↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜  作者: 元毛玉
第二部 円環

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/58

第四十二話 ギロチンの刃

「チームエクリプス、日食の時間です!」

『宇宙の終焉と新たな輝きを! 爆ぜさせろ!』


 僕と敵リーダーのヒューグの声が交差し、双方の「了解」が入り乱れる。



《さぁ新たなリーグの幕開けです! Break (試合)the sky(開始)!!》



 お互いの様子見で始まる静かな立ちあがり。

 今日はソルティとアポロの自省も効いている。

 ……いつまで持つか不安だけれど。


 上空に大きな雲が差しかかり、日光が遮られたときに敵が動いた。


『太陽を墜とすのは俺たちだ!』

『爆散しろライジングサン!』


 敵リーダー以外のFA(フロントアタッカー)の2機が、僕を目掛け急進を開始。

 暗さに目が慣れる前に肉薄したいのだろうけど、そうはさせない。


「御託は結構です! 影すら踏ませませんよ!」


 敵の戦線を伸ばすためにも引きつけて上昇。

 連動したチーザが牽制射撃を始めた。


『アポちゃん、絞ってすりおろし。各員はサポートで!』

『受諾(コピー)』


 チーザから暗号指示(フレーズ)と偽装指示(フェイク)が同時に飛ぶ。

 アポロが敵リーダーへ突進していき、僕を除く皆は四方に散ってゆく。


 二重に仕掛けた誘い(ルアー)。

 仕留めやすいアポロを狙うのか、それともSK(セーフキーパー)の僕を狙うのか。


 敵の狙いをはっきりさせつつ、意識を攻めに集中させる。

 僕とアポロの個人技を信頼し、敵キーパーへ速攻をかける布陣だ。


 ライムグリーンの機体(タート)に群がるスーパーノヴァの猛者たち。

 敵の方針が定まった瞬間、エクリプスの牙が一斉に敵キーパーへと向いた。


『チッ! こっちも誘い(ルアー)かよ!』

『先にライジングサンを墜とせばいいだけだ!』


 5機が僕に殺到する。

 スリリングな状況で、背中には冷や汗が伝う。


 けれど、僕の目標はナックと並び立つこと。

 こんな連中如きに遅れをとる訳にはいかない。


「僕がいますからお呼びじゃないんですよ!」


 空を舞う複雑模様(スクランブル)な飛行機雲たち。

 至近を通過する敵機が、装甲を叩く振動を撒き散らす。

 軌道を予測してずらし、影すら掴ませないよう立ち回る。



《囲まれるライジングサン! 凌ぎ切れるのかーーー!?》



 観客たちの熱狂も耳に届き、緊張で喉が渇いていく。

 ビームも、敵の突進も網の目のように僕の逃げ場を奪う。


 けど、敵の心理は明白だ。

 背後の敵は見えないが、正面の敵の動きがはっきりと教えてくれる。


「ぬるいですね!」

『ならビッグバンの熱量に変えてやんよ!』


 暑苦しいほどに練度の高い阿吽の呼吸。

 だからこそ乱してもすぐに立て直してくるが、正確なリズムで連動するから読めてしまう。


 敵は焦れ始めたのか、動きを変えた。

 攻撃を笹の葉みたく交互に散らし、左右の逃げ場を奪ってくる。

 鬱蒼とした竹林を思わせる隙間のなさ。


『さっさと沈め!』

「お断りしますよ! ペースさげたらどうです!?」


 なりふり構わず仕留めに来る敵。

 僕が5機を相手取っているということは、それだけエクリプスが優位に動いているはずだ。


 攻めが苛烈すぎて、とてもチーザたちの方を気にする余裕はない。

 でも、だからこそ不敵に笑う。


「ハッハッハ! 5機で囲んでこの体たらく。線香花火に改名してはどうです?」

『ほざけ! 二等星に格下げしてやる!』


 敢えてビームの方へ飛びこみ、ノックバック含め敵の追撃がギリギリ届かない位置を渡り歩く。

 被弾で胃や脳がシェイクされ、せりあがった酸っぱい物を無理やり飲みこんだ。


『なんで墜ちない!?』

「プロテインなんです!」


 撃墜されれば地獄のプロテインメニュー。

 隊(ナック)の愛情だけど、遠慮したくて被弾の衝撃に耐える訓練は積んできた。


 ビームに波乗りし、まるで水切り石となって空でバウンドを繰り返す。

 手がしびれ、冷や汗で体の芯まで冷えこんだとき、待望の声が届く。


『ハーちゃん、お待たせ!』

『よくやったハーベスト! お漏らしせず耐えたじゃねーか! 褒めてやる!』


 すかさず撃墜音も届いた。



《ゴーーール! なんと開幕戦で最初に墜ちたのはスーパーノヴァ! しかもキーパーだーーー! 最高得点(4点)! 超新星が赤く染まるーー!》



 クロワまで攻撃に参加したのだ。

 赤くらい獲得してくれなければ困るし、結果は必然に思う。


「遅いですよ皆さん。ほら! 他も真っ赤に染めあげてやりましょう!」


 こちらが合流するのにあわせ、敵も合流を果たす。


『狼狽えんなお前ら! ライジングサンを赤に返せば同点だ!』

『うっすボス!』

『ヒューグさんにならできるっす!』


 ギロチンの異名を持つ敵リーダーのヒューグ。

 キーパー不在のスーパーノヴァは守りをかなぐり捨て、攻めに転じる。

 僕の喉元を狙い、何度も食らいつこうと狂気じみた動きを見せ始めた。


『全てを乱せ! 乱痴気騒ぎだお前ら!』


 連携もへったくれもない無秩序で不規則な動き。

 リズムが取りづらく、意図しない被弾が増えてきた。

 計器類の警告ブザーの音が一層大きくなり、奥歯を噛みしめる。


「ネクタイ(・・・・)締めたらどうですか!?」


 エクリプス内での隠語を使い、オーバーヒートの危険があることを伝える。

 ソルティが即座に反応した。


『おうよ。無礼なダンスパートナーすぎんだろ! タキシード着込んで出直せ!』


 罵声を隠れ蓑にウェハーが位置取りを変え、挙動指示(ハンドサイン)を示す。

 クロワとアタッカー陣がグレネードをばら撒き、空に爆炎の迷路を作っていく。

 なのにヒューグは炎の海原へ飛びこんだ。


『ヒューグさん!』

『続け! 時間稼ぎ(ディレイ)だ! 絶対に休ませるな!』


 リーダーなだけあって勘どころが良い。

 愛機(タート)は最速(トップ)も、被弾も許されない絶対絶命の局面。


 ここに至るまでに多く被弾しすぎたのもあり、うだる熱に包まれるコクピットは既にサウナだ。


「お早いですね! 炎の温泉にもっと浸かったらどうです?」

『おい、皆! 噂の天才さんがよほど焦っているようだぜ!』


 爆風を最短距離で突っ切られ、ヒューグの接近を許してしまった。

 赤みを帯びた装甲と明滅するスラスターが、敵機をより恐ろしく感じさせる。


 勢いのままヒューグは、両拳を使ってラッシュを仕掛けてきた。

 無理はできない。

 敢えての受けを選択し、攻撃の芯をわずかにずらすことにだけ専念した。


 何度も殴られ、シートに叩きつけられて、背骨が悲鳴をあげる。

 衝撃でのめまいと高熱での脱水症状で、腕にも力が入らない。



《これはさすがのライジングサンでも墜とされてしまうのかーーー!?》



 ブラックアウトの寸前、耳が実況を拾う。

 ファンが、仲間が、何よりもナックが観ている。

 ここで気を失って、簡単に墜とされる訳にはいかない。


「僕が──僕こそが太陽! それを証明してみせます!」


 全力で吠え、操縦桿(グリップ)を力強く握り直す。

 ヒューグと捻じれあい、打撃と火花を撒き散らすサイクロンと化してゆく。


 誰も介入できないはずの攻防。

 だが、二筋のビームが槍となって、それぞれがグングニルを主張しあった。

 クロワとソルティの槍が、正確にヒューグのバックパック部だけを射貫く。


『フッ、私たちのエースをあまりいじめないでください』

『おうよ! 俺らの姫とデートするにはまだ早えぞ! 経験積んで出直しな!』

『くそっ! あと少しだったのに!』


 声に悔しさが滲むヒューグ。


『お前ら! 新人狩りはどうだ!?』


 付け足したのは強がりかと思ったが、混線状態から何か起こっていると気づく。


『アポちゃん! ブロックダウンに切りかえて!』

『拒否する(リジェクト)。自分なら立て直せます』

『アポロ! 独断はやめて!』


 指揮官が最少失点の貢献(ブロックダウン)を指示しているのに、無視して抵抗を試みるアポロ。

 劣勢であるほど、ムキになって覆そうとするアポロの悪い癖が出ている。


 流麗なアポロの動き。

 だが、味方の連携が阻害され、分断された状態が続く。

 指揮官の二人が躊躇しているのは頂けない。


「ソルティさん、あの周りが見えてない新人に花束をプレゼントしてください!」

『あ? いーんかよ?』


 短く鼻を鳴らしたソルティが銃を構える。

 グレネードランチャーでアポロの背後を撃ち、追撃でビームもお見舞いしてフィールド外周まで吹き飛ばしていった。


『な!?』

『その辺で貼りついてろ!』


 爆風のブラインドと射撃での運送。

 味方に対しても容赦なくやれるソルティは、やっぱり頭のネジがぶっ飛んでいる。


『おい、ハーベスト。今なんか失礼なことを考えてなかったか!?』


 相変わらず謎の勘の良さ。

 僕は頬を引きつらせながら、目の前の敵機を殴り返す。


「さぁ、皆さん。反撃ですよ!」


 気合いを入れ、立て直しを図る。

 だけど、アポロが一時的に戦線から離れているのもあり、フォローに駆け回っていたウェハーの状況が苦しい。


『うわぁ、これは墜ちるかもー?』


 ウェハーの棒演技がノイズ交じりに届き、最少失点の貢献(ブロックダウン)へ切りかえたことを知る。


『絶対ブラフだ! 死神の影がただやられる訳ない!』

『オーバーヒートが避けられんのだろう! 俺が仕留める!』


 さすがに演技がヘタすぎて敵にもバレた。

 ウェハーは選手内で《死神の影》という異名で呼ばれ始め、警戒されている。


 僕らからすれば評価が遅いくらいだ。

 ナックが尋常ならざる強さだから見落としがちだけど、サポートする動きはトップリーグの中でも随一だと思う。

 ヒューグが僕への粘着をやめ、弱っているウェハーへ向かった。


 敵の熱を少しでも高めるべく、ウェハーは墜ちる前提で残弾をぶちまけていく。

 爆発の位置で意図を汲み取り、敵チェイサーを封じこめるよう連動する。

 そんな中、アポロだけは勝手にヒューグに立ち向かっていった。


『自分が相手します!』

『すっこんでろ新人! 空は教科書学校じゃねーんだよ!』


 一瞬の攻防。

 ここまででアポロの癖は見抜かれていて、軸をずらしたカウンターが決まる。

 姿勢制御を乱したアポロを、タックル体勢のまま地表へ道連れにするヒューグ。


『模倣操縦(トレース)をやめたら相手してやる!』


 垂直落下し、まさに断頭台(ギロチン)の異名に相応しい切れ味をみせた。



《ゴーーール! ギロチンが赤を獲得だーー!》



 続けざまヒューグが急上昇してウェハーに迫る。

 拳の応酬で粘りをみせたウェハーは、赤サークルが狙えない位置へ。

 それでもギロチンの刃が黄色を目掛けて振り降ろされる。


 しかし落下中に、ウェハーが手元で最後のグレネードを爆発させた。

 同時に僕らの連携も完成し、3つの撃墜音が轟く。



《ゴルゴルゴーーール! スーパーノヴァが青! エクリプスはなんと赤を2つ獲得だ! エクリプスに運命の女神が味方したのかーーー!?》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特設割烹へのリンクバナー
 

i1071624
― 新着の感想 ―
スーパーノヴァと試合開始!! かなり熱いですね! ハーちゃん相手5機に対して凄く頑張った!! アポちゃんはまだ上手く連携できなさそうですね〜^^; ヒューグは強敵だけど……なんとか勝てるかな??
 お邪魔しています。  もの凄い攻防戦ですね。マイクを通しての「作戦連絡」「フェイク」「相手の探り合い」など、すっごい入り乱れているんですね。マイクの音声が、全員に共有されたからの戦い方なんですよね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。