魔術師、兄と再会する
◆◇◆◇◆
「チェ。何だよあの無視女…」
師匠がどうにかしようとしてくれたのは有難いけど、俺は結局、魔術に向いてないんだ
「げっ」
大量の勧誘用チラシ…学生寮でもこういうことあるんスか。捨てるの面倒くさいなぁもう…
◆【ノックの音】
「やあ。久しぶりだね。テッド」
「に、兄ちゃん!?」
酷く痩せこけてる。見るからに不健康な様子だ。まさか母さんと同じ───そんな、もう家族を失いたくないっス
「兄ちゃん!病院に…」
「そんなことはどうでも良い
ところでテッド。キミはもう
所属する研究会を決めたのかい?」
どうでもいいわけがない…
「い、いえ。まだッスけど」
「ふふふ。それは良かった。どうだろう
テッド。キミもボクたち『魔術撲滅研究会』に
参加しないかい?」
「何すスか。それ」
───体調より『研究会』を優先するなんて
「よくぞ聞いてくれた!ボクたち
『魔術撲滅研究会』は、世界の平和を守る
超法規的組織さ!この世界に蔓延る
悪の魔術を滅ぼし、世界の秩序を取り戻す!
そのために研究員たちは日夜
決死の覚悟で活動を…」
「くだらないっス」
「くだらない…」
何スか、その怖い目は…何か悪いものでも食ったんスか
◆【ストレス】
「に、兄ちゃん。申し訳ないッスけど
そんなくだらない研究会に入る気は
俺にはないっス」
それよりも病院に行って、調べてもらうべきだ
「お前、魔術の勉強を嫌っていたじゃないか?
何故、そんな魔術を庇うんだ?」
確かに俺は魔術が苦手だった。レガリアも満足に使えなくて、そのことからいつも逃げてばっかりだった
「俺、魔術が使えなかった時も
カッコいい兄ちゃんの背中を毎日
目にしてたんス。貴族として
皆の憧れとして」
「…」
「それで俺も頑張って、頑張って
それでも魔術が使えなくて
悔しかった」
「そうさ、テッド。だから…」
「でも」
◆【決別の意】
「師匠に出会って、魔術の楽しさを
教えてもらったっス」
「…」
「だから兄ちゃんの所属する
研究会には入れないッスよ」
「師匠…シショウ…。魔術の?魔術を?」
言葉を交わしても無駄っスか。殴ってでも───
「ふふ。そうか。あの
アベルとかいう平民のことか」
っ!吐血?違う───唇を噛んでる
◆【激昂】
激昂したバースはテッドの体を勢い良く突き飛ばした
「お前、ウザいんだよ!そんなにあの
劣等眼のことが大事なの…っ!」
しかし、テッドは揺らぐことなく、突き飛ばそうとした両腕を掴んで見せた
「大事なのは、兄ちゃんもだよ」
バースは未だかつて、これ程に『悲しそうな』弟の姿を見たことがあっただろうか
「兄ちゃん、病院へ行こ」
「…ッ!」
テッドの手を振り払い、バースは手首を摩る。掴まれた痛みはなくとも押した勢いが自分に返ってきたせいで手首に痺れる痛みを受けていたのだ
力の差は歴然だった
「よ、よく考えておくと良い
血の繋がった実の兄であるボクの言葉と
単なる平民に過ぎない劣等眼の言葉
どちらに従うべきなのかをな」
「それよりも…っ」
テッドがバースを連れて行こうとすると『どこからともなく』大柄な上級生が現れると2人の間に割って入った。テッドは直感で勝てないと悟ると豹変した兄の姿をただ見守り、途方に暮れるしかなかった
「バース兄ちゃん…」




