第三楽章〜宝島と踊り〜
「これからお届けする曲は、『宝島』です。
遠い場所へ旅立つような、夢と冒険にあふれた曲です。
私たちも今、故郷から遠く離れたこの世界で、知らない土地を歩き、知らない人たちと出会いながら、冒険の真っ最中です。
不安なこともありました。
それでも、ルタ村のみなさんに助けてもらい、私たちはここまで来ることができました。
そして、この曲からも、たくさんの元気と希望をもらいました。
今日は、その気持ちをみなさんにも届けたいと思います。
それでは聴いてください。
『宝島』」
若菜がマイク代わりの魔法具を下ろし、自分の位置へ戻る。
一瞬だけ、広場が静かになった。
大地がスティックを構える。
部員たちの視線が、自然と集まった。
「ワン、ツー――」
乾いたカウントが、祭りの広場に響く。
次の瞬間。
底抜けに明るい音が、異世界の夜へ飛び出した。
演奏が終わると、奏が指揮棒を下ろすよりも早く、大歓声がみんなを包みこんだ。
奏は少し間を置き、ソリストたちを紹介する。
そのたびに、観客から大きな歓声が上がった。
やがて広場が静かになると、奏が再び腕を上げた。
小春とトールに促されるように、ライムとパートリーダーのフルートがメロディーを奏でる。
そこへアイシャも加わった。
掛け合いが終わった瞬間、今度は夏樹のユーフォニアムがその旋律を受け取った。
先ほどまでとは打って変わり、幻想的な音色が広場を包んでいった。
やがて、大地のティンパニーが規則的なリズムを刻み始める。
アレグロ・ヴィーヴォ。
アイシャは大きく息を吸い込み、一気に音を走らせた。
躍動する木管楽器。
やがて力強い金管楽器のユニゾンが重なり、その合間を縫うように、小春の澄んだホルンソロが広場に響き渡った。
時に幻想的に。
時に力強く。
めくるめく変わっていく音の情景を、観客たちはただ見守っていた。
曲はフィナーレへ向けて加速していく。
それまで現れてきた主題が次々と折り重なり、やがてひとつの大きな響きとなって、
村中へ広がった。
最後の音が消えた。
奏も、部員たちも、すぐには動けなかった。
その静寂を破るように、一つの拍手が響いた。
また一つ。
そして瞬く間に広場を埋め尽くし、大きな歓声へと変わっていった。




