魔法使い、氷の女王と接触す
◆◇◆◇◆
不思議な光景だった。皆が避ける中を進む、人の流れに逆らうことに対しての『不和感』の中で確かな『安心感』を受けた
「おい、氷の女王に向かっていくぞ」
「おい、目を合わせんな」
「ポイズンパーチだから知らねぇんだ」
◆【氷の女王】
「おいっス」
研究会の紹介をするために設けられた空間には全くと言って良いほどに何もなかった。あるものと言えば本や軽食、傘と机の上に申し訳程度に『古代魔術研究会』と書かれた札が置かれているくらいだった
この見姿は『読書研究会』───あらゆる書物を読み耽る研究会と似た雰囲気を感じる
「あれ?聞こえなかったんスかね?」
本の世界に没頭している節が見られるその姿も『読研』と似ているもののやはり別物であることが分かった───『心此処にあらず』と言った様子で彼女が読み耽っている書物が『蘇生魔術に関する論文』であることからだ
◆【古代魔術研究会】
名前からして2000年の『魔法』に関するものだろうか。それとも【術式】の始祖に当たる『言霊』や『文字』に関する研究についてだろうか
「お〜い、聞こえてるっスか?」
これ程までに無視を決め込む必要があるのか疑問だが、テッドさんの声掛けにあまりに反応がないのに少し笑ってしまった───デイトナとは対照的な彼女に僕も無視をされてしまうかもしれないな
「お初お目に掛かります女王様」
「なに」
◆【周囲がどよめいた】
本の隙間から顔を出した彼女の眼は碧と呼ぶには深く、それでいて澄んでいた。『深海』か或いは『夜と月』を思わせる色味をしていた
「な!」
「研究会に興味があるのですが
説明を聞かせて頂けますか?」
「ん。なら、これを解いて」
◆【迷宮回路を受け取った】
『迷宮回路』───表面に複雑な模様があしらわれた箱の様なもの。内容物は『高密度術式』描かれた魔術構文を理解して、魔力を適切に流すことで仕掛けが駆動し、箱に変化が現れると言った『仕掛け箱』のこと
迷宮回路といえば『光』『震える』『熱を持つ』などの『仕掛け』が殆どで、『解けた』ことが一目でわかる仕組みをしている。レガリアの元になったモノとして見ることもできる
幼子から老人まで『遊戯』から『教育』まで幅広く、それでいて楽しむことができる代物だ
「懐かしい」
「なつかしい?」
「何スか、それ…って!
壊してどうするんスか師匠!」
「っ!」
『特殊な迷宮回路』だった。内容に関しては『水の勇者と琥珀の放浪者』だった。迷宮回路は元来『術式』を刻むものながら彼女の持っていたそれは『日記』と呼べる代物だった
図らずも他人の記録を閲覧してしまったことに引け目を感じてしまう。よもや『デイトナ』から『リリスと似たモノ』を感じることになるとは思わなんだ
「…もしかして壊れていた?」
「すみません。全て読んでしまいました」
◆【解けてしまった迷宮回路】
複雑な仕組みで噛んでいた迷宮回路が、真っ二つに分たれた
信じられないと言った様子で目を丸くする彼女だったが少しして面持ちを先までの『氷の女王』のものに変えてしまった
「ウソ。どんなに早く解いても
1時間はかかるはず」
「では内容から引用した
質問をして頂けますか?お答えします」
迷宮回路を『逆読み』し、組み上げつつ、彼女からの質問を待っていたものの『手を差し出された』───『迷宮回路』の返却を求められた
「いい、案内する」
彼女はそういう時机の上に立てかけていた日傘を手に取った
「付いてきて」
古代魔術研究会に案内されることになった
「何スか、あれ?」
「テッドさん、行きましょう」
「ダメ、貴方だけ」
「何故ですか?」
「迷宮回路が解けること、それが入会試験」
◆【置いてけぼりテッド】
「無理っス」
「…」
この手のものはやはり『感覚派』テッドさんには不向きだった。『ライト』の『迷宮回路』を作ってやらせてみたはいいものの───いつかの追いかけの時に見せた『気絶』をしてしまった
「いいっスよ!師匠より良い研究会
入ってやりますもん!」
そういって『迷宮回路』を放り投げて何処かへといってしまった
「こうなることが分かってたから
渡さなかった」
「すみません」




