第三楽章〜祭りの余韻~
演奏が終わり、広場では奉納の儀が執り行われた。
この一年の恵みを神へ感謝し、捧げるための儀式だった。
籠いっぱいに果物が詰められ、この日のために設けられた祭壇へと運ばれていく。
「あの籠ね、私たちが作ったんですよ。ね、小春先輩」
「小春が、の間違いだろ」
「大地先輩、ひどーい!」
「アイシャも小春も頑張ってるさ」
「お、おやかたー!」
アイシャの大げさなリアクションに、どこか緊張の残っていたみんなの顔にも、自然と笑みが広がった。
やがて奉納の儀も終わり、村の者たちが持ち寄った料理が、広場に並べられたテーブルを埋め尽くしていった。
「今年は、お前たちのおかげで祭りがずいぶん賑やかになったな」
「村長さん、演奏の機会をいただき、ありがとうございました」
若菜が頭を下げると、村長は笑いながら首を振った。
「いやいや、礼を言うのはこちらのほうじゃよ。あんな見事な演奏は、王都にでも行かんと聴けんからな」
「王都にも楽団があるんですか?」
奏が興味深そうに尋ねた。
「ああ。王国音楽団がある」
「へえ……いつか王都にも行ってみたいですね」
「さあさあ、今日の主役たち。たくさん食べて、楽しんでいってくれ」
それからしばらくして。
広場から少し離れたところから、オーボエの音が聞こえてきた。
アイシャと大地がその音に気づき、足を向ける。
流れていたのは、今日、何度か繰り返されたあのフレーズだった。
少し離れた場所で、奏がひとりオーボエを吹いている。
二人はしばらく、その場で足を止めた。
「……声、かけそびれたな」
「そうですね。でも、一番いい場所で聴けましたね」
「そうだな」
奏の独奏は、しばらく続いた。
広場で料理を囲む者。
屋台を片付ける者。
少し離れた場所で、祭りの余韻に浸る者。
それぞれの場所で、人々はふと手を止めた。
今日、何度も耳にしたあの旋律が、
静かに村を流れていた。




