第二楽章〜重なっていく息〜
部活の再開に向けて、若菜と大地は皆を視聴覚室に集めた。
「久しぶりのミーティングを始めます」
近況報告を交えながら、それぞれの状況を確認していく。
「みんな、元気そうね」
その言葉に続くように、奏が口を開いた。
「私、部活がやりたいです」
少しざわついていた視聴覚室に、明るい声が響く。
「みんな、やろうよ! せっかく楽器もあるしねっ?」
ざわめきは、やがて笑い声へと変わり、視聴覚室は温かな空気に包まれた。
「僕も一緒に入っていいかな?」
ライムの言葉に被せるように、フルートのパートリーダーが声を上げた。
「ライムちゃんと演奏できるなら!!」
「返事が早いのよ」
若菜の呆れた声に、また小さな笑いが起きた。
こうしてライムも部活に参加することになり、異世界での部活動は、いつしか皆の日課になっていった。
ある日の練習中。
「ライムちゃんの音って、よく響くよね。何かコツとかあるの?」
「んー……風魔法の加減かな」
「風魔法? あー、それで楽器庫で風が吹いたのね」
「俺たちが初めて聞いたときも、結構遠くから聞こえてたしな」
「そうだね。もともと儀式で使う曲だから、遠くの神様まで届くように吹いてる」
「夏樹先輩、明日、おやかたに楽器を見せたいんですけど……」
「ああ、手伝うよ。何を持っていくんだ?」
「小春のホルンと、私のクラリネット。それと、先輩のユーフォをお願いしてもいいですか?」
「わかったよ」
翌日。
「おやかたー、楽器持ってきたよー」
「どれどれ……こいつはすげえな」
トールは受け取った楽器を、何度も角度を変えながら眺めた。
「薄くて軽いのに、ずいぶん丈夫そうだな。鉄か?」
「これは真鍮。銅と亜鉛を混ぜた金属です」
「ほう……なるほどな」
トールは管を指で軽く叩き、今度はバルブへ目を移した。
「よく響く金属だ。それに軽くて扱いやすい。ここで息の流れを変えるんだな?」
しばらく楽器を眺めていたトールは、突然顔を上げた。
「ありがとな。だいたい分かった」
それだけ言い残すと、楽器を返し、工房の奥へ消えていった。
数日後。
いつものように部活をしていると、部室棟の外から大きな声が響いた。
「おー、ここがあいつらの城か。確かに神殿みてぇだな」
「でしょ。僕も初めて見たときは驚いたよ」
ライムと並んで歩いてきたのは、トールだった。
「おう、みんないるかー?」
「親方? どうしたんですか、こんなところまで」
「大地。俺も【ぶかつ】に入れてもらいたくてな」
そう言うと、トールは背負っていた大きな楽器を持ち上げた。
「楽器も作ってきたぞ」
形は確かにホルンだった。
ところどころ形は違っているものの、それ以上に目を引いたのは、その大きさだった。
「お、大きいですね……」
「おう、小春か。よろしくな!」
「はい。トールさん、よろしくお願いします。それにしても、こんなに早く楽器を作れるなんて……」
「親方。ちょっと、そのホルン見せてもらっていいですか?」
「いいぞ」
大地が差し出されたホルンを受け取った。
その瞬間。
「うわっ!?」
予想外の重さに、大地の身体が大きく傾いた。
とっさにトールが横から楽器を支える。
「な、なんですか!? この重さは!」
「この方がよく響くと思ってな。俺用に調整したんだよ」
大地はしばらくホルンとトールを交互に見て、
「……ははは。さすが親方」
と笑った。




