拝啓いつかの君へ、こちらは未だ曇りです
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泣きつかれるまで、その体温がカケラも無くなってなお、ただひたすらに手を握り続けていた───君を天に送ってからも心の中で君の手を離せずにいた
「最初からこうすればよかったんだよ…
君は実に馬鹿だったよアベル」
燃え盛る王国群を前に、君を見捨てた王国を前に俺は目を閉じて動かなくなった友の亡骸を思い出す───彼の期待すらも俺は無碍にしたんだ
「…」
もう、どうでもいいか
◆【全ては無くなったんだし】
皆と別れ50年近く国を見て来て分かった。コイツらは救うに値しないって、アベルと共に勝ち取った平和でさえ、コイツらは食い散らかし、勝手に争った───その『迫害』の牙は遂には『人類』同志での噛みつきに発展した
そうだ。これに乗じて【魔法】を『根絶』しよう。衆愚を扇動するなんて『英雄』なら造作もないことだ
◆【琥珀眼の勇者】
王国を焼いてみたもののやはり難しいな───根絶なんて夢のまた夢だ
「暴風の魔王!」
また、琥珀眼か───既得権益に縋り付く馬鹿どもはやはり学ばないな。あいつらから知性を奪うことから始めるべきだろうか
衰退した魔法なんて、俺には───
「…リリス、君なのか」
「勇者、ロイ…?」
面白いな、アベル…君の目指した果てに『魔族』を利用し始めたぞ?人類は───王国のやり方は本当に間違っていたことの証明だな。嘆かわしいよ
「あれから、一体、何十年と経っている
何故貴方が生きて…」
「…知らねえよ。さぁ、俺を殺すか?リリス…」
コイツもただ王国の意思ってのに盲目的に従うだけか、それとも
「何を言っているんだ」
やはり、長生きをするもんだな。お互いに
「黄昏の魔王の眷属…
いや、今は『勇者を継ぐもの』だろ
ほら、魔王はここだ」
「何故こんな、アベルの
アベルの信じた貴方は何処へ…」
「うるさい!」
黙れ、黙れ、黙れ!この世界はアベルを受け入れなかった。争いを好んで悪戯に火遊び繰り返して、今この有様だ。簡単に燃やしあっているのが良い証拠だ
「っ!」
「何故?何故って魔族の君が
それを言う時代になったのか!
自らの隷属に抗ったお前達が…」
◆【競合】
素晴らしいな、こんなチャンスは二度と訪れないだろう。君のもたらした奇跡が身を結ぶんだぞ。アベル
「リリス、俺と手を組もう」
「…ッ!人類の根絶に組みしろと?」
「違うよ。管理するんだよ」
◆【そうだったな。アベル。二の手、三の手だ】
「個体数を維持し、仮初の平和を与え
設けた正解をなぞって貰う
それには『英雄』が必要なんだ」
「それをアベルが望んでいると?」
「いや、望まないだろう」
「…」
だが
「少なくとも『お前』みたいな悲劇は
繰り返されることがなくなるだろうな」
「…ッ!!」
◆【大厄災】
二度目に大きく世界を焼いた。歴史も営みも───全てが無に帰すほどに
この『ひ』は盛大に語り継がれるべきだ
過去の功績すらも無くなった『全く新しい』───始まりだ。繰り返される戦火の中でAMOという組織が現れるほどに凄惨だった
対立の果てに【魔法】は衰退した
『アベルの技術』を世に広めた『術式』を用いた『魔術』が誕生した。【魔法】と比べ『安定した』───最早、魔法は死んだも同然だ
『レガリア』の原型を世に投じた。迷宮回路。これは俺の中でも素晴らしい一手だった。『魔術』すらも手放した人類の発展は『非殺傷』的な争いを繰り返すことになった
◆【大厄災から大衰退の果て】
「リリス、アベルに会いたくないか…」
魔法が見る影も無くなった世界でリリスに聞いた。良き仲間として彼女は働いてくれた。親友を継いだ者として立派に
「…輪廻ですか。それはもうアベル様では」
だから、それに報いなければいけなかった
「いや、彼は確かに言ったんだよ
手は打ってある。安心しろって」
「…ッ」
「これを」
俺はリリスに『黄昏の魔王』を倒すまでの記録を渡した。アベルのことだ。その旅の中でしれっと忍ばせたことだろう。『手』を
「勇者ロイ。これは貴方が
大事にしていると言った手記ではないですか」
「良いんだ。俺は彼の期待に応えられなかった
統治どころか2回も世界を潰して
仮初の平和で塗り固めたんだ
これ以上は汚せない」
◆【リリスと分かれた】
「アベル、これは君が望んだ世界ではないだろう
けど、君がいないこんな世界に
価値なんてなかったよ」
故に俺は世界を壊し続けるよ
「ミハイル理事…入りますよ?」
さてと
「ふぉふぉふぉ、どうぞ」
「あの、どなたかとお話をされていましたか?」
「いいや、風の音じゃろう」
「そうですか」
「して、何用じゃ?」
「学園の設立挨拶を賜りたいのですが」
「あい、わかった。行くとするかのう」




