第四楽章~儀式~
ルタ村へ帰ったあと、夏樹たちは、またいつもの日常へと戻っていった。
「ありがとうございました」
いつものように店番をする、アイシャと小春。
「親方、この鎌、少し見てくれませんか?」
「どれどれ……おお、よくなってきたな。これなら店に出せるぞ」
トールに仕事を教わる大地。
夏樹たちは、果樹園で収穫を手伝っていた。
「あら、ライム。今日は一人?」
「うん。お昼ご飯を食べに来たんだ」
「若菜ちゃん、奏ちゃん。ライムちゃんの分も用意してあげるから、一緒に休憩に行っておいで」
「はい、ありがとうございます」
三日月亭では、若菜と奏がいつものように働いていた。
そんな日々が、しばらく続いた。
ある日、練習を始める前に、ミラーが話があると切り出した。
「実はね、儀式の詳細が分かったらしいの」
部員たちの間に、小さなざわめきが起こった。
ミラーは一度みんなを見渡してから、静かに続ける。
「結論から言うわね。元の世界に帰れるかもしれないとのことよ。もちろん、確実ではないけれど」
誰も、声を上げなかった。
先日の謁見以来、どこかで期待していたはずだった。
それでも、いざ具体的な話を前にすると、誰も自分の気持ちをどう表せばいいのか分からなかった。
「一か月ほどで、儀式の準備ができるそうよ」
しばらくの沈黙のあと、若菜がすっと立ち上がった。
「ミラー先生、ありがとうございます」
そして、ゆっくりと頭を下げる。
「私たちには、帰る場所があります」
誰も口を挟まなかった。
「ここでの出来事を、忘れることはありません。確実に帰れるかは分からないとのことですが……儀式の準備をお願いします」
その言葉をきっかけに、それまで堰き止められていたものが溢れ出すように、部員たちがざわざわと話し始めた。
その中で、
「……とりあえず、何か練習しませんか?」
アイシャが、か細い声でつぶやいた。
「そうね」
ミラーが小さく頷く。
「若菜さん。準備のことは、私から国王様に伝えておきますね」
「はい。よろしくお願いします」
若菜は、もう一度頭を下げた。




