魔法使い、刺客と対峙す
◆◇◆◇◆
エリザさんと共に学生寮を目指していると、またしても視線を感じた
今回の視線はレガリア越しの視線ではなく、何かしらの意図を持った『生身の視線』だった。数は2人、レガリアのモノに似ているがどちらも別人だろう
明らかな『殺意』を持っている
◆【一先ず避難優先】
「エリザさん、リリス先生とフェディーア先生に
届け物を頼まれてくれますか?」
「え。どういう…わかった」
やはり察しのいい子だ。詮索はせずに荷物を受け取ってくれた。かの2人は僕にだけ『視線』を向けているので避難も兼ねて茶菓子を保護して貰う
「アベル…大丈夫、よね?」
「えぇ、リリス先生には…」
◆【言伝をお願いした】
「それじゃあ、また明日。学校でね」
「はい、また明日」
エリザさんが手を振り去っていくのを待ち、影が小さくなった頃合いに振り返る。逃げる気は無いだろうけど『一応』の保険だ
【空間隔離】【認識阻害】
「お待たせして申し訳ありません
いつでもどうぞ」
様子を伺っている2人に声をかける
「ふふふ。こちらの目的を理解して、女の方を
先に逃がしたのね。ワタシ頭の良い子は好きよ」
「奇襲はしないんですね」
「その紳士振りに、免じて…」
魔術師が現れた。物陰からではなく空間に人型が現れるようにだ。『幻惑術式』───景色を『投影』し『隠密』に役立てる『不可視』の『術式』だ
灰色の眼の持つ特性でもかなり『尖った』モノだ。しかし、音までは消せないことを考えた時、彼女がどれだけの修練を積んだのかが窺い知れる。素晴らしい肉体と魔術の練度だ。並大抵の努力ではここまで話しえないだろう
「そんなに見つめて…
こんな可愛い子がターゲットなんて…
ゾクゾクしちゃう」
術式や肉体の練度も去ることながら瞬時に味方への配慮ができている点───『連携』に関しても今代の魔術師や魔術師擬きとは一線を画すモノが読める。是非話を聞きたい
しかし、素晴らしい故に荒削りが目立つ───衣服を軽量にしているのは恐らくその点が『難点』として、肌を多くすることで対策としたのだろう
◆【木の葉に隠れる男】
夕陽が傾き建物の影が丈を伸ばしてくる
「あなたは出てきてくれないのですか?」
振り返り、円錐形に切り揃えられた街路樹の1本に声を掛ける
「…流石はアイツが認めるだけのことはあるはね」
悲しきかな先の『連携』は不発だ。既に居場所は割れていた。植物の内に『植物に擬態した』何かがいるのは
枝のうちから音を立てずに逆さの状態で登場したのは翠眼の男だった。『技術』で気配を植物に近づけていた。人が植物に近づけるとは驚いた
「カァー!いよいよオレもヤキが回ったか!
こんなガキに気配を悟られることに
なるとはねえ!」
黒の装束は日が落ちようとしているこの場においてを見越しての選択なのだとすれば僕が誰かと出掛けることを事前に知っていた可能性があるな
学園関係者で間違いない。いやはや日常的に監視をされているとはいえあまりに大胆でいて、滑稽極まるな───何故『元締め』は会いにこないのか不思議でならない
◆【粛々と機を伺う刺客】
「なかなか興味深い逸材だわ」
「勘弁してくれよ。その若さで、オレたちの尾行に
気付くとは、とんだ化物が現れたもんだぜ」
「…ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ」
「なんだ坊主、命乞いか?」
日が落ち切った
◆【挟み撃ち・暗闇・助けは来ない】
夕陽が満ちていた帰り道から陽の光が消えて、街に添えて造られた『灯り柱』がひとつ、ふたつと点いていくが朧げな発光をするものが周囲に灯った
「本気ですよね?」
◆【君たちの得意な時間帯だ】
「気の毒だが、お前にはここで
死んでもらうためにな」
「ごめんね、これも仕事なの」
刺客がそれぞれレガリアを手に取ると臨戦態勢に入ったのを見送る
それにしてもいい夜だ




