第三楽章〜選曲会議〜
「雲のコラージュ……」
夏樹が、そっとつぶやいた。
「去年の自由曲ですよね。私、大好きです」
夏樹のつぶやきを、アイシャが拾った。
音楽祭では、パレード、アンサンブル、大規模な演奏と、日によって演目が分かれていた。
パレードは、『プスタ』。
アンサンブルには、小春、トール、アイシャ、大地の組と、ライム、夏樹、若菜の組――二組が出ることとなった。
だが、メインの曲決めは難航していた。
「珍しいわね。日向くんがやりたい曲をあげるなんて」
若菜の言葉に、大地も頷く。
話し合いの末、最終的に『雲のコラージュ』に決まった。
「どうして、日向くんはもう一度『雲のコラージュ』をやりたいの?」
「俺、一年の時にソロをやらせてもらったじゃないですか。コンクールの講評に、ユーフォのソロが淡白だったって書かれて」
奏の問いに夏樹は少しだけ間を置いて、続けた。
「でも、この世界なら、何かを表現できる気がするんですよね」
「夏樹先輩のユーフォ、好きですよ。真っ直ぐで」
「お、夏樹。照れてるのか?」
「大地さん、勘弁してください。アイシャ、お前も冗談が過ぎるぞ」
「えー、本当ですよ」
そう言って、アイシャはいたずらっぽく笑った。
選曲会議を終え、曲が決まったことをミラーに伝えた。
早速、二曲を合わせてみることになった。
一通り演奏を聴いたミラーは、満足そうに頷いた。
「どちらも素敵な曲ね。『プスタ』は厳かさもあって、パレードの雰囲気にぴったり」
そして、『雲のコラージュ』の楽譜へ視線を落とす。
「こっちは……繊細で、荒々しくて、儚くて。いろんな感情が伝わってくる曲ね」
「風、雲、嵐……」
ライムがつぶやいた。
「風……か」
夏樹がつぶやいた。
少しの沈黙のあと、ミラーが口を開いた。
「もう一度やってみましょうか」
夏樹は頷き、ユーフォニアムを構え直した。
練習を終えて片づけをしている夏樹に大地が声をかけた。
「俺も一年の時にな、コンクールで思い出したくないことが
あったんだよ」
「大地さんが?」
「ああ、大事なところで入れなかったんだよ。シンバルがやけに重くてな」
「いつか俺にもリベンジさせてくれよな」
そう言って、大地は片付けに戻っていった。




