間奏曲~intermezzo~
「はい、今日はここまでにしましょうか」
奏が額の汗をぬぐいながら、指揮台から降りた。
代わるように、若菜が前に出る。
「はい、みんなお疲れさま。明日のお祭りは楽しみましょう」
それから、大地を中心に楽器の運搬などについて打ち合わせが行われた。ティンパニーなどの大型楽器は、村で荷馬車を用意してくれることになっている。
準備も終わり、視聴覚室には若菜と奏だけが残っていた。
「じゃあ、私も片付けたら休むわね」
「お疲れさま」
窓からは月明かりが差し込んでいた。
すでに電気の消えた部室棟。練習中はライムの魔法で明るくできているが、今は手元のランタンだけが頼りだった。
そのせいか、窓から差し込む月明かりが普段よりも明るく感じられる。
若菜が楽器を片付けようとした、その時だった。
楽器棚のそばに、充電コードにつながれた
スマホがあることに気づいた。
何となく手に取る。
その瞬間、オーボエの澄んだメロディーが
流れ始めた。
「これって……」
若菜はそれ以上、何も言わなかった。
数秒――いや、どれくらいの時間だったのか分からない。
ただ、スマホから流れるメロディーに聴き入っていた。
突然、音が消えた。
静寂を切り裂くように、若菜が声を上げた。
「……たい……帰りたいっ!!」
言葉にしてしまった。
同時に、感情が止めどなく押し寄せてきた。
「若菜……」
月明かりに照らされた若菜の姿は、頼りなかった。
奏はそっと近づき、その肩に触れた。
「大丈夫。きっと帰れるから……」
「帰ろう……」
「うん……」
何も変わらない月明かりが、二人を静かに
照らしていた。




