第二楽章~あふれる思い~
ライムに続き、トールも部活に加わった。
部活を再開して一週間。まだ音出しや基礎練習を中心に、簡単な練習曲を合わせる程度だった。
「みんな、注目。トールさんも加わったことだし、そろそろ何か曲でも練習してみましょうか?」
「はーい! 私、『宝島』やりたいです!」
アイシャの声を皮切りに、それぞれがやりたい曲を口々に挙げ始めた。
その中で、何人かの声が重なる。
「宝島!」
「それじゃあ、『宝島』をやってみましょうか。三十分後に合わせます」
若菜の言葉を合図に、それぞれが部室棟の各部屋へと散っていった。
視聴覚室に残った何人かの中には、小春とトールの姿もあった。
「トールさん、楽譜わかりますか?」
「うーん……似たような感じだな。小春、ちょっと吹いてみてくれ」
「はい」
小春は楽譜を追いながら、ゆっくりと自分のパートを吹いていく。
ひとまず、二人で同じパートを演奏することになった。
「なるほどな。だいたい読み方はわかったよ。どれ、俺もやってみるかな」
そう言ってトールは、少し大きめの自作ホルンを構えた。
そして――たっぷりと息を吹き込む。
轟くような音が、視聴覚室いっぱいに広がった。
少し離れたところにいた大地と夏樹が、思わずトールのもとへ駆け寄る。
「親方! とんでもない音圧ですね!」
「すごい……でも、すごくいい響きですね」
「わりぃ、わりぃ。ちょっと力が入っちまったよ」
三十分後。
全員が再び視聴覚室へ集まった。
「それじゃあ、始めましょう。奏、指揮を頼める?」
「はい。じゃあ、いきます」
奏が腕を上げる。
軽快なパーカッションのリズムが走り出した。
それに一人、また一人と音が重なっていく。
ソロではアルトサックスがすっと立ち上がった。
旋律が重なると、誰からともなく身体が揺れ始める。
金管が一斉に立ち上がり、高らかに音を響かせた。
ライムのフルートが、その上を風のように駆け抜ける。
そして、その中には――
少し大きすぎるホルンを抱え、誰より楽しそうに吹くトールの姿もあった。
演奏が終わった瞬間、アイシャが声を上げた。
「もーいっかい!」
「はいはい。じゃあ、もう一回ね」
奏が笑いながら腕を上げる。
再び、軽快なパーカッションのリズムが走り出した。
二度目の演奏を終え、休憩に入る。
久しぶりの合奏に、皆はそれぞれ感想を言い合っていた。
「小春、次は俺も別の楽譜をやるよ」
「はい。じゃあ、トールさんが1stで」
「いやいや、小春がメインをやるんだろ?」
「そんな、トールさん……私、コンクールメンバーじゃないので」
「メンバー? よくわからねぇが、このパートは小春がリーダーだろ?」
「……わかりました。トールさん、よろしくお願いします」
「おう。よろしくな、リーダー」
「リーダーはやめてくださいよ」
「はははは! よろしくな、小春!」
「はいっ!」




