコボコだ。


だから全体に「ワーム」を生じさせて、平坦になるようにならす。


ボコボコと気泡がたつように、幾百幾千のワームが伸びあがる。


OH! 気持ち悪い!


生理的に無理というやつだ。


それはコボルト達も同じようで、特に女性陣は肩を抱いて眉をひそめている。

人間だったら鳥肌が立ってるだろう。


けれど、これで地面は均等にならされた。


お次は地面を固くしめないといけない。


「えーと…だいだらぼっち」


イメージは巨人の足の裏が降ってくる感じだ。重力なんてあやふやなものはイメージできなかった。


ズズン! という音がして更地が軽く陥没した。


よくよく遠目で観察したら人の足の裏のカタチなのはご愛敬ということで…。


さて、準備は整った。


「さーて、やるか!」


僕は決めたのだ。


今の僕にできる最大限のことをコボルトにしてあげる、と。


お婆巫女のベルダに頼まれたとき。それでも躊躇ちゅうちょがあった。

手を貸す、ことにじゃない。


最大限に手を貸すことに、だ。


だってそうだろう? 食料を渡すことぐらいなら問題ない。けれど、それ以上のこと……地球の技術で家を建てるようなことはオーパーツをもたらすようなものなのだから。


けれども、そんな自重は老コボルトマズーリの言葉で消し飛んだ。


ゴブリンの食料にされている、絶滅寸前のコボルト。


彼等を助けるためなら、僕はもう、己のチカラをふるうのにタガをめたりはしない。


だから、僕はやる。


アイテムボックスから、家、を取り出した。


プレハブとかユニットハウスとか言われるものだ。

大きさは8坪タイプで、2階建て。元々は、寮を建てる時に建築業者の人が町まで帰るのが億劫だろうということで組み上げた物らしい。だから、1階部分にはキッチンもお風呂もトイレも完備されている。

まぁ、水道も下水道もガスすらないから使えないんだけど…。


正真正銘の『家』だ。


デデン! と据え置かれた見たこともないだろう『家』にコボルト達はラズゥの死骸を見た時よりも驚いているようだった。


シベリアンハスキーのラウンド君なんて、驚きすぎて姐さんのフジに抱き着いてるし。

ちなみにラウンド君とフジ姐さんはツガイである。


うん、まぁ、どうしてこんなバカデカイものをアイテムボックスに収納していたんだという疑問は当然だろう。


けど、その通りで、バカデカイからこそ収納したというか…。


僕が何時も通りに蛯名家の粗大ごみを収集していると


「それって、どれくらい大きいものが入るの?」


と香から質問があったのだ。


それで物は試しとやってみたら、入ってしまったというか…。


あれには香も驚いていたけれど、当の僕も驚いたものだった。

というか、感覚として分かったのだけど、まだまだ大きいものが入りそうなんだよ。ほんと、まだまだいける。腹八分目なんて言葉があるけど、1分目にも達してない。


このユニットハウスをコピーした物を、あと4つほどデデデン! と出す。


コボルトは総勢で52匹。

1階と2階に住み分けたとしても充分な収容力を確保したと考えられるだろう。


「さぁ! 今からこれが君たちの住まいだ!」


両手を広げて宣言したんだけども……コボルト達の反応はかんばしくない。


あら~?


「気にいらないかな?」


「と、とんでもございません! こんな御殿ごてんのようなところに、わたくし達のような者が住んでもよろしいのですか?」


「もちろんだよ、そのために出したんだしね」


僕は恐縮するコボルトを引き連れて案内することにした。


まずは1階。


さっきも言ったようにキッチン・バス・トイレがあるからちょっとばかり手狭だ。

それでも小柄なコボルトにしてみれば伸びやかな空間だろう。


なかは温かいんですね」


みんなが感心している。


北海道仕様のユニットハウスというだけあって、断熱はしっかりとされているのだ。しかも寮を建てたのはバブル景気の真っただ中とあって、断熱資材は盛りに盛ってある。


正直、こんな素晴らしい建物を物置き代わりに使っていたのが勿体ないほどだ。

っといっても、古いものは古いので、売ろうにも売れなかったみたいだけれど。移築費用もかかるしね。


「すごい! これ透明だよ! お外が見えるよ!」


2重になった窓ガラスを見て興奮しているコボルトもいれば


「なんて美しい刃物だ!」


キッチンにおきっぱなしになっていた包丁を手に興味津々のコボルトもいる。


1階部分は建築業者の人の食堂代わりになっていたようで、折り畳み式の長テーブルや椅子があったけど、それにもコボルトは恐る恐る触っている。


テーブルや椅子は人間用だから、ちょっとコボルトにはサイズが合わないけど。

使えないことはないだろう。


それから2階へと向かう。


畳が敷かれているし、本当は靴を脱がないとなんだけど、コボルト達はそもそも裸足はだしだ。

仕方なしに、僕も靴を履いたまま2階部分を案内した。


2階には、まだ結構物がある。


隅には畳まれた布団が積まれているし、智花と香が幼い頃は秘密基地にして遊び場にしていたとかで、衣装ケースのボックスにはオモチャが放り込まれている。


コボルトというのは好奇心が旺盛みたいだ。


さっそく衣類ケースを開いて、なかのオモチャを手に取っている。


背が小さいからというのもあるけど、なんか微笑ましい。


それから僕はオモチャに夢中なみんなを置いて外に出た。


と思ったんだけど、しっかりとチッチとオールが付いて来ていた。


僕を1人にさせないという宣言は本気だったみたいだ…。


「そんなガン見しなくても…」


「ガン見というのは良くわかりませんが、御使い様は放っておくととんでもないことをやらかしますから」


否定できないのがツライ。


「えーと…これから井戸を掘ろうと思うんだ」


「井戸ですか?」


「うん、水場が近くにあったほうがいいでしょ?」


前の集落から近場の小川までは歩いて片道10ほどかかっていた。

往復で20分。けっこうな距離だ。


だからといって、水場の近くに集落は築けない。

小川なんかの近くには強い獣やモンスターがでるらしい。


以前のコボルトは弱かったからね。


で。ここを新しい住処すみかとすると、小川までさらに遠くなってしまう。


むしろ、300メートルほど離れたところにほどほど大きな川がある。そっちのほうが近い。


けれど毎日、川まで水を汲みに行くなんて億劫だろうから。


「ココに井戸があれば、みんなも楽でしょ?」


ということで、僕はとりあえず穴を掘ることにした。


「ボーリング」


スポーツの方じゃないぞ。イメージは、掘削機械のボーリングだ。


踏み固められた地面にこぶし大の穴がいて、掘り出された土や石が吹きあがる。


「わわわわ!」


僕とチッチとオールは慌てて避難した。


予想外だった。


音が聴こえたのだろう、2階からコボルト達がおりてくる。


「今度は何をしておられるんだ?」

「なんでも井戸を掘ってくださっているそうよ」


みんなして注目すること5分ほど。


ピュー、と水が噴きあがった。


「ん?」


水?

それにしては…?


僕はそろそろと噴きあがる水柱に手を触れて


「温泉だぁ!」


思わず叫んでしまった。

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