第二楽章 閑話 ~マジック~
仕事の帰り道、子供たちと話しているアイシャを見かけた。
「なるほどなるほど。ありがとうね」
「おーい、アイシャ」
声をかけると、アイシャがびくっと肩を揺らした。
「夏樹先輩……」
「何やってるんだ?」
「な、何もしてませんよ。子供たちに道を教えてもらってたんです」
「ふーん。どこの?」
「洋服屋さんです」
「ああ、まだ行ったことなかったのか」
「はい。先輩も仕事終わりなんですね。さあ、帰りましょう!」
妙に勢いよく、アイシャは俺の背中を押した。
――一週間後。
「先輩、先輩!」
「なんだよ、朝から」
「ちょっと見てください。いきますよー」
アイシャは目を閉じ、片手をかざした。
眉間にしわを寄せて、じっと集中する。
しばらくすると――指先に、小さな光が灯った。
「どうですか! 一週間! 一週間も練習したんですよ!」
「へえ、すごいな」
「夏樹先輩! もっと驚いてくださいよ!」
「どうしたの?」
そこへ奏がやってきた。
「奏先輩! 見てくださいよ!」
アイシャはもう一度、手をかざした。
さっきよりも小さな光が、指先に集まっていく。
「はぁ、はぁ……どうですか!」
「すごいわね。どうやるのかしら?」
「えっとですね――」
アイシャは得意げに説明を始めた。
なんでも、体の中にある力を、指先へぎゅっと集めるようなイメージらしい。
「へえ……よし」
奏も同じように手をかざした。
目を閉じ、集中する。
しばらくすると、指先に淡い光が集まり始めた。
「はぁ、はぁ……私にもできたわ!」
「えーっ! 私、あんなに頑張ったのに! 奏先輩、一瞬だった……」
言い終わる前に、アイシャはその場にぺたんと座り込んだ。
「アイシャちゃん、大丈夫?」
そう言った奏も、その隣にぺたんと座り込んだ。
その後、光の魔法が瞬く間に部内で流行したのは言うまでもない。
どうやら俺たちではうまく力を制御できないらしく、ほんの小さな光を出すだけでも、
ひどく疲れるようだった。
それでも面白がって、あちこちで光を灯し始めた結果――
「魔法禁止!」
若菜の部長命令により、みんなの指先に光が灯ることはなくなった。




