↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】異世界ウインドオーケストラ ― あの日見た空の向こうは ―  作者: 若菜みかん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/36

第二楽章〜重なっていく息〜

部活の再開に向けて、若菜と大地は皆を視聴覚室に集めた。


「久しぶりのミーティングを始めます」


近況報告を交えながら、それぞれの状況を確認していく。


「みんな、元気そうね」


その言葉に続くように、奏が口を開いた。


「私、部活がやりたいです」


少しざわついていた視聴覚室に、明るい声が響く。


「みんな、やろうよ! せっかく楽器もあるしねっ?」


ざわめきは、やがて笑い声へと変わり、視聴覚室は温かな空気に包まれた。


「僕も一緒に入っていいかな?」


ライムの言葉に被せるように、フルートのパートリーダーが声を上げた。


「ライムちゃんと演奏できるなら!!」


「返事が早いのよ」


若菜の呆れた声に、また小さな笑いが起きた。


こうしてライムも部活に参加することになり、異世界での部活動は、いつしか皆の日課になっていった。


ある日の練習中。


「ライムちゃんの音って、よく響くよね。何かコツとかあるの?」


「んー……風魔法の加減かな」


「風魔法? あー、それで楽器庫で風が吹いたのね」


「俺たちが初めて聞いたときも、結構遠くから聞こえてたしな」


「そうだね。もともと儀式で使う曲だから、遠くの神様まで届くように吹いてる」


「夏樹先輩、明日、おやかたに楽器を見せたいんですけど……」


「ああ、手伝うよ。何を持っていくんだ?」


「小春のホルンと、私のクラリネット。それと、先輩のユーフォをお願いしてもいいですか?」


「わかったよ」



翌日。


「おやかたー、楽器持ってきたよー」


「どれどれ……こいつはすげえな」


トールは受け取った楽器を、何度も角度を変えながら眺めた。


「薄くて軽いのに、ずいぶん丈夫そうだな。鉄か?」


「これは真鍮。銅と亜鉛を混ぜた金属です」


「ほう……なるほどな」


トールは管を指で軽く叩き、今度はバルブへ目を移した。


「よく響く金属だ。それに軽くて扱いやすい。ここで息の流れを変えるんだな?」


しばらく楽器を眺めていたトールは、突然顔を上げた。


「ありがとな。だいたい分かった」


それだけ言い残すと、楽器を返し、工房の奥へ消えていった。




数日後。


いつものように部活をしていると、部室棟の外から大きな声が響いた。


「おー、ここがあいつらの城か。確かに神殿みてぇだな」


「でしょ。僕も初めて見たときは驚いたよ」


ライムと並んで歩いてきたのは、トールだった。


「おう、みんないるかー?」


「親方? どうしたんですか、こんなところまで」


「大地。俺も【ぶかつ】に入れてもらいたくてな」


そう言うと、トールは背負っていた大きな楽器を持ち上げた。


「楽器も作ってきたぞ」


形は確かにホルンだった。


ところどころ形は違っているものの、それ以上に目を引いたのは、その大きさだった。


「お、大きいですね……」


「おう、小春か。よろしくな!」


「はい。トールさん、よろしくお願いします。それにしても、こんなに早く楽器を作れるなんて……」


「親方。ちょっと、そのホルン見せてもらっていいですか?」


「いいぞ」


大地が差し出されたホルンを受け取った。


その瞬間。


「うわっ!?」


予想外の重さに、大地の身体が大きく傾いた。


とっさにトールが横から楽器を支える。


「な、なんですか!? この重さは!」


「この方がよく響くと思ってな。俺用に調整したんだよ」


大地はしばらくホルンとトールを交互に見て、


「……ははは。さすが親方」


と笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。