エンディング~鍋を囲んで~
練習が終わった夕方。
ライムに呼ばれ、若菜と夏樹は一緒に屋上へ向かった。
「はぁ……もう、だいぶ寒くなったわね」
「どうしたんだ、ライム」
「これ」
ライムは、手のひらに収まるほどの貝殻のようなものを、二人にそれぞれ差し出した。
若菜と夏樹は顔を見合わせ、それを受け取る。
「これは?」
若菜が尋ねた、そのとき。
冷たい風が、屋上を吹き抜けた。
――次の瞬間、曲が流れた。
「魔道具?」
「そう。僕の儀式の曲。この間のメロディーが入ってる」
「ありがとう」
若菜は、少しうつむきながら言った。
「ライム、ありがとう」
「うん。儀式、成功するといいね」
「そうね。きっと成功するわ」
若菜は、すっかり日が落ちた空を見上げながら、静かにつぶやいた。
別の日、トールの工房では――
「こうして、アイシャのタンポを取り換えるのも最後かもな」
「おやかた……」
「おっと、すまんな。まだ儀式がどうなるか分からんからな」
「そうですよ。それに、まだ合奏が残ってるじゃないですか」
「ああ、そうだな。思いっきり楽しませてもらうよ。な、小春」
「はい。たくさん見せ場がありますから」
「親方、終わりました」
大地が作業を終え、トールに声をかけた。
「おう、大地。最後まですまんな。つい頼ってしまうな」
「そんな。なんでもやりますから、俺」
「ははっ、頼もしいな」
また別の日、三日月亭では――
「さあ、今日は若菜ちゃんと奏ちゃんに教えてもらった鍋を作ってみたよ」
おかみさんが蓋を開けると、ぐつぐつという音とともに湯気が立ち上った。
「わー、おいしそう! いただきまーす」
「あちちっ!」
アイシャのコミカルな動きに、自然と笑いが起こった。
今日は久しぶりに、みんなで三日月亭の夕食を囲んでいた。
そこには、ライムやトール、ミラーの姿もあった。
「なんだか、メニューが増えたね」
ライムの言葉に、奏が答える。
「そうだね。お鍋に焼きそば、卵焼き。それに、かつ丼なんかも作ったね」
「奏って、こう見えても食いしん坊なのよ」
「若菜、ほかに言い方ないの? グルメとか」
小さな笑いが起こったところで、ミラーが口を開いた。
「そういえば、儀式の方は順調に準備が進んでいるそうよ」
その言葉に、みんなの背筋が少しだけ伸びた。
「どんな感じなんですか?」
「ええ。魔法陣など、儀式の大事な部分について書かれた書物が見つかってね。だいたいの準備には、めどが立ったそうよ」
「そうですか。よかったわ」
ミラーの答えに、若菜は胸をなで下ろした。
「さあ、冷めないうちに食べましょうよ!」
「そうね。いただきましょう」




