↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】異世界ウインドオーケストラ ― あの日見た空の向こうは ―  作者: 若菜みかん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/36

第三楽章〜祭りの余韻~

演奏が終わり、広場では奉納の儀が執り行われた。


この一年の恵みを神へ感謝し、捧げるための儀式だった。


籠いっぱいに果物が詰められ、この日のために設けられた祭壇へと運ばれていく。


「あの籠ね、私たちが作ったんですよ。ね、小春先輩」


「小春が、の間違いだろ」


「大地先輩、ひどーい!」


「アイシャも小春も頑張ってるさ」


「お、おやかたー!」


アイシャの大げさなリアクションに、どこか緊張の残っていたみんなの顔にも、自然と笑みが広がった。


やがて奉納の儀も終わり、村の者たちが持ち寄った料理が、広場に並べられたテーブルを埋め尽くしていった。


「今年は、お前たちのおかげで祭りがずいぶん賑やかになったな」


「村長さん、演奏の機会をいただき、ありがとうございました」


若菜が頭を下げると、村長は笑いながら首を振った。


「いやいや、礼を言うのはこちらのほうじゃよ。あんな見事な演奏は、王都にでも行かんと聴けんからな」


「王都にも楽団があるんですか?」


奏が興味深そうに尋ねた。


「ああ。王国音楽団がある」


「へえ……いつか王都にも行ってみたいですね」


「さあさあ、今日の主役たち。たくさん食べて、楽しんでいってくれ」


それからしばらくして。


広場から少し離れたところから、オーボエの音が聞こえてきた。


アイシャと大地がその音に気づき、足を向ける。


流れていたのは、今日、何度か繰り返されたあのフレーズだった。


少し離れた場所で、奏がひとりオーボエを吹いている。


二人はしばらく、その場で足を止めた。


「……声、かけそびれたな」


「そうですね。でも、一番いい場所で聴けましたね」


「そうだな」


奏の独奏は、しばらく続いた。


広場で料理を囲む者。


屋台を片付ける者。


少し離れた場所で、祭りの余韻に浸る者。


それぞれの場所で、人々はふと手を止めた。


今日、何度も耳にしたあの旋律が、


静かに村を流れていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。