魔法使い、研究会に同行す
◆◇◆◇◆
「ぬおー!もの凄い人だかりッスねー!」
テッドさんに連れられ『中央広場』を経由して『勧誘会場』に向かっていた。行事ということもあり、道中からも人の行き来が激しくなり、気がつけば人で溢れかえっていた
◆【研究会勧誘】
「キミ、騎竜研究会に興味ないかい!?」
「おい!そこの新入生!オレたちの
ハウント研究会に入って
一緒に汗を流そうぜ!」
新人を手に入れんとする人の集まりと勢いの凄いこと、種類も豊富であり、周囲を見回せばひとつふたつは『研究会』が目に入るほどだった
◆【一通り見て周り】
中央広場近くに陣取っていた研究会は魔術系と競技系の2種類に分けることができた。それぞれ熱量もさることながら、趣味嗜好の合った学友での集まりと言うのは『研究会』と言うより『クラン』の様に見えた
「ねえ。キミキミ!ちょっといいかな?」
「ぬおっ!な、なんなんスか!その格好!
鎧のお化けがいるッスよ!」
「ハハハ。これは試合で使う防具だよ
驚かせてしまってすまないね」
◆【鎧のお化けこと】
「ボクの名前はセガール。キミ
アーミーフットに興味ない?キミほどの逸材なら
レギュラー間違いなしだよ!」
テッドさんの言う表現として『鎧』と言うのは適切だった。首より下を真っ白な1着で保護した上から文字通りの防具を着込んだ───重装騎士の様な見た目をしていた
申し訳程度に防具には『衝撃吸収』があるのを見るにかなりの『肉弾戦』を前提にした『研究会』なのだろうと思う
セガールと名乗った男はテッドさんの両肩をがっしりと掴み、熱量凄まじい様子でテッドさんを勧誘していた
「アーミーフット?なんスか。それ」
「分かりやすく言うと、こういう
魔導鎧を装着して行う肉弾戦を主体とした
球技だね。場合によっては
かなりハードな試合になる」
「そうッスね。たしかに自分は体を動かすのが
好きなので、興味がないでもないんスけど
…師匠も一緒でいいんスかね?」
「え?師匠っていうと、そっちの
被り物の彼かい?」
「はい!自分で試合に出られるなら
師匠なら即エース間違いなしッスよ!」
「えーっと…それはちょっと…どうなのかな…」
「テッドさん、おひとりででも如何ですか?」
「…なら、大丈夫っス」
◆【鎧のお化けがもうひとり】
「なんだ!これは一体どういう状況だ?」
テッドさんが断るや否や恰幅の良い1人の男が現れた。その男は先に話かけてきたセガールさんと比較して、更に頑強な『付与』の施された鎧を着込んでいた
体格から見てこの競技における『アタッカー』か『ディフェンダー』の配置についている人と見て間違いなかった
「主将!これはその…」
「おう、なら採寸しろ。すぐ練習に…」
セガールさんが言い淀むと肩を組んで裏に連れて行かれた
「師匠、もう行きません?」
「見切りが早いですねテッドさん」
「こう、頭を使ったり、師匠が一緒にいないと
楽しくないと言いうんっスかね?」
「そうなんですね」
◆【程なくして】
「どうだ!ひとつ
このタックルを受けて立っていられたら
入会をしていいぞ」
「えっと、そこまでじゃないっス」
「僕もですね」
「なんだ、有望そうな新入生を見つけたからって
手っ取り早い方法を提示したってのに」
「お手を煩わせました」
「ハハハッ、萎縮しちまったか?」
熱量は凄まじいが趣向が合わなさそうだ。競技それ自体は面白そうなのだが『やる』と『見る』ではそれが齎す『楽しみ』は全くの別物になる
強引でないのであれば手を引くのが1番だろう
「では、行きま…テッド、さん?」
「えっいいんスか!?師匠!?
多分師匠なら1発っスよ?」
「テッドさん?」
「…待て。小僧」
◆【余計なこと】
「…」
「貴様、今、なんと言った?」
「え?いや、どう見ても師匠の方が強いのになって」
何故火に油を注ぐ真似をするのだろうか
「オレが、このヒョロガリに負けると
そう言いたいのか!!」
「さっきからそう言ってるじゃないっスか」
「テッドさん?それ以上は…」
「このタックルを前にまだオレの方が───」
◆【相殺】
向かってきたので怪我をさせない様に1・2と勢いを殺し様に受け止める。避けても良かったものの、他の研究会の邪魔になってしまうのは『アーミーフット』と『巻き添えを食う研究会』───双方にとってよくない結果を招くだろう
「っ!?な!」
それにしてもこの人の『前衛』の鑑の様な肉体だ。灼眼だと言うのにどれ程努力したかが一目で分かる程の筋肉の隆起だ
実践に向けて準備をするなら次も『これ』と同等の『魔術的鍛練』が必要になるだろう
「ぬがっ!」
筋肉が熱を帯びた。『回復系統』の『膂力狂化』の術式だろう。灼眼でも相性のいい術式を取得しているのを見るに研究会というのは『授業』以上に有意義なのかも知れない
「ナゼ!ウゴカン!」
「嘘だろ…あの主将を…」
◆【怪我をさせない様に】
「どうスか、師匠強い───」
「テッドさん」
「へっ?」
主将さんを受け流し、テッドさんに向かわせる
「ちょちょちょ!し、師匠!?」
「被害軽微に、ルール遵守で」
「んな、無茶っスよ!」
「アーミーフットのルールには
ボールによる攻撃は反則になりませんので」
「クソオオオオオッ!ちょこまかと!」
「あわわ」
体勢を立て直した主将さんは、叫び声を上げながら再びテッドさんに向かっていく、『狂化系』の『制御』が難しい点だ
「ボールを貸りますね」
「え?いいけど」
「テッドさん」
カゼールさんから許可を得て、ボールをテッドさん目掛けて放る
◆【迫る拳】
テッドさんがボールを取り損じ、裏拳で弾いたボールが主将さん目掛けて一直線に向かう
「うんぬ、ぐぉおぁ!」
ボールを受けた主将さんは掴んだ腕ごと後方へエビ剃りの形で吹き飛び地面に突き刺さった
「酷いっスよ師匠」
宙に滞空するボールを掴み取りカゼールさんへと返却する
「え?」
「先に余計なことを口走ったのは
テッドさんですからね」
◆【研究会の見学に戻る】
「おいあの灼眼、アーミーフット研究会の
鬼主将を一撃で倒しちまったぞ!?」
「シショウって奴も受け止めてたぞ…」
おや、何か嫌な予感がする『リリス』が稀に向けてくる感覚に似ている
「あの新入生は俺たちのだ!」
「抜かせ!オレらのだ!」
「ッゲ、どうしますか師匠…師匠!?」
◆【三十六計逃げるに如かず】




