第三楽章~目指す先には~
王国音楽祭へ向けての練習が始まった。
出場するという噂は、いつの間にか村中へ広まっていた。
「若菜ちゃん、奏ちゃん。音楽祭に出るんだって?」
三日月亭で、おかみさんが嬉しそうに声をかけてきた。
「はい。そうなんです」
若菜が答えると、おかみさんは大きく頷いた。
「村長なんて、村中で見に行こうって張り切ってるわよ」
「ありがとうございます。頑張ります」
隣で奏も小さく頭を下げた。
別の日には、トールも村人に呼び止められていた。
「聞いたよ、トール。音楽祭に出るんだって?」
「ああ。この子たちと一緒にな」
トールが隣にいた小春たちへ目を向ける。
「そうか。また、あんたたちの演奏が聴けるんだな。必ず行くよ」
「ありがとうございます」
小春が少し照れたように笑った。
村の期待を受けるように、練習にも少しずつ熱が入っていった。
「はい、もう一度、木管だけでいってみましょう。少しゆっくりやるわね」
「あ、ごめんなさい」
演奏を止め、アイシャが声を上げた。
「大丈夫よ。もう一回やりましょう」
「はいっ」
ミラーは優しく微笑むと、もう一度指揮棒を構えた。
ミラーが来られない日は、個人練習やアンサンブルの練習に時間を使った。
大地、アイシャ、小春、トールの四人は、『カノン』を自分たちなりにアレンジして演奏することになった。
同じ旋律が少しずつずれながら重なっていく。
四人は何度も合わせながら、その音の重なりを確かめていった。
一方、ライム、夏樹、若菜の三人は、以前ライムが儀式で奏でた曲をもとに、新しい曲を作っていた。
あのとき即興で重ねた音を一つずつ思い出しながら、旋律を形にしていく。
「風の音……」
夏樹がつぶやいた。
「フルートね」
若菜がライムを見る。
「でも、それだけじゃ少しシンプルかな……」
ライムは二人を見ながら、しばらく考えていた。
「夏樹と若菜の音って、空みたいだね」
「空……か」
若菜が小さくつぶやく。
「風の音、空の詩……っていうのはどうかしら」
「うん。すごくきれいだね」
ライムが、わずかに微笑んだ。




